講座の様子

 2017年9月16日、立命館大学びわこ・くさつキャンパス エポック立命21にて、平成29年度(2017年度)「あいこうか生涯カレッジ」理論学習講座が実施されました。
 「あいこうか生涯カレッジ」は、地域にある文化財等を題材とした学習「地域発見講座」から始まり、高校での体験学習「体験的学習講座」を経て、大学での専門的な学習「理論学習講座」へと、会場を移しながら学ぶ生涯学習講座で、本学BKC地域連携室も参画する「あいこうか生涯カレッジ実行委員会」の主催により実施されています(事務局:甲賀市教育委員会)。
 昨年に続き今年も「理論学習講座」の全日程をびわこ・くさつキャンパスで実施し、6名の本学教員が講師を務めます。
 今回は、文学部の須藤 圭助教が「今、源氏物語がおもしろい」をテーマに講義を行いました。

辞書を読み比べて源氏物語の世界を紐解き、歴史をたどって現代へ

立命館大学文学部 須藤 圭 助教

 まず、須藤先生から、複数の辞書における源氏物語についての記述が紹介されました。各辞書の特色によって少しずつ記述内容が異なる中でも、「後世の文学に多大な影響を及ぼした作品」と説明されている点は共通していて、中にはそれにとどまらず、「日本文学の最高峰。」という、辞書にしては珍しく言い切った表現がされているものもあります。複数の辞書を比較しながらの解説はとても興味深く、これから続く講義に一気に引き込まれました。
 続いて取り上げられたのは源氏物語の歴史。1008年頃に源氏物語が成立し、その後、その影響を受けた作品や源氏物語の続編として書かれた作品が生まれます。近現代には与謝野晶子、谷崎潤一郎らによる現代語訳や末松謙澄、アーサー・ウェイリーらによる英語訳が行われました。さらに近年は、源氏物語を題材にした漫画・アニメ・映画の製作、アイドルグループ「光GENJI」の登場(1987年結成・1995年解散)、清水善範「読み違え源氏物語」の出版(2007年)等に見られるように、源氏物語が現代文化に浸透しています。
 特に今年2017年は、中野幸一による現代語訳完結(勉誠出版)、いしいしんじによる現代語訳連載開始(京都新聞)、角田光代による現代語訳刊行開始(河出書房新社)と3つの現代語訳が並び立ち、「異例」ともいえる活況を呈しているとのことです。

現代語訳に表れる「多様性」

「桐壺巻」と「若紫巻」の現代語訳に挑戦。訳す人によって表現に違いが出ました。
須藤先生から、作家の現代語訳にも多様性が表れていることが解説されました。

 源氏物語について理解を深めた後は、受講者が全員、紙と鉛筆を手に「桐壺巻」と「若紫巻」の現代語訳に挑戦。
 全員が訳し終わった後、須藤先生がいくつか読み上げて紹介すると、同じ箇所を同じ趣旨で訳しても、訳す人によって表現に違いがあるという興味深い結果が見られました。ここで須藤先生から中野幸一、角田光代、いしいしんじ、与謝野晶子、谷崎潤一郎らによる現代語訳が紹介されました。すると、作家たちも今日の受講者と同じように、訳す人によって違いがあります。例えば谷崎潤一郎は、「若紫巻」の「犬君が逃がしつる」という若紫の発言について「(犬君が)逃がしたの!」と訳す作家がいるのに対して、若紫に乱暴なことばを使わせたくないとして、「逃がしてしまひましたの」という訳を貫いたとのことです。
 須藤先生によると、「世界で最初の心理小説」ともいわれる源氏物語の現代語訳は、訳す人によって表現に違いが生まれるが、そこには一つの「正解」があるわけではなく、「違い」は多様な価値観の表れであると同時に、人それぞれのバックグラウンドの反映であるとのことです。
 受講者たちは、源氏物語は読み手によって多彩な受け取り方や思い入れが生まれる、とても奥深い作品であることを自らの現代語訳を通して、わかりやすく実感できました。
 講義終了後の会場では、「ぜひ源氏物語を読んでみたくなった」と感想を述べ合う受講者の様子があちこちで見られました。

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