未来に働きかける力を -フロンティアメイカー育成講座<第2期>キックオフ
「既存の概念を超えて、これまでにない価値を見出し、新たなビジネス、産業を創造する」。そんなフロンティアメイカーの育成を目指し、2018年に開講したフロンティアメイカー育成講座(以下、本講座)。今や100兆円を越えるともいわれる世界のスポーツ産業・ビジネスをケースに、革新性と創造性、さらなる能動性を身につけ、社会と産業のバージョンアップを目指す人材の育成をミッションとしてきました。社会全体の閉塞感の打破を目指す人材を育成する意図とは。プログラムリーダーの善本哲夫・経営学部教授に、プログラムの特徴と今後の展開などについてお話を伺いました。
“遊び”と“大人の童心”
“大人の童心を引き出したい”と本講座に期待する善本教授。「閃いたアイデアを組織の中で形にできない,表出できないでいるもどかしさをここに来て発散してほしいし、その意図を故・白川静立命館大学名誉教授の言葉『遊』で表現しました」と講座への想いを語ります。
「遊びというのは自由で豊かな想像が導く、現実への働きかけです。多様な経験、知識を持つ大人が真剣に遊ぶ能動的姿勢でもって、現実・事実と自らの想像との間に広がる思考空間の隔たりを埋めていき、豊かな『未来創造』のアイデア可視化に挑む。想像を創造に結びつけていくプロセスをプログラムで感じ取ってもらいたい。その思いからテーマを『future play』としました」。
昨今の日本は産業界のみならず、社会全体が長い停滞から抜け出せずにいます。閉塞感の打破にチャレンジする人材への期待と、新たなフレームで躍動する社会構築を求める声も大きくなっている中で、必要とされるのが社会と産業をともにバージョンアップさせる意識を持った人材です。健康寿命に対する意識向上やビジネス化への取り組みが活性化しているスポーツ産業は、社会変革と産業革新を両睨みする格好の素材となります。
「今年は洞察力を鍛えるケーススタディとして、スポーツのプロリーグ最後発である卓球プロリーグ“Tリーグ”を取り上げます。プロ野球があって、Vリーグ(バレーボール)、Bリーグ(バスケットボール)もあり、プロリーグは観客動員のみならず、少子高齢・人口減の現実の中でアマチュア競技人口獲得でも競争する様相を見せています。最後発のTリーグのチャレンジと現状の多軸的理解から、課題や論点を見いだしていくことに主眼をおいています」(善本教授)。
日本国内で開催されるラグビーワールドカップ2019、オリンピック・パラリンピック2020東京大会、ワールドマスターズゲームズ2021関西を控え、産業界はスポーツに多彩な魅力を感じながらも、事業・ビジネスとしての可能性を引き出せないでいます。この現実を素材にしながら、eスポーツや仮想現実・拡張現実、音響工学、ウェアラブル事業などをテーマとするレクチャーと合わせ、スポーツを従来の概念から解放し、新たな意味や可能性を創出していくプロセスから俯瞰力、感性、洞察眼を磨いていくプログラム編成となっています。
オープンイノベーションを擬似的に創り出す
「本講座は、立命館アジア太平洋大学(APU)合宿をもって完結します。APU合宿では、APUの国際学生と立命館大学生、異業種・異分野の社会人(受講生)とが混ざり合い、オープンイノベーションを擬似的に体感する環境を創出します。APU合宿で最終的な成果が花開くよう、座学、Tリーグ見学、ワークショップを段階的に進め、各自で多様な未来を想像してもらう。合宿では、それら多様性を学生を交えながらさらに多方向へ拡散させつつ、最後は意味的つながりに結実させていくイメージです」(善本教授)。
本講座を支える講師陣も多様で、鋭い感性と行動力でビジネスを創造する経営者・リーダー、各分野で先駆的な取り組みにチャレンジする実務家による講義が展開され、今までのスポーツに関連する講座とは違う角度から「スポーツの可能性」に目を向けていきます。
今までの自分と変わる“変態人材”のススメ
本講座を受講してもらいたい層について善本教授は「スポーツそのものを変革していきたいスポーツ関係者、スポーツの可能性に見出して、スポーツ産業に進出しようとしている方、スポーツは思考訓練の素材と考え、そこで得られた思考法、発想法を自らの産業に持ちこんで変革したい方に是非受講してもらいたい」と話します。
「本講座を通して今までの自分とは変わっていく変態(メタモルフォーゼ)過程を楽しんでもらいたい。受講生には、先駆的、前衛的なことに高い能動性をもって取り組む変態人材(アヴァンギャルド)になってもらいたいですし、その手段として本講座を利用してもらいたい」と述べるとともに、「背中を押してもらいたい人は必ずいるはずなので、本講座が必ず背中を押す存在になります」と力を込めます。
とはいえ、社会を変革させる変態人材の育成には、社会も少なからず影響しています。
「現代社会は、のりしろや伸びしろに目を向ける余裕がなくなっている気がします。企業も同様に、“着実に利益がでる”“成功が約束されている”ところにお金も人も集まる構造であり、革新への旗は振るけど,実際は社内でチャレンジする人材を支援する空気を醸せないでいるケースも多い。のりしろ・伸びしろはそのままではコストであるとの見方が多勢を占めるようになる。のりしろ・伸びしろの許容と、それらをうまく活用する度量をもった姿勢が、組織内の社会変革と産業革新に向けた「新たなフロンティア創出」の意識濃度を高めていくと思います。「遊」にフォーカスし、コンセプトを「Future Play」とする意図はここにあります」(善本教授)。
政府は、「Society 5.0」を強力に推進(平成28年第5期科学技術基本計画)し、IoT(Internet of Things)、AI(人工知能)の進化により、DX(デジタルトランスフォーメーション)が強く意識される昨今、今までにない新たな価値を生み出す社会を目指しています。新たなビジネス機会を前に、本講座を通して社会と産業をバージョンアップさせるフロンティアメイカーを目指してみてはいかがでしょうか。