教員紹介
- マイノリティ
デジタル情報社会の中で、一時期は図書館不要論も唱えられましたが、今や公共図書館は地域活性化、まちづくりの中核として活況を呈しています。公共図書館は、静かな読書と勉強の場というイメージを脱却し、出会いと交流の場として、あらゆる人びとの生活と生涯学習を支えています。大学図書館でさえも会話や飲食のできるコモンズやカフェを擁し、学校図書館も生徒の心の居場所、交流の場ともなっています。「場としての図書館」研究は、複層的な機能と空間によって大きく変容する図書館の新たな意義と社会的、教育的価値を学術的に考察する図書館情報学の新しい分野です。なので、私は図書館の新たな可能性を開拓すべく、いつも研究に夢中になっています。
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日本史や日本文化について考える時、周縁(地域的・身分的)から相対化する視点は必要不可欠だと思います。自民族の歴史や文化に至上の価値を求める考え方が、他者の過小評価や否定を伴うことに繋がりやすいのはなぜかを、古代の夷狄等を例に検討し、近代歴史学の形成過程と関連づけて考えています。「歴史の中の自他認識」を問いなおす視角は、我々が暮らす京都を考える上でも有効です。京都が纏う「雅な古都」や「文化首都」のイメージはいつどのように生まれ、何を切り捨てて現在に至っているのか。古文書や梵音具、教育、伝統工芸から紙芝居・マンガに至るまで、埋もれた資料を発掘し、地域住民の歴史意識の変容を跡付けます。
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私は中世ヨーロッパの世界を研究しています。それは遠い過去ではありますが、現代ヨーロッパの基礎はこの時代に形成されたのです。中世ヨーロッパ研究の面白さというのは、私たちとは異なった過去世界の文化や価値観を知るばかりではなく、それをつうじて「現代」をより深く認識することができる点にあるといえましょう。私の場合、キリスト教世界である中世ヨーロッパにおいて、正統のローマ・カトリック教会から「異端」とされた人々の運命に関心があります。異端者をはじめとしたマイノリティに対する迫害と不寛容の歴史は、現代の世界の各地に起きる宗教対立という私たちの「今」を考え直す材料を与えてくれるからです。
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“The unknowable”をキーワードに、19世紀アメリカ文学を研究しています。科学発展により知識が拡大した時代に、むしろ「不可知なもの」の意義や成り立ちを追究していた作家たちに関心があります。フレデリック・ダグラス、エミリー・ディキンスン、スイシンファーなどは、宗教的な謎にくわえ、失われた証拠、奴隷制に奪われた知識、権力をあざむく秘密作りの技法など、生活に根ざした知の限界を描きました。解らなさを見つめることで、彼らはどんな人生の機微に触れたり、社会問題に迫ったり、新たな知のあり方を模索したりしたのか?そうした探究に、なぜ詩やミステリー、自伝など特定の文学形式が選ばれたのか?こちらも手探りで考えています。
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私の専門はアフリカ系アメリカ人の歴史と文化です。その中でも特に彼・彼女らたちを標的とした暴力と、こうした人種暴力に対する抵抗の歴史を、さまざまな視点から研究しています。当時の出来事を明らかにすることだけではなく、それが現在に至るまでどのように語られてきたかという commemoration(公的記憶)の問題を考えることにも関心があります。たとえば博物館などにおいて、暴力の歴史はどのように展示されているのか。教科書はどのようにその歴史を教えてきたのか。過去と現在のつながりを見ていくと、歴史はますます面白いものになります。
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アメリカの歴史やポピュラー文化を中心に、ジェンダーの視点から男性の多様性と雑種性についての当事者研究をしています。特に、弱者としての男性について興味があります。従来の歴史が取り上げてきたのは英雄や政治家といった強者の男性たちです。そんな彼らの陰に埋没した弱者の男性たちの歴史的経験を掘り起こすことなくして、男性中心社会の在り方を変えることはできません。強者は力で他者を支配し、その力を奪われることを恐れる単純な存在です。それに対して、弱者は時として死ぬことすらも恐れない屈強な精神と無限の可能性を内に秘めた存在なのです。
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南アフリカの人種主義といえば、アフリカ大陸の南端にありながら20世紀末に至るまで少数の「白人」がアフリカ人を支配し、厳格な隔離体制が維持されていたことで知られています。そんな南アフリカで、アジアから到来した人びとはどのように暮らしてきたのでしょうか。そして彼らの存在は当地の人種的秩序にどのような影響を与えてきたのでしょうか。こうした関心に基づき、人種主義やアフリカ-アジア関係、さらにいわゆる「名誉白人」待遇について社会学的な研究を行ってきました。
グローバル・サウスの文化や社会を探究することは、私たちがこれまで親しんできた世界を新たな角度から捉えなおす営みでもあります。自分のなかの「当たり前」が揺らぐ経験も、この研究の醍醐味です。
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