カナダと閖上の架け橋に―永野聡准教授のゼミ生らがカナダで復興支援に関する取り組みを実施

 東日本大震災で壊滅的な被害を受けた宮城県名取市閖上地区。10年以上が経過した閖上地区では、被災当時、カナダからの多大なる支援を受け、早期復興を果たしました。しかし、産業社会学部の永野聡ゼミが行ったアンケート調査によると、カナダからの支援について「知らない」と回答する街の人々の声が聞こえてきたといいます。「カナダからの支援があった記憶を風化させてはいけない」。永野聡准教授と永野聡ゼミの学生4人は、2023年11月上旬にカナダを訪問し、講演会や防災ワークショップの実施、ブリテッシュコロンビア州政府ラルストン林業大臣およびカナダウッドグループ関係者へのインタビュー活動、在バンクーバー日本総領事館と意見交換を行いました。

 永野聡ゼミの震災復興エリアマネジメント研究班は、宮城県名取市閖上地区をフィールドに復興支援に関わりながら地域の新しい価値を生み出す試みを進めています。2023年度は名取市主催「カナダへの感謝の集い メイプル館10周年記念式典」へ参加・協力しています。今回のカナダ訪問は「閖上地区とカナダとの国際交流のきっかけを創る」「震災復興の記録を残す」という2つのミッションを設定し、現地での活動を行いました。

インタビューに答えてくれた永野聡准教授(写真左)と学生たち
インタビューに答えてくれた永野聡准教授(写真左)と学生たち

 まずは、バンクーバーのダウンタウンにあるSELC Collegeを会場として、日本カナダ商工会議所のサミー高橋会長とTaro Whitred副会長のご挨拶の後、講演会と防災ワークショップを20人の参加者を対象に開催。ゆりあげ港朝市協同組合理事長の櫻井広行氏による講演会では、「カナダからの復興支援から考える新たな国際交流の未来」と題し、閖上地区の震災当時の出来事から、どのように復興できたのかを紹介しました。

 次に、「防災に触れるワークショップ」と題した災害用避難地図の制作は、学生たちが司会とテーブルファシリテーターを担当してプログラムを進行。防災意識を高めることを目的とし、津波が発生したと仮定したときに、どのように避難するかをシミュレーションする地図を制作しました。参加者からは「実際に被災を経験された方のリアルなお話を聞くことができた」「自分の住んでいる地域の危険性について考える機会を得られた」などの感想が寄せられました。プログラムを進行していた片山舞衣子さん(産業社会学部3回生)は「対面しないとわからない相手の気持ちがみえてきた。当時の思いを当事者だけが知っているのではなく、次の世代につなげる活動を進めていきたい」と振り返ります。



 その後、カナダウッドグループの事務局を訪問し、ブリテッシュコロンビア州政府のHon. Bruce Ralston林業大臣へのオンラインインタビューを実施しました。Ralston林業大臣とは未来志向の良い意見交換も実施できました。加えて、震災復興の際に多大なる貢献を頂いたカナダウッドグループのブルース・セント・ジョン理事長とポール・ニューマン氏へのインタビュー取材活動を実施しました。震災復興を契機として、日本とカナダの強い繋がりが出来た事をより実感する事が出来ました。
 最後に、在バンクーバー日本総領事館を訪問し、久田領事と永野ゼミの活動や今後のカナダと閖上地区の交流について意見交換を実施しました。
 これら一連の活動の中で、原口誠也さん(産業社会学部3回生)と西田達哉さん(産業社会学部3回生)は、現地の方との交流について「10年が経った中でもカナダの方々に御礼を伝えられたことにやりがいを感じました」「日本だけがカナダに感謝しているのではないかと思っていたが、カナダの方も閖上地区のことを覚えてくれていたことが印象的だった」と答えました。



 学生たちとともに現地で活動した永野聡准教授は「カナダと閖上地区の関係性は、過去のゼミ生から代々引き継がれながら、今の形まで成長してきました。クラウドファンディングも活用し、たくさんの方々に支えられながら実現したことは、一つの研究としてすばらしいと考えています」とコメントしました。

 今後、永野聡ゼミでは、カナダでインタビューした内容を動画にまとめ、宮城県名取市や閖上地区の方々へ伝えていく予定です。これに関連して、2024年3月10日(日)には、イベント(100年後も繋ぐ閖上とカナダの絆 - 国際的な復興支援の記録を未来へ - / Yuriage and Canada's ties that will last 100 years - a record of international reconstruction assistance for the future-)を企画しています。



これらの活動に関連して、過日に永野ゼミが実施したクラウドファンディングでは、93万円の支援金を頂く結果となりました。立命館大学の教職員の皆様や宮城県校友会千田会長を筆頭とした東北の校友会の皆様、永野ゼミの関係者等、実に多くの皆様のご支援を頂いた事、ゼミメンバー一同、深く感謝をしております。
https://readyfor.jp/projects/126982

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