立命館大学図書館

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久野 和子 先生(文学部)

2023.07.03


『ほんものづくり』
鳴海 雅人 [ほか] 著(岩波書店、2011年)

世界中のステキな図書館建築を集めた写真集が最近何冊も出版されていますが、この本は写真集ではありません。ですが、写真集以上にワクワクします。実際に図書館建築の設計に携わった6人の建築家たちのエッセイと15人の建築家による図書館づくり(ほんものづくり)の事例が載っています。利用者のリアルな知的・身体的体験や、本や人との出会いを考えたこまやかな気配りや工夫も興味深いですが、どれも本と図書館への愛情とリスペクトにあふれていて、本好き・図書館好きにはたまらないでしょう。理想的な図書館建築のあり方についての建築家たちそれぞれの深い知識と真摯な熱い想いが、驚くほど私たちの心をワクワクさせます。

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『サードプレイス:コミュニティの核になる「とびきり居心地よい場所」』
アーリー・ラッセル・ホックシールド著;坂口緑, 中野聡子, 両角道代訳(みすず書房、2010年)

アメリカの社会学者レイ・オルデンバーグが提唱したサードプレイス(第三の場)は、飲食店経営や居場所づくり、地域活性化、図書館経営などの分野で近年よく使われる言葉です。第一の場が家庭、第二の場が職場もしくは学校です。第三の場は、地域住民がいつでも誰でも自由に出入りでき、おもしろく陽気に会話を楽しめる居場所です。それは、比類なき独自の価値と存在意義をもち、コミュニティや個人に大きな利益と効用をもたらすとオルデンバーグは論じました。第三の場についてはいろいろ誤解されていることが多いので、本書を読んで第三の場のあり方や効用をきちんと理解していただければと思います。ホンモノの第三の場は、社会的格差や分断・孤立を是正し、みんなを幸せにしてくれます!

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『シリアの秘密図書館:瓦礫から取り出した本で図書館を作った人々』
デルフィーヌ・ミヌーイ著 ; 藤田真利子訳(東京創元社、2018年)

人はなぜ本を読むのでしょうか。2015年、シリアの首都ダマスカス近郊の町ダラヤは内戦で瓦礫の町と化してしまいましたが、若者たちはその瓦礫の中から焼け残った本を取り出し、地下に「秘密の図書館」を作りました。本は、絶望する若者に別世界の中でのひとときの安らぎと楽しみを与え、傷ついた心を癒やし、元気づけたのです。また、そうした本のある避難所となった「秘密の図書館」の中で育まれたのは、親密な交流、理性的な対話と議論、安らぎ、倫理、規律、寛容、希望、夢、……でした。本と図書館とが持つ大きなパワーと真の価値は極限状況においてこそ発揮されるのかもしれません。著者はフランスの女性ジャーナリストですが、本書を書くに至った経緯にもきっと驚かされます。

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『プルーストとイカ:読書は脳をどのように変えるのか?』
メアリアン・ウルフ著 ; 小松淳子訳(信山社、2021年)

認知神経科学と発達心理学を専門とする著者は、なぜ古代ギリシアの哲学者ソクラテスが、当時の口承文化から文字文化への移行を危惧したのかと私たちに問いかけます。ソクラテスによると、その場の命ある人の「生きた言葉」を人と対話し吟味することによって、初めて真実と善を探究することができるのです。ですが、文字で書かれた「死んだ言葉」は、対話も吟味もされないため、真実かどうかも分からない上、人間の記憶力や判断力、批判的思考力も奪います。これはまさにフェイクニュースや誤情報にあふれるポスト真実の現代にも通じることです。脳と文字・読書との関係を深く知ることができる本です。

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『読書の歴史:あるいは読者の歴史』
アルベルト・マングェル著 ; 原田範行訳(柏書房、1999年)

あの『千夜千冊』を書いた稀代の読書家であり編集者、書評家でもある松岡正剛が「ものすごい本」と賞賛しているほど、類いまれな本だとしか言いようがありません。師のボルヘスを凌ぐ博識を駆使して、古今東西の読書の歴史を史実、逸話、伝承、研究成果などから縦横無尽に語り尽くしています。また、本書には二重三重の仕掛けが施されていて、例えば、1章の前のはじめに「最後のページ」、最終章のあとがきに「見返しのページ」というタイトルをつけています。その謎解きにも高尚な知識と読解力が求められます。全部で20章ありますが、読書好きや本好きの人はその目次を見ただけで心奪われることでしょう。

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『見えない・見えにくい人も「読める」図書館』
公共図書館で働く視覚障害職員の会編著(読書工房、2009年)

2019年6月「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律(読書バリアフリー法)」が制定され、様々な障がいの有無に関わらず、老若男女すべての人が読書による文字・活字文化の恩恵を受けられるようになりました。図書館では、録音図書、点字図書、拡大写本、点訳絵本、さわる絵本、布絵本、LLブックなどの資料の収集・作成・提供、対面朗読サービスや拡大読書器の整備、施設のバリアフリー化、配本などを以前からおこなっています。あらゆる人びとの「読む権利」(もっとも重要な基本的人権の一つ)の社会的保障ともいえる、こうした図書館サービスの実践と理念をぜひ本書を手に取ってお確かめください。

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