本学が事務局幹事校を務める「大学の国際化促進フォーラム」の幹事校企画を2月27日、立命館大学大阪いばらきキャンパスで開催いたしました。全ての幹事校から参加があり、参加者は76名(対面:53名、オンライン:23名)となりました。本フォーラムは、大学が連携して国際化を促進する主体的な活動の場です。今回の幹事校企画は、その主軸となるプロジェクトの一つである「Japan Virtual Campus(JV-Campus)」にフォーカスし、今後の可能性について展望しました。

多くの人で賑わった「大学の国際化促進フォーラム幹事校企画」の会場
多くの人で賑わった「大学の国際化促進フォーラム幹事校企画」の会場

フォーラム幹事校の連携をさらに強化するイベント

 グローバル化が進む現代、世界の最先端分野で活躍する人材や多様な価値観を持った人材を育成・確保することなしに国の成長は望めません。国境を越えた人材獲得競争が激化しております。日本の大学には国際競争力の強化や国際展開の推進、グローバル人材の育成が求められており、大学の国際化は喫緊の課題であると言えます。
 こうした背景のもとに2021年9月、大学同士の連携によって国際化を進める「大学の国際化促進フォーラム」が発足。文部科学省のスーパーグローバル大学創生支援事業(SGU)採択大学を中心に国際化や競争力強化をけん引する様々な事業を運営し、大学間の連携を強めて横展開を図ることによって全国大学へと国際化の輪を広げていこうという取り組みです。

 立命館大学を含む幹事校18大学による19のプロジェクトが運営され、2023年2月27日時点でのフォーラム会員校は、国公私立の大学を中心に短期大学、高等専門学校も含めた全国132校にまで拡大しています。会員校にとってはプロジェクトへの参画で全国の大学と連携することで1校ではできない取り組みができ、自校の個性や特色を活かした国際化の活動が可能になるなどのメリットがあります。

 今回の「幹事校企画」は、本フォーラムの幹事校が一堂に会して大学間の連携をさらに強化することを目的に開催されました。プログラムの前半は講演企画が対面とオンラインの併用で、後半にはポスターセッションが対面のみで行われました。コロナ禍で減っていた対面でのコミュニケーションが復活し、交流がさらに深まる機会となりました。

日本の大学は世界との協働・交流の拠点になれるか

 はじめに、本フォーラム代表幹事校の東北大学・山口昌弘副学長による開会あいさつに続き、司会を務める事務局幹事校の立命館大学・山下範久常務理事から趣旨説明とプログラム紹介が行われました。講演企画のトップは、文部科学省高等教育局・小林洋介参事官(国際担当)による基調講演です。高等教育のグローバル展開の必要性やその強化に向けた国の支援策の動向が俯瞰され、大学の国際化の意義を踏まえた施策の方向性などについて論点整理がなされました。

文部科学省高等教育局・小林洋介参事官(国際担当)
文部科学省高等教育局・小林洋介参事官(国際担当)

 優秀な外国人留学生の受け入れと日本人学生の海外への送り出しをうまく循環させることで、国内外の優れた人材が切磋琢磨し、世界中の大学と協働・交流できる環境を構築するという観点から、インバウンド、アウトバウンド、基盤構築の3つを柱として高等教育のグローバル化政策が進められていることに言及されました。また、日本にとって重要な国・地域の大学との連携・学生交流を進める大学の世界展開力強化事業についても取り上げ、EU、アフリカ、アジア諸国、インド太平洋、アメリカなど、幅広い地域と日本との大学間交流が進展していることが示されました。

オールジャパンでつくる「日本の高等教育の玄関口」

 次に、大学国際化の基盤整備の一つであり、大学の国際化促進フォーラムの基幹プロジェクトの一つである「Japan Virtual Campus(以下JV-Campusとする)」について、その可能性を展望する講演が行われました。

 JV-Campusは日本発のオンライン国際教育のプラットフォームで、世界や社会に通用する多様な知を提供する科目を集めて国内外に開放する仕組みです。海外に向けては日本の強みと魅力ある教育を提供することをめざしており、大学間で優れた教育リソースを共有できる点が特色です。JV-Campusプロジェクトリーダーである筑波大学・大庭良介先生の講演では、その概要が語られました。

JV-Campusプロジェクトリーダーを務める筑波大学・大庭良介先生
JV-Campusプロジェクトリーダーを務める筑波大学・大庭良介先生

 JV-Campusは、オールジャパンをキーワードに大学が共同して多彩で魅力ある戦略的科目群を構成して世界に発信するサービスで、各大学が自学の強みある教育コンテンツを世界に提供するのも特色です。バーチャルで完結するのではなく、ここをきっかけに留学生が日本に集まり、日本の学生が海外にはばたく契機となる「日本の高等教育の玄関口」を目標に掲げています。海外の学生に日本への興味を持ってもらうための科目や自大学へリクルートするためのコース、日本人学生に海外への関心を高めるために英語による一般教養や専門の科目、海外大学が提供する科目などのサービスを順次展開しています。

