2016.01.14 TOPICS

がん化学療法におけるDNA修飾の解析にも応用が可能に
DNAのメチル化の微量定量法~高感度LC/MS/MS法による直接定量法を開発~

 立命館大学 高田達之(薬学部・教授)、岡本誉士典(名城大学・助教)、吉田真子(関西医科大学・講師)らのグループは、DNAの塩基修飾の高感度LC/MS/MS法による直接定量法を開発し、従来困難であった微量の試料での異なる修飾体間の量的関係の解析を可能にしました。

 DNAのメチル化およびその制御は、遺伝子の発現調節に重要であることが分かっており、ヒストンのアセチル化とともにエピジェネティックな発現調節として、正常な胚発生はもとより、がんを始めとする疾患の発症機序研究、また抗がん剤の標的としても注目されています。

 哺乳動物の受精直後の胚発生において、DNA脱メチル化によるメチルシトシンとヒドロキシメチルシトシン量の変化が知られていましたが、従来の検出方法である蛍光抗体法等では、両者の化学量論的な考察ができませんでした。
 異なる修飾体の絶対量を求めるためには、機器分析の方法が適しており、胚発生過程を解析するには、10~100細胞程度、アットモル(10の18乗分の1モル)レベルの分析感度が必要でした。

 本研究成果により、高感度の分析が可能になったため、受精後の胚発生だけでなく、試料規模が限られた他の生体試料、例えばがん化学療法におけるDNA修飾の解析にも応用が可能です。また、クロマチン免疫沈降法を用いることで、特定のDNA部位の化学修飾を定量することが可能となり、組織特異的な分化過程におけるエピジェネティックな遺伝子発現調節機序研究が加速されます。

 この成果は、2016年1月11日(月)日本時間19時にScientific Reports(オンライン版)で発表されました。

高田教授のコメント

 受精後、卵子、精子由来ゲノムのリプログラミング過程におけるDNAメチル化動態が化学量論的に議論されていないことがずっと気になっていました。単純にその興味を追求しました。
 本研究は、既成概念に捕われない立命館の研究環境が契機となり、また大学からこのような特異なテーマを支援していただきました。立命館だからできたと思っています。
 細胞が50個あれば測定できるので、胚発生、細胞分化などのエピジェネティクス研究だけでなく、試料規模が限られた他の生体試料、例えばがん組織における進行度の評価、がん化学療法におけるDNA修飾のモニタリング等にも応用できないかと考えています。

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