薬学部・中山勝文教授の共同研究グループがカーボンナノチューブの毒性発現機構の一端を解明

 立命館大学薬学部の中山勝文教授、東北大学大学院情報科学研究科の木下賢吾教授、大森聡博士研究員らの共同研究グループは、カーボンナノチューブ(CNTs)を認識する免疫受容体を発見しました。
 CNTsはエレクトロニクス、エネルギー、バイオなど多岐にわたる分野での用途が期待されている次世代ナノ材料(※1)ですが、アスベストと同様に生体内に入るとマクロファージ(※2)に効率良く取り込まれ、そのマクロファージ炎症応答により毒性を示すことが動物実験で報告されています。しかし、炭素のみで構成されるCNTsがなぜマクロファージに取り込まれるのか、その毒性発現機構は長い間不明でした。
 本研究グループは、マクロファージがTim4という免疫受容体を介してCNTsを捕獲して細胞内に取り込み、このマクロファージ炎症応答が引き金となって中皮腫様の病態が起きることをマウス実験から明らかにしました。
 今後、CNTsにより引き起こされうる肺疾患においてTim4経路を阻害する治療法の開発や、Tim4に結合しない毒性の低いCNTsの開発につながることが期待されます。

 本研究成果は、JST戦略的創造研究推進事業さきがけ「マクロファージによる粒子状物質パターン認識機構の解明」(研究者:中山 勝文)の一環で得られたものであり、2021年2月9日(米国東部時間)発行の米国科学誌「Cell Reports」のオンライン版で公開されました。

 

※1:ナノ材料
粒径が100 nm以下の材料を示し、次世代の産業基盤技術として、幅広い分野での活用が期待されている。

※2:マクロファージ
免疫細胞の一つで、体内に侵入した微生物や体内で発生したアポトーシス細胞などの病原体を捕食するなどして生体防御に重要な役割を担う。その一方で、過剰な炎症を引き起こし、病気の発症に関わることもある。

 

論文情報
  • 発表雑誌:Cell Reports
  • 論文名:Tim4 Recognizes Carbon Nanotubes and Mediates Phagocytosis Leading to Granuloma Formation
    (Tim4はカーボンナノチューブを認識して細胞内に取り込み、肉芽腫形成に関与する)
  • 著者:Satoshi Omori, Misato Tsugita, Yasuto Hoshikawa, Masanobu Morita, Fumiya Ito, Shin-Ichiro Yamaguchi, Qilin Xie, OsamuNoyori, Tomoya Yamaguchi, Ayato Takada, Tatsuya Saitoh, Shinya Toyokuni, Hisaya Akiba, Shigekazu Nagata, Kengo Kinoshita, Masafumi Nakayama
  • 掲載URL:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2211124721000474?via%3Dihub
  • DOI:doi.org/10.1016/j.celrep.2021.108734

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