加藤周一文庫開設記念講演会を開催

ソーニャ・カトー氏
ソーニャ・カトー氏
大江健三郎氏
大江健三郎氏

 5月7日(土)、衣笠キャンパスにて加藤周一文庫開設記念講演会が開催されました。講演会では、加藤周一氏のご令嬢でウィーン市議会議員を務められたソーニャ・カトー氏と、加藤氏と親交の深かったノーベル賞作家・大江健三郎氏の講演が行われ、約600名の聴衆が戦後日本を代表する国際的知識人であった加藤周一その人と思想について思いをはせました。

   2011年2月、立命館大学は、国際関係学部客員教授や立命館大学国際平和ミュージアム初代館長を務めた故加藤周一氏のご遺族より、その厖大な蔵書、手稿ノート、資料類の寄贈を受けました。本学ではこれらの蔵書等を「加藤周一文庫」として広く一般市民や学生に公開するために整備作業を進め、2016年4月に衣笠キャンパスの平井嘉一郎記念図書館内に「加藤周一文庫」を開設しました。本講演会はその開設を記念して開催されました。

吉田美喜夫学長
吉田美喜夫学長
ヨハンネス・コールヘル領事
ヨハンネス・コールヘル領事

 講演会は、吉田美喜夫学長からの挨拶から始まり、まず来賓の駐日オーストリア大使館のヨハンネス・コールヘル領事やソーニャ・カトー氏、大江健三郎氏への感謝が述べられました。また、「今、我々は時代の岐路に立っています。いかなる道を歩むべきかを真摯に考え、行動する人にとって『加藤周一文庫』が拠り所になることを願っています」と文庫への期待が述べられました。続いてヨハンネス・コールヘル領事から挨拶が行われ、祝辞とともに文庫開設によってオーストリアと日本そして立命館大学がより密接な関係になったことの意義などについて述べられました。
 続いて、ソーニャ・カトー氏による講演「加藤周一―世界を見つめた旅人」が行われました。講演でカトー氏は父・周一氏との思い出を語られ、日本とオーストリアと遠く離れていても父と娘として信頼し合い、愛情を育んでいたことを語られました。「父とヨーロッパ各地を訪れた体験がヨーロッパ人としての私を確立させ、父のヨーロッパが私のヨーロッパになりました」など、ヨーロッパの文化や歴史、政治、経済に対する思い、旅人としての父・加藤周一氏とのエピソードを述べられました。
 休憩を挟んで、大江健三郎氏による講演「加藤周一を再読する」が行われました。講演で大江氏は、加藤氏の著書『言葉と戦車を見すえて』(ちくま学芸文庫)から加藤氏の言葉を引用しながら、国際的知識人・加藤周一の思想について語られました。特に、評論「天皇制を論ず」の文章を引用しながら、日本人にとっての天皇制を考えることが日本を考える上で重要であるということ、戦争と天皇制の関係性などについて加藤氏の思考ともに述べられました。

 講演終了後の質疑応答の後、ソーニャ&シュウイチ・カトー研究奨励金表彰式が行われました。本奨励金は、ソーニャ・カトー氏のご厚志により、加藤周一の思想研究を行う若手研究者の育成支援を行うことを目的とし、加藤周一の思想に関心があり、ウィーンで研究活動を行う若手研究者を対象としています。奨励金対象者に、加藤周一現代思想研究センターの半田侑子・客員研究員が選ばれ、半田研究員から感謝の言葉ともに加藤周一研究への抱負が語られました。
 最後に、講演会の司会を務められた鷲巣力・加藤周一現代思想研究センター長から、講演者ならびに参加者への謝辞が述べられ、盛大な拍手のなか講演会は終了しました。

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