2.社会・大学環境の変化が、学部生・大学院生の学びに問いかけるもの

前節で述べた社会および大学を取り巻く環境の変化は、大学の制度や運営のあり方だけでなく、学部生・大学院生一人ひとりの「学びの中身」や「学ぶ姿勢」そのものに、直接的な問いを投げかけています。大学での学修は、変化の激しい社会でキャリアを歩んでいくための土台を形成する重要な時間となっています。

第一に問われているのは、「何を学ぶか」だけでなく、「どのように学ぶか」という点です。社会の変化が加速する中で、卒業後に直面する課題の多くは、在学中に学んだ知識をそのまま当てはめれば解決できるものではなくなっています。むしろ、課題そのものが明確に定義されていない状況の中で、自ら問いを立て、必要な知識や情報を取捨選択し、試行錯誤を重ねながら前に進んでいく力が、これまで以上に重要になっています。グループワークやプロジェクト型学修、実習やフィールドワークといった学びの形が重視されている背景には、こうした社会的要請があります。

とりわけ、文系・理系という区分を前提に、自分の専門の内側だけで学びを完結させることは、今後ますます難しくなっています。AIやデータサイエンスが社会のさまざまな場面で活用されるなかで、文系分野を学ぶ学生にも数理・情報に関する基礎的な理解が求められ、理系分野を学ぶ学生にも、人間や社会、倫理、制度、文化に関する理解が不可欠となっています。学部生・大学院生にとっては、自らの専門性を深めながらも、異なる分野の知や方法に開かれ、問いそのものを組み替えていく学び方が重要になっています。

第二に、学びを「個人の成長」と「社会との関係」の双方から捉える視点が、学部生・大学院生に求められるようになっています。大学での学修は、自身の専門性を深め、関心や強みを形成していくプロセスであると同時に、その学びが社会のどのような課題や価値と結び付くのかを考える機会でもあります。調査や分析を進める経験は、学術的に問いを深める営みであることに加え、その問いや成果を社会の中でどう生かし得るのかを考える役割が、これまで以上に強まっています。「この研究は誰の、どのような課題とつながるのか」「成果をどのように伝えればよいのか」といった視点が、学修や研究の過程の中で意識される場面が増えています。

第三に、学びの場が大学の教室の中に限られなくなっている点も重要な変化です。正課の授業だけでなく、課外活動、地域や企業との連携プロジェクト、国際交流、ボランティア活動、起業や社会実践など、学内外に広がる多様な経験が、学部生・大学院生の学びをかたちづくっています。これらの経験は、単なる「活動歴」ではなく、他者と協働しながら考え行動する力や、自分自身の価値観を問い直す契機として、学修の質そのものを高める役割を果たしています。大学には、こうした多様な学びを、学生自身が意味づけし、振り返り、次につなげていけるよう支える環境づくりが求められています。

また、大学における学びは、授業で得た知識を社会に応用するという一方向の関係にとどまらず、社会課題との接点の中で新たな問いを見出し、その問いを再び学修や研究へと持ち帰る往還的な営みとして捉える必要があります。文理横断型の教育やダブルメジャーの検討は、こうした学びの広がりを制度的に支える可能性を持つものです。学部生・大学院生が、自身の専門を軸にしながらも、異なる分野や社会の現場と接続し、複数の視点から課題を捉え直す経験を積むことは、今後の学びの質を高める重要な要素になります。

大学院生にとっては、研究を通じて専門性を高めることに加え、その研究成果を社会とどのようにつなげていくのか、研究者として、あるいは高度専門職業人としてどのような役割を果たすのかという問いが、これまで以上に重要になっています。研究の自由や自律性を尊重しながらも、研究が社会の中でどのような意味や価値を持ち得るのかを考える姿勢は、今後の進路選択やキャリア形成とも深く関わっています。

このように、社会・大学環境の変化は、学生が知識を修得するだけでなく、自ら問いを立て、学びを組み立て、社会との関係の中でその意味を考えていくことの重要性を浮かび上がらせています。同時に、そのような学びのあり方を、大学がどのように支え、学生自身の主体性とどのように結びつけていくのかも問われています。大学での学びは、用意された正解を効率よく得るための時間ではなく、迷いや試行錯誤を含みながら、自分なりの問いや方向性を形づくっていく時間へと変わりつつあります。

また、学びの中では、自分がどのように考え、行動していくのかのよりどころとなる価値や考え方を意識することも重要です。2025年度末に改正された立命館憲章は、学園全体の理念や将来に向けた方向性を示す指針であり、大学が何を大切にし、どこへ向かうのかを考える際の基盤となるものです。ただし、それは理念として掲げられるだけでは十分でなく、日々の学びや対話、学生生活の中で繰り返し参照され、その意味が広く共有されながら、自らの行動や実践へとつながっていくことが求められます。

そのため、学びや成長のあり方、研究環境の充実について学部生・大学院生と教職員が共に考え、共有していくことが大切です。大学は、いまの取り組みの改善に加え、次節以降で述べるR2030「チャレンジ・デザイン」で掲げる次世代研究大学や創発性人材の育成といった目標に向けた後半期の取り組みの実践やその具体化に向けた議論を通じて、それらを成し遂げたいと考えています。このプロセスとして、2026年度全学協議会は重要な位置づけにあります。

NEXT:第Ⅰ章3.社会・大学環境の変化を踏まえた学部生・大学院生の育成像

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