「子どもたちと、ともに学び、ともに成長する」 地域創造のための学習コミュニティの形成を目指す 政策科学部 稲葉ゼミのProject Based Learning(PBL)

2019.01.23 TOPICS

「子どもたちと、ともに学び、ともに成長する」 地域創造のための学習コミュニティの形成を目指す政策科学部・稲葉ゼミのProject Based Learning(PBL)

 1994年開設の政策科学部、その学びの特徴のひとつにProject Based Learning(プロジェクト・ベースト・ラーニング、以下PBL)があります。キャンパスから街に飛び出し、いま問題が起きている現場に出かけたり、問題解決に取り組む人の話をきいたり、進行中のプロジェクトに自ら参加したりと、体験型・実践型の学びを通じて、広い視野で社会の問題を見つめ、探求し、解決策を提言できる人材の育成に努めています。こうした取り組みは、「境界を超えて学ぶ」「ともに学ぶ」という立命館大学の教育モデルの具体的な実践例とも言えるでしょう。ここでは、そうした取り組みのひとつ、京都府八幡市の教育委員会と共同で取り組んでいる「八幡市子ども会議 市長への提言」(稲葉光行教授)を紹介します。
 八幡市子ども会議は、市の全ての小学校、中学校、高校から子どもたちが参加し、街づくりや学校改善のために話し合い、年に一度、市長への提言として取りまとめ発表するもので、2004年の開始から今回で15年目となります。学生たちは、地域調査、意見交換、動画ツールの作成、WebやSNSを通じた情報発信といった手法に関して子どもたちを支援することで、地域創造のための学習コミュニティの一員として活動しています。

新しい学習コミュニティの形成

本番を前に子どもたちと念入りな打合せ
本番を前に子どもたちと念入りな打合せ
『八幡市子ども会議 市長への提言』本番の様子
『八幡市子ども会議 市長への提言』本番の様子

 地域と連携した取り組み、学びの意義やメリットについて、稲葉教授は、「社会課題を自ら見つけ、解決に導ける人材の育成が、政策科学部の大きなテーマの一つです。子どもたちはもちろん、教育委員会など行政の方々、地域住民とのコミュニケーションを通じて、子どもたちと共に市が抱える問題を探し、見つけ、解決策を考えていく。実際の自治体の課題を踏まえ、実態調査・分析を行いつつ提案にまとめていく各種スキル、年代や立場の異なる人々の話を聞きながら円滑にプロジェクトを進めるコミュニケーションおよびファシリテーション能力を磨く上でも、最適なアクティブラーニングの場だと考えます。これは読書や授業中の対話だけでは決して身に付かないものです。テーマも含めてゼロから創り上げていくもので、指示待ちではなく自ら課題や問題点を見付けて積極的に動ける能力は、実際に社会に出て企業や自治体などで働く上でも大切です」と話します。
 「最終的に提言にまとめ、市長の前で実際に発表するのは子どもたちです。自らの意見を押し付けるのではなく、相手に理解してもらう能力、すなわち説明する力も育まれます。さらに、子どもたちと共に取り組むことで、責任感の醸成にもつながっています」と稲葉教授。市長への提言が行われた日は、多くの卒業生も参加。彼らも「就職活動や社会人となった現在も、当時の活動の経験が役立っています」と笑顔で話します。今回ゼミ長として活動に関わった飛鳥馬一貴さん(3回生)は、「どう説明すれば子どもたちに分かってもらえるかを考えていました。相手の意見を聞き出し、まとめていくといった体験は、とても貴重でした」と振り返ります。

子どもを中心とした街づくりの実践の場

丁寧にコメントする堀口文昭八幡市長
丁寧にコメントする堀口文昭八幡市長
稲葉光行教授
稲葉光行教授

 子ども会議は、人口減による市内の小学校などの統廃合について子どもたちからも意見を聞こうということで始まり、当初は1年限りの企画でした。ところが、大人にはない斬新なアイデアが多く出されたことで、活動を継続することが決まったのです。稲葉ゼミの学生は、初年度からサポーターとして参画しています。過去には、子ども会議が提案した地元名産のたけのこ入りハンバーグ『ハチンバーグ』が学校給食で提供されたり、『八幡ものしり博士検定』が成立したり、八幡市子ども動物園のリニューアル案が採用されたりなど、実際に市政に生かされた例も多く、市のPRや活性化などに役立っているとのことです。
 「行政側にとっても、部局間の交流や地域と行政のつながりが深まったり、新しい発見がもらえたりなど、とても役立っています」と、八幡市教育委員会の川中尚教育部次長。さらに「子どもたちが異なる世代の人と関わる機会が少なくなっている昨今、一定の知識やスキルを持った大学生が継続的に指導してくれることで、刺激にもなり、社会参加への意欲も高まっています」と、大学生が地域の取り組みに関わるメリットを話します。
 稲葉教授は、「現在は各学校の代表が集まって意見交換をしていますが、もっと各校を巻き込んだプロジェクトとして発展させていければ」と、展望を話します。そうした取り組みが、今後、初等・中等教育でも求められているアクティブラーニングの基礎となり、やがては大学・学生と市や子どもたちとが学び合い支え合うための学習コミュニティ『実践共同体』の形成へとつながっていくことを願っている、そのように活動に対する期待や抱負について語っていました。

※『八幡市子ども会議 市長への提言』とは:京都府八幡市内の、すべての小・中・高校(小学校8、中学校4、高校1)から代表として選出された約40人の委員によって構成され、子どもの視点から地域や学校の改善に関する提言を八幡市長に対して行うもの。2004年から活動を開始。大学生のサポートのもと年間7回前後の会議・調査活動を行い、その結果をもとに市長への提言を実施。

提言を終え市長と記念撮影
提言を終え市長と記念撮影

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