マカが骨格筋細胞の生育・成長を促し、筋肥大をもたらすことを発見

立命館大学大学院スポーツ健康科学研究科の易東さん(博士課程後期課程 2 回生)、橋本健志教授らの研究チームは、伝統的に滋養強壮、活力増強、栄養補給などの補助栄養剤として用いられている薬用植物のマカが、骨格筋の生育・成長を促し、筋肥大をもたらすことを明らかにしました。本研究成果は、2022年6月19日20時(日本時間)に「International Journal of Molecular Sciences」へ掲載されました。

【本件のポイント】

  • マカが骨格筋細胞の生育・成長を促し、筋肥大をもたらす作用があることを発見
  • 骨格筋培養細胞にマカエキス末を添加し、一定期間培養した筋細胞の形態変化と筋の生育・成長に影響する分子メカニズムを解析
  • 分子メカニズムに筋合成と関連するタンパク質発現の増加が関与している可能性を示唆
  • 超高齢社会におけるアンチエイジングのための有効な機能性素材として、今後の栄養処方開発に期待

研究成果の概要

本研究チームは、滋養強壮、活力増強、栄養補給などの補助栄養剤として用いられてきた薬用植物であるマカが骨格筋細胞の生育・成長を促進するかを検討しました。

C2C12 筋芽細胞(マウス横紋筋由来の筋芽細胞株)を2日間分化させ、マカ添加無しのコントロール群と0.1mg/ml 濃度のマカ添加群(0.1 maca 群)、0.2mg/ml 濃度のマカ添加群(0.2 maca群)に分けて実験を行いました。マカ添加2日後、骨格筋の生育・成長を組織化学的に解析しました。また、分子メカニズムとして、筋細胞のタンパク質発現を生化学的に解析しました。その結果、いずれの濃度のマカにおいても、マカの添加によって骨格筋の生育・成長が促進し、筋肥大が誘発されることが示されました。その分子メカニズムに、筋合成に関連するタンパク質発現の増加が関与している可能性が示唆されました。ただし、組織化学的解析によって認められた顕著な筋肥大を説明するためには、さらなる分子メカニズムの解析が必要であると考えられました。

研究の背景

高齢化に伴い、加齢性筋肉減弱症(サルコペニア)やそれに伴う運動器疾患など、様々な疾患が問題となっています。そのような疾患の予防のため、運動や適切な栄養摂取による予防が推奨されています。従来マカは、主に滋養強壮、活力増強、栄養補給などの補助栄養剤として用いられてきました。本研究チームは、マカに筋タンパク質の合成促進・分解抑制効果を示す有効成分(トリテルペン類)が含有されていることに着目しました。さらには、筋量増加に関係するロイシンやアルギニンといった複数の種類のアミノ酸が含まれていることも鑑みると、マカの筋生育・成長促進効果が期待できます。しかしながら、マカの筋生育・成長促進効果や筋肥大効果は不明でした。そこで、本研究では、C2C12 骨格筋細胞に対して、異なる濃度のマカを骨格筋細胞に添加し、マカが骨格筋の生育・成長や筋肥大へ及ぼす影響を明らかにすることを目的としました。

研究の内容

マカエキス末を添加した群の筋径の太さならびに筋面積には有意な増加が認められ、加えて、筋分化に関しても有意な増加が見られました(下図参照)。

「Yi et al., IJMS 2022」の図1より引用
「Yi et al., IJMS 2022」の図1より引用

分子メカニズムに、筋合成に関連するタンパク質発現(AktやmTORのリン酸化)の増加が関与している可能性が示唆されました。ただし、組織化学的解析によって認められた顕著な筋肥大を説明するためには、さらなる分子メカニズムの解析が必要であると考えられました。

社会的な意義

マカは、標高 4000mほどの南米ペルーに植生するアブラナ科の多年生植物で、その塊根は、伝統的に滋養強壮、活力増強、栄養補給などの補助栄養剤として用いられてきた薬用植物です。さらに近年では、新たに不妊症、更年期障害の改善にも有効である可能性が示唆されています。

今回、本研究チームが示したマカの骨格筋生育・成長・肥大促進作用は、特に超高齢社会におけるアンチエイジングのための有効な機能性素材として期待できるものです。今後は、生体におけるマカ摂取の有効性を検証し、現代社会における諸疾患の予防・改善に資する栄養処方を開発することが重要であると考えられます。

論文情報

  • 論文名:Effects of Maca on Muscle Hypertrophy in C2C12 Skeletal Muscle Cells
  • 著 者:易東 1、吉川万紀 1、杉本岳史 1、友尾圭吾 2、岡田陽子 1、橋本健志 1
  • 所 属:立命館大学大学院スポーツ健康科学研究科 1、立命館大学スポーツ健康科学部 2
  • 発表雑誌:International Journal of Molecular Sciences (スイス)
  • 掲載日:2022 年 6 月 19 日(日)20:00 (日本時間)
  • D O I:https://doi.org/10.3390/ijms23126825
  • U R L:https://www.mdpi.com/1422-0067/23/12/6825/htm

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