 すでにJV-Campusにて構築、または構築予定のコンテンツについての紹介も行われました。その一つ、日本語教育パッケージの作成を担う東京外国語大学からは学長特別補佐(男女共同参画、社会連携担当)の大津友美先生が登壇しました。日本語教育パッケージは、各大学・機関から日本語教材を収集し、レベル、技能、言語知識、学習目的などニーズに応じた多様な講座・教材を提供しています。2023年2月17日時点で、7機関25コンテンツが掲載されています。海外の学生の日本留学や就職につなげるという目的に合致するよう、海外の学習者が求めるコンテンツの調査などを行って、有用なコンテンツの開発を行っていきたいと抱負を語りました。

日本語教育パッケージの作成を担う東京外国語大学の大津友美先生
日本語教育パッケージの作成を担う東京外国語大学の大津友美先生

 また、千葉大学の理事(教育・国際)の渡邉誠先生、副学長・大学院国際学術研究院長の⼩澤弘明先生が登壇して、千葉大学がJV-Campusへ提供している個別機関ボックスと日本文化特設ボックスについて紹介しました。個別機関ボックスは、個別の大学が独自に提供する科目群です。千葉大学が提供するのは、他にない特色のある看護、園芸、デザインなどの専門領域プログラムです。日本文化特設ボックスは、JV-Campusオリジナルコンテンツとして構築するもので、千葉大学が国立歴史民俗博物館と共同して作成しています。千葉大学が取り組むクリティカル日本学という新しい日本文化の研究法、歴史民俗博物館が強みとするデータを中心に歴史・民俗・考古等を分析するデジタルヒューマニティーズといった、新たな動向を組み込んだコンテンツとなる予定です。また、全国の大学からコンテンツを公募し、多様なテーマのコンテンツを総合して体系化を図るとともに、海外から見た日本文化の特質を反映させた特色のある取り組みにしていくことが説明されました。

千葉大学の個別機関ボックスについて説明する渡邉誠先生
千葉大学の個別機関ボックスについて説明する渡邉誠先生
オンラインでの登壇となった千葉大学の⼩澤弘明先生
オンラインでの登壇となった千葉大学の⼩澤弘明先生

 講演後には会場、オンラインの双方から活発な質問が寄せられ、JV-Campusへの関心の高さがうかがわれました。

対面で活発な交流・情報交換が展開

 休憩をはさんだ後半は、各幹事校のプロジェクトを展示したポスターセッションが行われました。各ポスターの前では、担当者同士の対面による情報交換や交流が活発に繰り広げられました。

 JV-Campusの構想をリードする筑波大学のブースには、各大学の担当者が訪れて「バーチャル留学フェアを考えているが、JV-Campusとどう連携できるか」「今度新たに始める事業をJV-Campusを活用してもっとアピールしたい」「メタバースを導入してみるのはどうか」など、様々な相談・提案が持ち掛けられ盛り上がりを見せていました。担当者は、「学習者にとって有益なコンテンツが集まるサイトであることはもちろん、講座を提供する大学が応援し、共同で国際化を進める仕組みが背後に動いているところが最大の特徴。その強化を図りたい」と今後を展望しました。

 東北大学は国際共修プラットフォームを通じたネットワークの構築を進めています。国際共修とは、言語・文化的に背景が異なる学生が同じクラスに入って互いに学び合う仕組みです。東北大学では本取り組みを10年ほど続けており科目の実績もできたことから、同じような取り組みをする5大学と連携して各大学の科目を履修できる仕組みを整えました。研究総合大学、地方の基幹大学、ソーシャルスタディーズに強い大学などそれぞれの持ち味を活かした科目を提供し、正課外での国際的な学生交流活動やイベントも行っています。今回の企画は、JV-Campusとのジョイントをどう進めていくか、より具体的な検討を進める契機となりました。担当者は「多くの大学が興味を持ってくれたことで、今後はネットワークの拡大も進めていきたい」と抱負を語りました。

 立命館大学では、学士課程におけるジョイント・ディグリー・プログラム(JDP)など、国際連携による学位プログラムの質向上をテーマにしたプロジェクトを行っています。JDPは、異なる国の複数の大学が1つのカリキュラムを編成し、共同で学位を授与する国際連携プログラムです。本学では、国際関係学部がアメリカン大学と連携し、「学士(グローバル国際関係学)(BA in Global International Relations)」を授与します。こうしたプログラムの設置、運営上の課題を、各大学から集まった少人数のワーキンググループで検討し、グッドプラクティスを共有する取り組みを進めています。「かゆいところに手が届く実践的な課題解決案を共有し、大学間のネットワークを構築する場になれば」と、担当者は今後の取り組みへの意欲を口にしました。

活況を見せるポスターセッション会場
活況を見せるポスターセッション会場

 最後は、本フォーラム副代表幹事校の筑波大学・池田潤副学長による閉会挨拶で盛況のうちに幕を閉じました。今後も大学の国際化促進フォーラムでは、各幹事校が国際化に向けた挑戦を続け、オールジャパンで日本の大学の国際化を促進し、日本のさらなるグローバル化への貢献を果たしていきます。

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