ノーベル平和賞受賞団体「ICAN」国際運営委員の川﨑哲氏が特別講義

特別講義「核兵器禁止条約と日本:NGOの視点から」を開催

平和、安全保障、社会の在り方について考える
「現代の国際関係と日本」での講義の様子
「現代の国際関係と日本」での講義の様子
「プロジェクトスタディⅡA」ゼミの様子
「プロジェクトスタディⅡA」でのゼミの様子
川崎氏と学生との質疑応答
川崎氏と学生との質疑応答

 11月7日、びわこ・くさつキャンパス(BKC)および衣笠キャンパスで、ピースボート※共同代表で、2017年ノーベル平和賞を受賞したNGOネットワーク「核兵器廃絶国際キャンペーン」(以下、ICAN)*の国際運営委員に名を連ねる川﨑哲氏をゲストスピーカーに招き、特別講義「核兵器禁止条約と日本:NGOの視点から」を開催しました。
 本講義は、北朝鮮問題をはじめとし、核兵器の脅威が高まりを見せるなか、大学で開講する教養科目「平和学入門」、「現代の国際関係と日本」および産業社会学部の2回生を対象とした「プロジェクトスタディⅡA」の一環として行われ、合計500人以上が受講。今日の国際社会と日本との関係性や将来像について学びを深めました。
 講義では、ピースボートやICANの取り組み・活動、2017年7月7日に国連で122カ国・地域の賛成多数により採択された「核兵器禁止条約」の経緯、今後の課題および展開などについて川﨑氏からレクチャーがあり、普段、ニュースなどで目にする機会はあるものの、詳細に知ることのないNGOの活動、条約採択に向け、どのような思いで活動されてきたのか、第一線の声に耳を傾けました。
 国連で条約が採択され核兵器に対する批判は強まってはいるものの、学生から「世論として主流になっても簡単に作れる核兵器を作りたいと思う国が出てきたらどうするのか」「監視網、チェック機能は働くのか」「本当に核兵器禁止条約が有効なのか」などの質問があり、川﨑氏は「条約反対派の意見の主流が、まさにその点(チェック機能、罰則などの問題)にあります。しかし、いけないものと誰もが認識しているものに対し、何の行動も起こさない、現状維持ほど怖いものはありあせん。市民運動をやれば世の中が変わるとは思っていませんが、運動と様々な動き、世論などとがうまく共鳴し合うことができれば、問題に対し半歩ないし一歩前進させることができると考えています。その積み重ねが今回の条約採択にもつながったと思います」と訴えました。
 講義を終え、「素直に疑問を出してくれましたし、これまで必ずしも核問題に対し専門的に学んできたわけではないにも関わらず、質問もどれも的を得ていました。重要なポイントを素朴な形、意見としてぶつけてくれ、私自身としても、ともて勉強になりました。平和、核問題に対して人々に考えてもらうのが私たちNGOの立場でもあるので、とても有意義な時間を過ごすことができました」と川﨑氏。今後、学生に期待することとし、「現状がいつまでも続くことはありません。若者ならではの柔軟な思考・発想を生かし、現状を打破し、世界を変える原動力になってほしい」と強く呼びかけました。
 今回の3つの授業担当教員である池尾靖志先生は、「お互いに(安全保障、核の問題に対し)こんなことを考えていたのか、あまり考えていなかったなど、人によって今回の話の受け止め方は様々だと思います。日ごろから、こうしたナイーブな問題に対し、学生間で議論し合える場、雰囲気が広まっていけば」と話しました。

【川﨑哲(かわさき・あきら)氏プロフィール】
1968年東京都生まれ。ピースボート共同代表。ICAN国際運営委員10人のひとり。核兵器廃絶のためのNGOネットワーク「アボリション2000」の活動に1998年から参加し、2016年まで調整委員を務めた。著書に『核拡散~軍縮の風は起こせるか~』(岩波新書)などがある。

*世界を周って多くの人と人とがつながり平和の土台を築くことをコンセプトに世界各地を訪れ、様々な国や地域に暮らす人々と直接顔の見える交流を主催する団体。1983年の最初の船出から現在は95回目の航海に出航中。これまで述べ5万人以上が参加。10年前からヒバクシャが乗り込み各地で原爆被害の証言などを行っている。2010年からICANのメンバーとなる。 *世界各国のNGOの連合体。核兵器禁止条約成立を目指し、オーストラリアの医師を中心に発足。現在は、世界101カ国・地域に468のパートナー団体を持つ。スイスのジュネーブに事務局を置き、活動を展開。執行部は日本のピースボートなど10団体の代表からなる。2017年ノーベル平和賞を受賞。

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