「読む、書く、生きる」をテーマに浅田次郎氏による講義を実施
7月7日(金)、文学部において、作家の浅田次郎氏(日本ペンクラブ前会長)により「読む、書く、生きる」をテーマに講義が行われました。
この講義は、文学部創設90周年記念事業として日本ペンクラブと提携して開設した「人文学特殊講義『作家・制作者と語る現代表現論』(全15回、授業担当者:湯浅俊彦教授)」の第14回目にあたるもので、これまで作家の森絵都氏や映画監督の山本晋也氏らを講師に迎えています。小説、ノンフィクション、評論、漫画などの出版分野はもとより、放送・映画・ウェブを含め、多様で重層的な現代の表現を再構築することを目的とし、学生たちは作家・制作者とのディスカッションを中心とした能動的な学びを通して、今日の情報ネットワーク社会における表現の成り立ちと将来像について考えるスキルを養う授業となっています。毎回、授業時間内に10分間で受講生が書くレポートはゲスト講師とも共有しますが、その理解力とオリジナリティのある表現力に作家・制作者の側から学生から逆に学ぶことがあったという声が寄せられています。
今回は、「読むこと」、「書くこと」の意味や役割が変貌しつつある現在、「生きること」の本質とどうかかわっているのか、また歴史的にどう捉えられてきたのかについて、浅田氏からレクチャーが行われました。「書くこと」がパソコンで行われるようになってからは小説の文章が長くなっている傾向があることに触れ、「積みあげて冗長に書いても、伝わりにくく現実には及ばない。手で書くことを忘れず、コンパクトに書いていくことが非常に大切」と述べられました。
質疑応答の際には、講義中に述べられた映像表現と小説表現の違いに関する学生からの質問に対し「映像は俳優の顔など、具体が見えている。小説はそれがないので想像の中で動くことが大きな違い」と述べられるなど、受講生にとって浅田氏のものの見方、考え方に触れる貴重な機会となりました。また、自身の作品の映像化の裏話では受講生から笑いが起きるなど、教室はアットホームな雰囲気に包まれました。
最後に、浅田氏から「社会に出たとき、学生時代の知の蓄積が非常に重要になる。『今』を大事に、本をたくさん読んでほしい」と受講生に熱いメッセージが送られました。