Web授業の最前線(パート1)

2020.07.31 TOPICS

Web授業の最前線(パート1)

 立命館大学では新型コロナウイルス禍においても、学生の継続的な学びを保証すべく、Webを活用した授業を実施しています。いまだかつてない状況の下で、本学の教員・学生がどのように授業に取り組んでいるのかをご紹介します。

 第1回目は、国際関係学部の越智萌准教授にインタビューしました。

越智萌准教授
越智萌准教授

越智先生はどのような授業を担当していますか。

国際関係学専攻の1回生25名が受講する「基礎演習」、そして、英語で授業を行うグローバル・スタディーズ専攻の3、4回生36名が受講する「International organizations」を担当しています。International organizationsを受講する学生の約半数は国際学生です。韓国、中国、インド、インドネシア、スウェーデンなどの学生が受講しています。授業では、国際社会の中で重要な役割を果たしている国際機関の多様性や直面する課題について学び、解決方法を考察することを目標としています。

日本に入国できない国際学生もいるとのことですが、時差や通信環境などの課題についてはどのように対処されていますか。

International organizationsの受講生の中には、入国できず母国に残っている人もいます。そのため、時差を考慮し、授業はライブ型ではなくオンデマンド型を採用しています。また、学生の通信環境にも配慮し、円滑な再生ができるよう動画ファイルの容量はできるだけ小さくしています。視聴時間も40分程度にコンパクトにまとめつつ、視聴できない学生のことも考えて、動画のスライドをmanaba+R(クラウド型の教育支援システム)に掲載しています。

授業で工夫されている点はどのようなことでしょうか。

International organizationsの場合、毎回、授業の課題を提出するよう求めており、提出された課題に対しては全てコメントを返しています。学生は知的な刺激に反応してくれるので、コメントを返す際には、一人ひとりに合わせた参考情報、例えば図書館の電子資料やデータベースなどを案内し、学びのチャンスを与えるよう心がけています。海外にいる学生でもVPN(Virtual Private Network)に接続さえすれば、図書館の資料が閲覧できます。資料の閲覧方法は、図書館がガイダンス動画を日英二言語で整備しているので助かっています。

また、学生本人の許諾があれば、参考情報として提出物を他の受講生に紹介することもあります。時差の問題から受講生がZOOMで一堂に会することができないため、同じ授業を受講している仲間という意識を生み出すのが難しいと思います。そのため、少しでも他の学生のことを意識し、横のつながりができるきっかけが生まれるようにと工夫しています。さらに、学生が希望すれば、授業の時間にオフィスアワーを設けるなど、学生が相談しやすい環境づくりにも心がけています。

一人ひとりの状況に合わせたオーダーメイドの授業を展開されているのですね。今までの授業で学生から評判が良かった取り組みはありますか。

International organizationsでは、国連などの大きな機関だけでなく、知名度は高くないけれど私たちの生活に欠かせない国際機関(万国郵便連合(UPU)や世界気象機関(WMO))、国際的な影響力を増している核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)のような非政府組織(NGO)ネットワークといった、さまざまな国際機関で働くことを意識する取り組みを行っています。国際機関での勤務経験がある人と対談した動画を配信したり、インターンシップのカバーレターの書き方を課題にすることもありました。コロナ禍で自分の将来を描きづらいという学生もいましたが、世界で起こっているさまざまな格差の問題を学び、その解決に向けて取り組む人たちの存在を知り、そこで働くことを想像するように促し、制約がある中でも課題解決に向けて前向きに考えようとする意識が芽生えてきているように思います。国際機関の採用面接に関する動画は、学生たちの反響も大きく、国際機関を通じて多くの人のために働くという志やビジョンがより身近でリアルなものになったようです。実際に国際機関のインターンシップへ参加を申し込もうとする学生も出てきています。

対面授業とオンデマンド授業で違いを感じることはありますか。

対面授業よりもオンデマンド授業の方が学習効果は高いと思います。対面の場合、話を聞くのは一度だけとなり、発言も授業時間内に限られます。一方、オンデマンド授業の場合、動画を繰り返し視聴でき、意見や質問はいつでもmanaba+Rを通じて文字で提出することができます。特に英語が第二言語の学生にとっては聞き逃しがなく、また質問などの文面について熟考することができるため、オンデマンド授業の方がよい面が多いと思います。
ただ、オンデマンド授業の場合は、課題などをマネジメントする力がより学生に求められます。今後はより一層、そうしたフォローを進められるとよいですね。現状では、私と学生が1対1でメッセージをやり取りすることが多いため、受講者各自の意見を全体に共有し、より多面的な交流が深まるとよいと考えています。

最後に学生たちに向けたメッセージをお願いします。

目的意識をもって学んでほしいですね。学生たちは本当によく頑張っていますから、日々学んでいることが、何に役立つのか、なぜ学ぶのかを意識してもらえるとさらによいと思います。私も、授業の動画を制作する際に、どういう目的のために動画を制作するのか、どういうメッセージを学生たちに伝えるべきか、自問自答しながら制作しています。コロナ禍でいろいろと大変ですが、そういった経験も将来の糧にして大いに学んでほしいですね。

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