国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、2023年9月7日に打ち上げた小型月着陸実証機(SLIM)が、2024年1月20日午前0時00分(日本標準時)に着陸降下を開始、同0時20分に、月面にピンポイント着陸したことを発表しました。月面着陸に成功したのは、旧ソビエト、アメリカ、中国、インドに続き、5カ国目となります。また、月面へのピンポイント着陸は世界初の成果です。

 SLIMには月の起源の解明に向け、立命館大学宇宙地球探査研究センター(ESEC)佐伯和人センター長らが開発した「マルチバンド分光カメラ(Multi-Band Camera:MBC)」が搭載されています。MBCはSLIMの月面着陸後、打上げおよび着陸の衝撃に耐えるためのロック機構を解除し、可動ミラーを動かして、観測対象となる岩石を特定するためのスキャン運用を行いました。257枚の低解像度モノクロ画像を撮像・合成して、景観画像を作製したものが図1です。この景観画像をもとに、観測対象岩石を選別し、相対的な大きさがイメージできるような愛称をつけて、今後、電力が回復した場合、速やかに10バンド高解像度分光観測ができるよう準備を進めています。これまでアポロ計画等で持ち帰られていない新しい種類の月の岩石の観測・分析を試みようとしています。

図1: SLIM搭載マルチバンド分光カメラ(MBC)による月面スキャン撮像モザイク画像(左)とその拡大図(右) ©JAXA 、立命館大学、会津大学
図1: SLIM搭載マルチバンド分光カメラ(MBC)による月面スキャン撮像モザイク画像(左)とその拡大図(右) ©JAXA 、立命館大学、会津大学

佐伯和人ESECセンター長のコメント

 SLIMは降りたいところに降りてくれる探査機ということで、月周回探査機「かぐや」で見つかった月科学上興味深い地域に着陸地点を設定していただきました。そして、まさにその場所にSLIMはMBCを運んでくれました。クレータから飛び散ったたくさんの岩石が落ちているSCAN画像を見て、まさにこの景色が見たかったのだと感激しました。月の起源に迫るデータを取得して、この場所に連れてきてくれたSLIMの恩に報いたいです。

MBC運用訓練にESECに集まったMBCチーム。上段右から2番目が佐伯センター長、右隣りが長岡央准教授、その下が仲内悠祐助教
MBC運用訓練にESECに集まったMBCチーム。上段右から2番目が佐伯センター長、右隣りが長岡央准教授、その下が仲内悠祐助教

ESEC所属 SLIM搭載マルチバンド分光カメラ(MBC)開発・運用メンバー のコメント

長岡央准教授(総合科学技術研究機構)

 かぐやの打ち上げを種子島で経験してから16年以上が経ち、再び日本の探査機が取得した月のデータを見ることができました。打ち上げ前の開発から関わった今回のミッションでは、学生だったあの頃とはまた違った感動を味わっています。これから月探査は世界的にもさらに活性化していくことでしょう。SLIMの成果をみて、今後宇宙開発に携わる方々が増えていくことを願っております。



仲内悠祐助教(総合科学技術研究機構)

 今、我々の分身が月にいます。MBCが我々の目となり、月面で観測をスタートしました。SLIM本体同様、MBCにも月・惑星探査カメラとして挑戦的新技術が多く搭載されています。特にこれからの月面探査時代に必須技術である、スキャンミラーによる観測が成功しました。MBCでの観測運用、成果、そして次代の月・惑星探査への技術応用にご期待ください。



野口聡一学長特別補佐・ESEC研究顧問のコメント

 小型月着陸実証機(SLIM)の月面着陸、誠におめでとうございます。宇宙機の月面着陸成功は世界で5か国目であり、これまでに例を見ないピンポイント着陸の成功という点で歴史的な偉業といえるでしょう。「マルチバンド分光カメラ(Multi-Band Camera:MBC)」から、新たな月面探査時代が幕を開けることを期待しております。

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