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Campus Master Plan

部門別課題の把握とフレームワークプランの検討

chapter5では、目指すキャンパスの実現に向けて、検討・配慮すべき内容を部門別にフレームワークプランとして示す。フレームワークプランは、概ね15~30年程度の中長期的なキャンパス全体の整備方針に基づく計画である。どのようなアカデミックプランにおいても配慮すべき考え方や対応可能な考え方について述べている。

5.4キャンパスデザイン

大学のイメージを印象づけるキャンパスデザインについての検討は重要な視点である。立地特性上、歴史的景観の保全や調和を図ることが歴史都市型キャンパスとして魅力的な環境を維持・向上する上で大切な課題である。また、日常的に利用頻度の高いパブリックスペースは、量的・面的整備や利便性・機能性に配慮するだけでなく、誰もが共通して心地よく利用でき、何度も利用したいと思える工夫が必要である。この様なキャンパスデザイン上の取り組みは、整備効果が利用者に伝わりやすく、学生の満足度に直接的につながるものとなる。そのため、以下の視点について総合的に検討を行い、デザインガイドラインを設定することが有効である。

①空間の質
②建物外観デザイン
③屋根・庇デザイン
④建物高さ・壁面線・建物ボリューム
⑤サイン計画
⑥ランドスケープデザイン
⑦眺望・景観・借景

なお、衣笠キャンパスは、その大半が京都市の風致地区や建造物修景地区、眺望景観保全地域(3章にて詳細を前述)に指定されており、法的にも周辺環境との調和、景観への配慮が求められている。

① 空間の質

学生にとって通いたい、学びたいキャンパスであり、教職員にとって働きたいキャンパスであり続けるためには、キャンパス空間全体の質の維持・向上についての検討が重要となる。立命館大学のアイデンティティを伝える空間として、また、「使いたい」「居心地がよい」「自慢したい」などと感じる空間についての丁寧な検討が求められる。

② 建物外観デザイン

大学のイメージやキャンパスの統一性に配慮したデザインとともに、施設機能や整備エリアに応じた外観デザインが求められる。特に、既存建物の素材や色彩などの継承性と新現性のバランスを図ることが重要である。また、将来の建替えやキャンパス内歩行者通路の設置・拡幅などを想定した壁面線や周辺建物との調和についても考慮が必要である。

既存キャンパスの状況

写真5-4-1 新たな学ぶの空間として整備された究論館のリサーチコモンズ
写真5-4-1新たな学ぶの空間として整備された究論館のリサーチコモンズ
写真5-4-2 リラックスした雰囲気のカフェゆんげ
写真5-4-2リラックスした雰囲気のカフェゆんげ

既存建物外観デザイン

写真5-4-3 職人の手作業で生み出される趣のあるドンゴロスタイルの外壁茶褐色(小豆色~レンガ色)の外観タイル(存心館他)
写真5-4-3職人の手作業で生み出される趣のあるドンゴロスタイルの外壁茶褐色(小豆色~レンガ色)の外観タイル(存心館他)
写真5-4-4 水平線と垂直線から構成される外観(研心館・諒友館を西側広場から眺める)
写真5-4-4水平線と垂直線から構成される外観(研心館・諒友館を西側広場から眺める)
写真5-4-5 素焼きのレンガ調タイルの外壁(アートリサーチセンター)
写真5-4-5素焼きのレンガ調タイルの外壁(アートリサーチセンター)
写真5-4-6 建物頂部の深い軒庇(志学館)
写真5-4-6建物頂部の深い軒庇(志学館)

③屋根・庇デザイン

京都・衣笠に立地するキャンパスとしてキャンパス内外からの眺望、借景、周辺環境との調和など、風致や景観形成に配慮した屋根、庇のデザインが重要であり、求められてる。

また、屋上に太陽光発電パネルや設備機器を設置する場合は、キャンパス内外からの見え方にも十分配慮が必要である。

図5-4-1 屋根と庇の断面イメージ
図5-4-1屋根と庇の断面イメージ
写真5-4-7 景観に配慮した近年整備事例:京都衣笠体育館(2012年竣工)2010年度美観風致審議会景観専門小委員会答申案件
写真5-4-7景観に配慮した近年整備事例:京都衣笠体育館(2012年竣工)2010年度美観風致審議会景観専門小委員会答申案件

