理工学部 道関隆国教授らがIEEE S3S 2019にて「Best Paper Award」を受賞

 本学、道関隆国教授と田中亜実講師(ともに理工学部 電子情報工学科)らの論文「150-nW FD-SOI Intermittent Startup Circuit for Micropower Energy Harvesting Sensor」が、2019年10月14~17日にアメリカ サンノゼで開催された国際会議IEEE S3S(SOI-3D-SUBTHRESHOLD MICROELECTORONICS TECHNOLOGY UNIFIED CONFERENCE)2019で「Best Paper Award」に選ばれました。

 IEEE(米国電気電子学会、米国電気電子技術者協会)は、電気・電子工学・コンピューターなどの分野で世界最大規模の学会です。規格標準化にも大きな役割を果たしており、その多くはISO(国際標準化機構)により国際標準として採用されています。S3SはIEEEが主催する国際学会で、今年で45年目を迎えます。

今回受賞した論文では、環境発電システムでキー技術となる電源変換回路の起動回路の構成法を述べており、エイブリック株式会社との共同研究の成果になります。本回路により、これまで利用できなかった発電電力を最低150nWの発電電力から蓄えることが可能になり、無線通信等を含めた新しいセンシングが可能となります。

 環境発電素子は、一次電池や二次電池と異なり、発電電力が極端に小さく、外部環境で発電電力が大きく変動するため、直接システムを駆動することはできません。道関研究室では、環境発電素子で発電した微小な電力を、一度、コンデンサに充電し、コンデンサに一定の電力が溜まったら、電源変換回路で充電電圧を昇圧し、最終段の無線機を駆動するシステムを開発しました。本システムの電源変換回路は間欠的に無線機を駆動するので、外部環境により発電電力が変動すると無線機の無線間隔が変動するため、無線間隔で外部環境をセンシングできることになります。

 センシング機能付き間欠電源変換回路技術は、エイブリック株式会社の「CLEAN-Boost技術」として採用されました。2019年夏には、応用製品として電源不要の漏水センサが商品化され、今後、多くの施設内配管設備等への利用が期待されます。

左から、エイブリック株式会社 宇都宮様、須藤様、立命館大学 道関教授、田中講師、エイブリック株式会社石合社長
左から、エイブリック株式会社 宇都宮様、須藤様、立命館大学 道関教授、田中講師、エイブリック株式会社石合社長

■道関隆国教授コメント
 今回の受賞となった回路は、センシング機能付き電源変換回路でキー技術となる起動回路に関するものであり、エイブリック株式会社の宇都宮文靖 博士が当研究室の社会人博士コースに在籍していた時の研究成果が基になっています。大学が学術と産業の両分野で役立てたことを嬉しく思っております。尚、製品化されたセンサは、私が以前所属していた研究所時代に考案したものです。しかしながら、当時の研究所内の研究テーマの選択と集中により、大学に移って研究することを決めたテーマでもあるので、電池不要の漏水センサが製品化されたことも非常に嬉しく思っています。

■エイブリック株式会社 石合信正社長コメント
 今回、立命館大学との共同研究において生まれた「CLEAN-Boost技術」が、IEEEの国際会議でBest Paper Awardに選ばれたことを、大変光栄に思います。受賞した技術によって、150nWという僅かな環境発電電力を利用してシステムを動作させることが可能になり、「CLEAN-Boost技術」を広めることで、環境にやさしい社会の実現に向けて貢献していきたいと思います。
 今後も、産学共同により、今まで実現不可能であったことを実現できる技術を開発し、製品化していくことで、スマート社会を実現していきたいと思います。

NEXT

2019.12.03 TOPICS

シンポジウム「理系女性研究者の裾野拡大と風土づくり」開催

ページトップへ