2.R2020からR2030前半期までの財政運営と到達点
(1)R2020期間における取り組み
R2020期間(2011~2020年度)において、立命館大学は、教育の質および学習環境の向上を基本目標に掲げ、教学条件の計画的な整備に取り組んできました。具体的には、専任教員数の着実な増加による教育体制の充実、キャンパスや教育研究施設の整備・更新、奨学金制度や学習支援制度の拡充などを通じて、学生一人ひとりの学びの環境改善を進めてきました。この期間においては、基準授業料の改定を行わず、学習者中心の教育やグローバル化を推進してきた点に大きな特徴があります。
一方で、定員管理の厳格化に伴う学生数の減少、消費税率の引き上げ、社会保険料負担の増加など、大学の努力だけでは対応が困難な外部環境の変化が重なりました。さらに、2020年度には新型コロナウイルス禍の深刻化に伴い、学生の学びと生活を継続するための緊急的な対応の必要性が生じました。立命館大学では、これまでに形成してきた一定の財政基盤のもと、非常時においても教育活動を継続するための対応を迅速に行うことができましたが、これら複数の要因が重なり、2020年度に教育活動収支差額がマイナスに転じました。この経験を通じて、長期的視点に立った安定的な財政運営の必要性が、あらためて強く認識されることとなりました。
(2)R2030前半期における取り組みと到達点
R2030前半期(2021~2025年度)においては、R2020期間の課題認識を踏まえ、「R2030チャレンジ・デザイン」のもとで、将来に向けた挑戦的な教学・研究施策の推進と、財政基盤の健全化を並行して進めることを基本方針として取り組んできました。次世代研究大学としての発展を目指し、重点的な研究推進を行うRARA構想の具体化や、教職員が職種や組織の枠を超えて自発的な共創に取り組むグラスルーツ実践支援制度を継続的に実施しています。これらの施策については、学納金ではなく、受取利息・配当金を財源とする予算を活用することで、学費への依存を高めない形で実行してきました。
また、R2030前半期においては、社会および地域との関係性を広げる取り組みとして、大阪・関西万博への参画をはじめ、「衣笠アートヴィレッジフェスティバル」、「BKC健幸フェスタ」、「いばりつ(いばらき×立命館DAY)」などを実施してきました。これらは、地域住民や自治体等との交流を通じて、学生が学びを深める機会を創出するものであるとともに、大学の教育・研究活動や学生の取り組みを社会に発信する機会でもあります。これらの実践は、大学と地域・社会との相互理解を促進し、信頼関係を基盤とした連携を強化する取り組みとして、R2030前半期における重要な到達点の一つと位置づけられます。
あわせて、基盤的な収支バランスの改善に向けては、常任理事会において複数回にわたる厳しい議論を重ねた上で、教学条件を持続的に維持・改善することを目的とした教学維持改善費を組み込んだ授業料改定方式を提起しました。この方式のもと、学生数の回復と授業料改定により学納金収入が増加したことは、財政収支の健全化に重要な役割を果たしています。さらに、資金運用の強化による受取利息・配当金の安定化を図るほか、寄付金政策の強化、また、「次世代研究大学」のメルクマールとなる「地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(J-PEAKS)」、「宇宙戦略基金事業(SX)」のような大型の外部研究資金を獲得することによって、学費への過度な依存を抑えつつ、持続可能な教学・財政運営の基盤を段階的に構築してきています。
支出面では、教職員の処遇改善、インフレや原料費の高騰、円安の進行、高度化するIT環境への対応等、増加圧力が強い状況が続いている中、業務見直しやDX推進による経費節減にも不断に取り組んでいます。
学生一人当たりのキャンパス面積の変化
教員一人あたりの学生数の推移
学納金比率の推移
寄付金推移
受取利息・配当金推移
経費節減の取り組み:社会情勢変化等による強力な支出圧力のなか、コスト削減努力を経年で積み重ね
2020年度以降も、DX等を活用した省人化、無人化の議論や業務自体の見直しを行うことで、
継続した経費削減の取り組みを行っています。
2021年度:△2.7億円/2022年度:△0.6億円/2023年度:△0.5億円/2024年度:△1.5億円/2025年度:△2.0億円
(1)コスト削減の主な対象としている委託費、光熱水費の推移。2010年度および2019年度は決算数値。
(2)労務費は最低賃金(全国加重平均)による(https://jbrc.recruit.co.jp/data/data20250912_3929.html)。
(3)電気料金は産業用平均単価による(https://www.enecho.meti.go.jp/about/pamphlet/energy2025/03.html#section2)。
目次Index
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第Ⅰ章
2026年度全学協議会の意義と位置づけ
―これからの立命館大学を考えるために―
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第Ⅱ章学園共創のプロセスとしての全学協議会のあり方
―2022年度以降の議論の積み重ねを踏まえて―
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第Ⅲ章2022年度から2025年度における立命館大学の取り組みについて
―学び・研究・学生生活の充実に向けたR2030前半期の歩み―
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第Ⅳ章R2030後半期に向けた教学・研究・学生生活の重点施策
―学部生・大学院生との対話を踏まえ、「いま」を充実させつつ「これから」の展開を構想する―
- 第Ⅴ章R2030期間の財政運営と立命館大学の2027年度以降の学費・財政政策について
- おわりに2026年10月に開催される公開での全学協議会に向けて