④建物高さ・壁面線・建物ボリューム

建物高さや壁面線はキャンパス内の統一性と衣笠山や周辺地域との空間的連続性に配慮が必要である。建物の高さは、立地上、低く抑えることが望ましく、高度地区および風致地区においても上限が設定されている(3.1.5敷地概要にて詳細を前述)。

景観維持を目的とした法的規制により、キャンパス内には将来の建替えの際に現在の建物高さを確保できない既存不適格の建物が存在している。そのため、キャンパス全体として容積バランスを考慮した長期的な建て替え計画を検討しておく必要がある。

図5-4-2 建物高さについての考え方
図5-4-2建物高さについての考え方

⑤ サイン計画

初めてキャンパスを訪れる人にもわかりやすい案内図や標識を設置する。特に、キャンパスゲート付近や主要な分岐点、建物出入口付近は配慮が必要である。看板はキャンパス内に散在せず、効率的に情報発信できるよう可能な限り集約化を図る。サインはキャンパスのグローバル化に対応したユニバーサルデザインや多言語表記などの配慮が求められるとともに、立命館大学のイメージに合わせた色調やデザインなどを採用することが重要である。

既存キャンパスのサイン表示

写真5-4-8 衣笠キャンパスの特徴である漢籍を含め漢字を用いた建物名称
写真5-4-8衣笠キャンパスの特徴である漢籍を含め漢字を用いた建物名称
写真5-4-9 有効な広報物として設置されている立て看板
写真5-4-9有効な広報物として設置されている立て看板
写真5-4-10 認識しやすい整備が必要なキャンパス案内図
写真5-4-10認識しやすい整備が必要なキャンパス案内図
写真5-4-11 日本語と英語の2ヶ国語に対応されたサイン表示
写真5-4-11日本語と英語の2ヶ国語に対応されたサイン表示
写真5-4-12 ユニバーサルデザインに配慮したわかりやすいサイン表示
写真5-4-12ユニバーサルデザインに配慮したわかりやすいサイン表示
写真5-4-13 掲示板
写真5-4-13掲示板

⑥ ランドスケープデザイン

屋外のオープンスペースにおいて行われている、学生の様々な活動や交流がキャンパスの風景となる。イベント時だけでなく、日常の風景も季節とともにデザインする。

衣笠キャンパスは、歴史的景観とよりよく馴染み、観光客や地域住民にも快適な歩行者空間をつくりだすようなみどりとオープンスペースを抱き合わせた衣笠山のみどりが浸潤する歴史地区のランドスケープデザインを行う。後述する「5.5緑地」や前述の「5.3パブリックスペース」の方針を踏まえることが重要である。

キャンパスの様々な風景

写真5-4-14 様々な活動と風景をデザインする
写真5-4-14様々な活動と風景をデザインする

⑦ 眺望・景観・借景

衣笠山を背景に望む、存心館の時計台と芝生が広がる中央広場は衣笠キャンパスを象徴する景観である。キャンパス内外からの衣笠山への眺望の確保や衣笠山と連続する植栽計画、建物外観デザインなど、自然や歴史的景観の保全への配慮が求められている。また、立地特性を活かし、建物内から衣笠山や京都の町並み、キャンパス内の緑地への眺望を考慮した計画などにも配慮が求められる。

キャンパスからの眺望

写真5-4-15 グラウンドから衣笠山と建設中の存心館を望む(1980年頃)
写真5-4-15グラウンドから衣笠山と建設中の存心館を望む(1980年頃)
写真5-4-16 中央広場から衣笠山と存心館の時計台を望む
写真5-4-16中央広場から衣笠山と存心館の時計台を望む
写真5-4-17 洋洋館の屋外階段からの眺望
写真5-4-17洋洋館の屋外階段からの眺望
図5-4-3 キャンパスとその周辺から衣笠山がよく見える範囲
図5-4-3キャンパスとその周辺から衣笠山がよく見える範囲