2022.10.07 TOPICS

「大学院で学びたいけれど、現場を離れることができない」現職教員の学びの一助へ 立命館大学大学院教職研究科(教職大学院)がオンライン受講制度を2023年度よりスタート

 児童・生徒を取り巻く社会が複雑になり、教育そのものの課題がさまざまな形で複雑になる中、教育現場の第一線で奮闘する教員が、社会の変化に対応しながら新しい知識・技能を学び続けることが大きく期待されています。

 立命館大学大学院教職研究科(以下、教職大学院)では、2023年度より、現職教員が勤務しながら大学院に進学することができるよう、長期履修制度*1を活用したオンライン受講による修了*2が可能となるカリキュラムをスタートします。現職教員が学びやすい環境を整える取り組みを中心的に担ってきた田中博准教授に、本取り組みの狙いを伺いました。

*1 長期履修制度とは、標準修業年限(2年)を超え、在学年限(4年)の範囲内の期間において修了することができる制度です。入学前の事前申請によって2年間の学費で、3年または4年間学ぶことができます。
*2 春学期、秋学期の土日に1~2回のスクーリングを設定。

私立総合学園の教職大学院としての強み

 日本全国にある教職大学院は、国立大学が47大学、私立大学が7大学です。ほとんどが国立大学で、各都道府県の教育委員会と連携して院生を育成しています。そのような環境下で、私学の教職大学院の面白さについて田中准教授は次のように話します。

「例えば教育学部と接続する教職大学院だと、教職のことを中心に学んできた学生が大半ですが、総合大学である立命館では理工系の学生やスポーツ・健康系の学生、社会学を学んだ学生など、さまざまな背景をもった学生が集まっています。この多様性が凄く面白い」(田中准教授、以下同じ)

 教育の中で多様性が大事なのは言うまでもなく、私立総合学園の中の教職大学院という位置づけは、それだけで他大学にはない魅力なのかもしれません。さらに、立命館は3府県にまたがる5つの教育委員会(京都府、京都市、滋賀県、大阪府、大阪市)と連携しているほか、5つの附属校も有しており、多様な経歴をもった13名の研究者教員、実務家教員が専任教員として指導しています。そうした環境下で、多様な学校に勤務している現職教員院生や学部新卒院生(ストレートマスター)が学んでいます。

田中博准教授
田中博准教授

2023年度から新カリキュラムをスタート

 多様性を重視する立命館の教職大学院が2023年度からスタートする新カリキュラムの特徴の一つが、長期履修制度を活用したオンライン受講制度です。

「長期履修制度を活用する現職教員は、夜間時間帯(18時30分~20時)に開講される科目のライブ配信をオンラインで受講することが可能となります。3年間で大学院を修了することができます。休職することが難しい、学びの環境が整っていない地域の方でも安心して学べることができればと考えています」

 オンライン受講にあたっては、時間割にも一工夫がされています。オンライン受講科目は夜間時間帯に開講します。4~6限の科目がローテーションする時間割を編成しており、3年に一度は、必ず夜間時間帯に必修科目・選択科目が開講されるよう設計されています。

「これまでも休職して進学された方もおられますが、現場で担任を持ちながらということで、急遽授業を欠席されるケースも多く見受けました。そういう中で、オンライン受講の導入により解決できることもあると感じています」

 オンラインでの学びが中心ですが、受講生はセメスターの早い時期に土日に設定されたスクーリングの授業で顔を合わせて、人間関係を築く機会を設けています。

すでにパイロットケースも開始

 教職研究科では、オンライン受講の実現に向けて、すでにパイロットケースをスタートさせています。昨年度秋セメスターに、立命館附属校の先生方に協力してもらってテストし、今年度はすでに長期履修制度を活用して入学している現職教員院生から希望者を募って遠隔受講してもらっています

「2021年度秋セメスターから、附属校の先生にボランティアで受講をお願いし、2つの授業に2人ずつ入ってもらっていろいろとフィードバックいただきました。また、2022年度は実際に授業を受けている現職教員院生の方に協力をいただきました。本格的にスタートする前にさまざまなケースに対応できるノウハウを蓄積できたことは授業環境の向上にとって意味のある取り組みでした」

 パイロットケースで参加いただいた先生方から出された意見で多かったのは「音」の問題。声が聞き取りにくいのが1番ストレスだという感想を受け、「いかにいい音で伝えるか」という課題に対して試行錯誤を繰り返しました。

「授業中の教室内の声をしっかり伝えるため、専用の教室には2つの高性能会議用マイクを準備しました。グループワークの際も教室内に各グループに専用ディスプレイを設置して臨場感を出すとともに、高性能なピンマイクやスピーカーを準備して、グループでの議論が自然に行えるようにしました。さらに、対面で受講している院生へもオンライン受講の院生へも資料の提示がスムーズに行えるよう、情報基盤課の協力のもとで、いずれのソースからであっても、スクリーンに映っている映像がそのままZoomで配信できるよう、教卓付近の配線を工夫いただくなど、オリジナルな教室環境を整えました」

オンライン受講に向けてさまざまな検討を重ねてきました
オンライン受講に向けてさまざまな検討を重ねてきました

現場の声を学びの場に

 オンライン受講の機会を提供することを機に、新しい学校づくりの中核を担うより多くのリーダーを輩出することを目指す立命館大学教職大学院。今後の取り組みについて田中准教授は次のように語られています。

「教職大学院の学びの環境で大切なことは、現職教員と学部新卒の院生が切磋琢磨しながらともに学ぶことだと思います。現場では『こんなことで困っています』という現職教員院生からの生の声をしっかりと受け止め、学部から進学してきた院生のフレッシュな視点も入れて議論し合える環境ですね。オンラインで受講できる環境を、現職教員の方には最大限活用していただき、日本の教育現場のアップデートを立命館が担えるとうれしいです」

田中博准教授

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