ゴルフ熟練者は、ゴルフ未経験者よりも体幹筋量および、その左右差が大きいことが判明
「長期間のゴルフ競技に携わるゴルフ熟練者は、ゴルフ未経験者よりも体幹筋量および、その左右差が大きい」。泉本洋香さん(スポーツ健康科学研究科博士課程後期課程3回生)が論文にまとめたゴルフ選手のパフォーマンス向上つながる研究成果がこのたび科学雑誌『Plos One』で公開されました。
これまでの先行研究では、野球やテニスなど、体幹部の一方向への回旋動作を伴うスポーツにおいて、選手の体幹筋形態は左右非対称であることが報告されていました(Tsuchikane, et al., 2017; Sanchis-Maoysi, et al., 2013)。しかし、同じような動きをするゴルフ競技において、体幹筋形態が左右非対称であることは科学的な研究成果として実証されておらず、体幹部の一方向への強い回旋および、側屈動作を伴うゴルフスイングを繰り返し行っているゴルフ選手も、左右非対称な筋形態を有していることが推測されていました。
そこで、泉本さんは、ゴルフ熟練者における体幹筋量の左右差を明らかにすることを目的に研究を進めました。
ゴルフ熟練者とゴルフ未経験者の体幹筋量の違いを検証
今回の研究では、右打ちの男性ゴルフ熟練者17名(ゴルフ歴12.4±2.8年、平均スコア74.5±2.2打、ベストスコア65.5±1.8打)および、男性のゴルフ未経験者11名を被験者とし、MR装置を用いて体幹部(第1腰椎から仙骨まで)の連続した横断画像を取得し、検証しました。各画像の腹斜筋群(外腹斜筋・内腹斜筋・腹横筋)、脊柱起立筋、大腰筋、腹直筋、多裂筋、腰方形筋の筋横断面積を左右別に算出し、それらをすべて足し合わせることで各体幹筋の筋体積を求めたほか、利き打ち側の筋体積に対する非利き打ち側の筋体積の割合を左右差率として算出しました。
体幹筋量の違い、左右差が実証された
検証の結果、ゴルフ熟練者とゴルフ未経験者において、体幹筋量は、腰方形筋を除くすべての体幹筋においてゴルフ熟練者の方が未経験者よりも有意に大きく、左右差率は腹斜筋群・大腰筋・腹直筋において、ゴルフ熟練者の方が未経験者よりも有意に大きいことがわかりました。
ゴルフ熟練者の左右の体幹筋量を比較すると、腹直筋は利き打ち側、腹斜筋群と大腰筋は非利き打ち側が反対側の筋よりも有意に大きいため、スイング動作に適応して、これらの体幹筋が肥大していた可能性が示唆されました。
本研究より、長期間のゴルフ競技に携わるゴルフ熟練者は、ゴルフ未経験者よりも体幹筋量および、その左右差が大きいことが分かり、これらの結果から、ゴルフ熟練者は自らのスイング方向の体幹動作行うための体幹筋が発達していることが示唆されました。
今回の研究結果から、泉本さんは、「ゴルフ選手は、体幹部のすべての筋(腹筋・背筋・側筋)を鍛えるようにトレーニングをする、またその際にゴルフスイング動作を意識することが、ゴルフパフォーマンス向上につながるのではないか」と考えています。