教員紹介
中川 優子教授
- 所属専攻:
- 英米文学専攻
- 専門分野:
- 英米文学、ジェンダー
南北戦争後のアメリカは大きな転換期をむかえ、健康で裕福で活発なアメリカ女性が、新しい国アメリカを象徴するものとして雑誌や広告、文学に描かれるようになりました。一見明るい未来を象徴しているようにみえますが、実際そう単純ではありません。またこの頃社会進出を試みる「新しい女性」がイギリス小説にも登場しました。私はこのような女性の表象を英米小説、とくにこの女性たちに共感しながらも、複雑な思いをもって描いたヘンリー・ジェイムズやその周辺の作品にみいだし、研究しています。作品を精読する以外にたくさんの資料も読まないといけませんが、意外な作品間のつながりがみえたりするのが面白いです。
COLUMN
小説を深く読み込むことで得られる「文学の力」
英米文学専攻
中川 優子
もっと見る閉じる
わたしはいま、20世紀以降のアイルランドの英語文学を中心に研究しています。アイルランドは神話、民話、伝統音楽、名だたる文士たちによる文化的貢献も広く知られる、緑豊かな西の国です。一方、言語接触(アイルランド語と英語)、歴史上の移民の多さ、北アイルランド問題、欧州連合(EU)内での立ち位置など、文明間の境界や文化の越境性について多くの視座を提示する国でもあるように思います。ユネスコ文学都市にも選ばれた首都ダブリンを有する、この国の文学の息吹に耳を澄ませながら、詩や小説を丁寧に読み、その躍動を伝えていけたらと思っています。
もっと見る閉じる
By exploring how the experience of immigration has influenced American writers with roots in South Asia and how non-Asian writers express interest in South Asian traditions, I seek to understand how literature can both illuminate conflicts and foster constructive dialogue between cultures.
もっと見る閉じる
一般に「近代」と呼ばれる19世紀から20世紀初頭までの時期に、アジア・アフリカ諸地域で試みられた国家や社会を作り替えるための改革は、往々にして欧米諸国をモデルとする「西洋化」といったような言葉で言い表されます。私の専攻しているイランでもこの時期に軍事面での改革が行われましたが、それは「西洋化」の尺度で見ると「失敗」と評価されかねないようなものでした。ただ、改革の内実を現地の国家や社会のありようと絡めて検討すると、一概にそうとも言い切れない固有の歴史的意味を持っていたことがわかります。このように、単一の尺度では捉えきれない各地域の固有な近代のあり方を想定することで、その延長線上にある現代世界の理解をも刷新することを目指しています。
もっと見る閉じる
わたくしはビザンツ帝国について研究しています。地中海沿岸を支配していたビザンツ帝国は7世紀、イスラームの拡大によって急激に領域を縮小させていきました。イスラームはビザンツ帝国の人々にとって、最初はまったく未知の存在で、「彼らは何者なのか」もわかっていませんでした。しかしそのような状況から長い期間をかけて、徐々に彼らへの認識を深めていったのです。その間、幾度もの戦争や対立がある一方で、交易などで徐々につながりが生まれ、互いにさまざまな影響を与えあいました。激変する状況の中で、ビザンツ帝国やイスラームの人々がどのように生き、つながっていったのか研究することが、わたくしの現在の課題です。
COLUMN
世界の今後を理解する上で不可欠の
「イスラーム」を深く学ぶ
ヨーロッパ・イスラーム史専攻
小林 功
もっと見る閉じる
戦後のドイツ人がナチズムの時代や第二次世界大戦、ホロコーストをいかに記憶して行ったのかを分析することが私の研究テーマですが、この問題はこれまで政治家や思想家の発言、ジャーナリズムや学問での論争などによってアプローチされてきました。私は流行歌や映画、テレビ・ドラマ、記念碑などにも注目することによって、記憶の形成・変化と国民そのものの変化を関連づけて論じることで、その構造を明らかにして、現在起こっているさまざまな記憶の現象(日本では従軍慰安婦の問題や小林よしのりの戦争論など)も、社会構造、すなわち時間と空間、そして国民の構造的な変化とかかわっていることを明らかにしようとしています。
もっと見る閉じる
ヨーロッパは現在EU(欧州連合)のもとで、わたしたちの常識とは異なる世界を構築しているように見えます。通貨は統一され、国境は存在意義を大きく失い、また近年はカーボンニュートラルの実現に向けた野心的なプロジェクトをスタートさせました。なぜヨーロッパはこうした欧州統合と呼ばれる企てを成功させたのでしょうか。また欧州統合は本当に世界を変えたのでしょうか。歴史学という学問を用いて、一歩下がった視点から欧州統合を眺めることで、この壮大な「実験」の行く末について考察しています。
もっと見る閉じる
中世イスラーム世界は、今日のように国境に区切られていない陸と海を様々な人々や物が移動することで、幾度もの変容を経験しました。そうしたなかでもアラビア半島南西部に興ったラスール朝では、インド洋周縁部で生産される種々の産物が行き交うとともに、北方や東アフリカ出身の人々やイエメン出身の人々が社会を構成していたことが知られています。さらにはイエメンを出奔して、インド洋をわたる人々も見られました。こうした人々や物の移動が往時の世界に与えた影響を探り、現代の世界を考え直すことを意図して、研究を進めています。
もっと見る閉じる
社会問題