会場からの質問票に答える登壇者たち

 立命館大学中東・イスラーム研究センター(以下、CMEIS)は、2020年1月25日(土)、京都経済センターにおいて、「紛争を生きる ジャーナリストが見た戦時下の中東」を開催しました。

 この講演会は2019年10月に開設したCMEISが中心となり企画されました。会場にはのべ82名の研究者、ジャーナリスト、学生、そして多くの一般の方々が学内外から参加し、長年現地を取材してきた、日伊ジャーナリストが語る中東の現状に耳を傾けました。

玉本氏の講演を聴く参加者
玉本氏の講演を聴く参加者
開会挨拶をする嶋田教授
開会挨拶をする嶋田教授
映像を見せながら講演をする玉本氏
映像を見せながら講演をする玉本氏

 嶋田晴行・立命館大学国際関係学部教授による開会挨拶のあと、まず、アジアプレス・玉本英子氏が登壇しました。ヤズディ教徒や一般の人々、女性や子供、男性がどのような戦争被害を受け、また現在の様子なども豊富なスライドや映像とともに紹介されました。中には性被害にあった女性へのインタビューや、ISに洗脳され前線での戦闘を何度も経験した少年の話もあり、生々しい声に参加者は被害の多様さと深刻さを実感しました。また氏の講演の最後には、太平洋戦争中の日本軍による戦争犯罪も紹介され、「宗教だけが原因ではなく、どこでも起こりうる事だ」と締めくくりました。

講演をするボッリ氏
講演をするボッリ氏
両氏の講演後コメントする鳥山准教授
両氏の講演後コメントする鳥山准教授

 次に、フランチェスカ・ボッリ氏が登壇し、どのようにジャーナリストになったのかという大学卒業直後から現在までの自身の経歴や、紛争が激化する中、最後までシリアに残った欧州ジャーナリストとしての実体験を、外国の報道と現地の実情との差異も含めて語りました。同席した鳥山純子・立命館大学国際関係学部准教授からの質問に対し、ジャーナリストという職業の難しさについてユーモアを交えて話し、会場の笑いを誘いました。

 二人の講演に対して鳥山准教授がコメントし、「中東でなく日本に生まれてよかったではなく、問題なのは紛争の芽としての将来への閉塞感であり、それは日本でも同じ。このような世の中を作っている社会システムに疑問を投げかけるべきではないか。」と会場に問いかけました。

 休憩をはさんで、玉本、ボッリ両氏が会場からの質問に答えました。質問の内容は、ジャーナリズム、中東の生活、紛争、国際政治と多岐にわたり、中でも「子供たちに将来の夢について訊いたことがあるか」という質問に対し、玉本氏は「将来の夢を言ったとしても、本心はどうか。子供の心は掴みきれない。」一方ボッリ氏は「紛争地の子供に将来の事は聞かない。彼らはその質問の意味を理解していない。」との両氏の回答は会場に静かな衝撃を与えました。

 最後に、鳥山准教授より「学内だけでなく、一般の方へもCMEISの研究を共有できた機会となった。」と参加者への感謝の言葉があり、盛況の内に閉会しました。


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