教員紹介
国際文化学域
わたくしはビザンツ帝国について研究しています。地中海沿岸を支配していたビザンツ帝国は7世紀、イスラームの拡大によって急激に領域を縮小させていきました。イスラームはビザンツ帝国の人々にとって、最初はまったく未知の存在で、「彼らは何者なのか」もわかっていませんでした。しかしそのような状況から長い期間をかけて、徐々に彼らへの認識を深めていったのです。その間、幾度もの戦争や対立がある一方で、交易などで徐々につながりが生まれ、互いにさまざまな影響を与えあいました。激変する状況の中で、ビザンツ帝国やイスラームの人々がどのように生き、つながっていったのか研究することが、わたくしの現在の課題です。
COLUMN
世界の今後を理解する上で不可欠の
「イスラーム」を深く学ぶ
ヨーロッパ・イスラーム史専攻
小林 功
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戦後のドイツ人がナチズムの時代や第二次世界大戦、ホロコーストをいかに記憶して行ったのかを分析することが私の研究テーマですが、この問題はこれまで政治家や思想家の発言、ジャーナリズムや学問での論争などによってアプローチされてきました。私は流行歌や映画、テレビ・ドラマ、記念碑などにも注目することによって、記憶の形成・変化と国民そのものの変化を関連づけて論じることで、その構造を明らかにして、現在起こっているさまざまな記憶の現象(日本では従軍慰安婦の問題や小林よしのりの戦争論など)も、社会構造、すなわち時間と空間、そして国民の構造的な変化とかかわっていることを明らかにしようとしています。
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中世イスラーム世界は、今日のように国境に区切られていない陸と海を様々な人々や物が移動することで、幾度もの変容を経験しました。そうしたなかでもアラビア半島南西部に興ったラスール朝では、インド洋周縁部で生産される種々の産物が行き交うとともに、北方や東アフリカ出身の人々やイエメン出身の人々が社会を構成していたことが知られています。さらにはイエメンを出奔して、インド洋をわたる人々も見られました。こうした人々や物の移動が往時の世界に与えた影響を探り、現代の世界を考え直すことを意図して、研究を進めています。
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森永 貴子教授
- 所属専攻:
- ヨーロッパ・イスラーム史専攻
- 専門分野:
- 近代ロシア社会経済史
近代ロシア商人史が専門ですが、これを出発点にユーラシア大陸の商業ネットワークや民族などを研究しています。ユーラシアではロシア人の他にユダヤ人、ギリシア人、タタール人、アルメニア人、モンゴル人などの多様な民族が独自のネットワークを形成しました。彼らは中世に北方の毛皮を、近代に中国の茶を求めて国境を越えていきました。その活動は探検も含めて太平洋、地中海にも広がっています。研究の中で面白いのは、彼らのローカルな文化や慣習の違いがあるのに、「モノ」への欲望は共通している点です。現代のグローバル社会を生きる私たちにとって、「ヒト」の交流・混淆がもたらすものを考えるのは大きな意味があると思います。
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上田 高弘教授
- 所属専攻:
- 文化芸術専攻
- 専門分野:
- 西洋美術史、比較芸術学
モダン・アートというと、何が描いているか分からない抽象画や、既製品をただ置いただけのオブジェなど、「美術」の定義を混乱させる作品が思い浮かぶかもしれません。言い換えると、かつては美術と認められなかった事物や行為を作品と映じさせる「批評」の文脈があるわけで、その解明が本来の研究関心なのですが、美術にかぎれば正直、お腹いっぱいという感じで、それもあって近年は音楽(オペラ)や文学に関する論文を公表するなど、レパートリーを拡げています。そうしてさらに一歩、踏み込もうと構想を温めているのが、若いころから関心を抱いてきた新約聖書学の分野でのささやかな試論。研究生活も終盤に入って、残り時間との競争です。
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唐澤 靖彦教授
- 所属専攻:
- 文化芸術専攻
- 専門分野:
- 軍事史
軍事史のなかでも、要塞築城が専門。特に、明治期に築造された、国土防禦のための洋式砲台・堡塁と附属建設物の研究です。様式美と機能美が一致したこの軍事建築群は、赤レンガや石等を主材料として不思議な美に溢れています。同じ時代、要塞は世界中で造られていました。アメリカ、台湾、ヨーロッパ、オーストラリア等での現地調査による比較を通じて、グローバルに存在する要塞築城がどのようなローカル性を発揮したのか、そしてローカルな要塞築城技術を生んだグローバル的動態は何かを考えながら、紀淡海峡の島々、舞鶴、広島湾の島々、佐世保、台湾の基隆と澎湖諸島、三浦半島、下関と北九州、そして対馬の山の中で泥だらけになってます。
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国際文化学域
ラテンアメリカの近現代の思想形成と文化変容
- キーワード :
- ラテンアメリカ、ポスト植民地主義、先住民族、社会思想
崎山 政毅教授
- 所属専攻:
- 文化芸術専攻
- 専門分野:
- ラテンアメリカ思想史、地域研究
僕の研究は「ラテンアメリカ思想史」を取り扱っています。ときにはチェ・ゲバラのような革命家、ときにはカルロス・フエンテス(メキシコ)やホルヘ・ルイス・ボルヘス(アルゼンチン)のような詩人・作家、ときにはふつうの人びとが生活のなかで感じ取る自由や平等、公正・不公正の感覚、そしてときには先住民族の宇宙観までの広い領域が研究対象です。ですから、理論や本から得られるものに研究は限定されません。人類学や農村社会学のフィールドワークのような調査からわかるものごとを、理論や歴史資料の分析と繋ぎ合わせて受け止め、考察し、できるならば現地に投げ返す。これが僕の研究のもっとも大切な、そしてもっとも面白いところです。
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南太平洋の島々と海の世界を、日本とつなげて考察する比較文学・比較文化研究をしています。比較文学者イ・オリョンの著書『縮み志向の日本人』によると、多くの日本論が「日本にあって西洋世界にないもの=日本独特のもの」と考えています。同じく比較文学者のエドワード・サイードは『オリエンタリズム』で、西洋世界は東洋を「自分で自分を語ることができないよそ者」とみて代弁してきたと述べています。「私たち」「よそ者」のイメージを作る競合は、西洋諸国が世界中を植民地化したことで世界共通のものになり、意外なところでつながっています。その見えない「つながり」を見つけ、意味を考えるのが面白いところです。
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社会問題