2017.10.16 TOPICS

「映像の時代」に新しい風を起こす~映像学部10年の歩み~

映像という新しい領野を切り開く

 「映像の時代に挑む」をテーマに、2007年に開設され今年で10年目を迎えた映像学部。映画とゲームの製作を中心に、今日のクリエイティブ産業を担う技術力と創造性、さらにはマネジメント能力を身につけ、社会で活躍することのできる学生を育て送り出すことをファーストミッションとしてきました。「映像」という名を冠した日本ではじめての学部であり、文理融合型学部の先駆として、教職員はもちろん、学生たちと一丸となって、挑戦と努力を積み重ねてきました。学部開設以来、スマートフォンの急速な普及など映像をめぐる環境自体も目まぐるしく変化してきていることは誰しも知るところですが、そうした状況下で、自らのミッションにいかに挑み、進化を遂げてきたのか。映像学部長の北野圭介教授に、これまでの歩み、今後の展開などについてお話を伺いました。

個人が駆使するメディアが世界を覆う時代

北野圭介教授
北野圭介教授

 「アートやクリエイティブといえども、将来、その道で生計を立てていかなければなりません。映像の分野は、既存のレールがないところで立ち向かっていく必要があります。日々変化する分野であり、チャレンジスピリッツは不可欠です。プログラミングはもちろん、デザインからビジネス、マネジメントまで、総合的な力が求められるなか、学部として学生の“自ら道を切り開いていく力”を育ててきたと自負しています。当初の狙い通り、映画関連、ゲームクリエーター、アニメ、各種メディアなどで多くの卒業生が活躍してくれています」と北野教授は話します。
 2010年を境に、スマートフォンの普及などにより、映像テクノロジーをめぐる環境が一変。世界を席巻している代表的な「スマホ」の登場と時を同じくして産声を上げた映像学部も、そうした時代の変化にも敏感に対応してきました。
 「20世紀においては大企業が担っていた映像の制作と流通の流れを、スマートフォンは大きく変化させたと言えます。みんなが、個人ベースで映像を作り、さらには国内はもとより国外にまで発信できる時代が到来したわけです。今日にあっては、SNSなど、個人が駆使するメディアが世界中の人々のごく普通の日常光景に欠かせないものになっています。映像という名を冠した学部ですから、そうした新しい事態、そこから生まれる新しい多様な期待に応えることが強く求められます。それこそが、これからの映像学部が担うべき、新しい課題ではあると思っています」と北野教授は力を込めます。
 就職先にも変化が見られ、「かつては、映画、そしてゲームの世界へと飛び立つことが学生たちの一番の夢だったわけですが現在は、将来の夢に、メディアアートの世界での活躍、プロジェクションマッピングやAR技術などの技術開発の世界などを思い描く学生も増えてきました。YouTube上で独自に制作した動画を継続的に公開する“YouTuber”を挙げる学生さえ出てきています。日々変化する業界であり、映像世界の現在、そして未来から目が離せません」と、北野教授は熱く語ります。

作品づくりは理想的なアクティブラーニング

 映像学部の特徴のひとつに、小集団授業があり、その多くは、作品制作にあてられます。「作品づくりは、学生同士、学生と先生が意見をぶつけ合いながら濃密な時間を過ごすなかでこそ進みます。不確定な要素も多く、計画通りにいかない、思ったようにいかないことばかりです。作品が完成しても、その作品は厳しく人目にさらされます。どうにか作品を作り上げていく経験は、かくも険しい道のりです。だからこそ、チャレンジ精神や忍耐強さも鍛えられます。それらは実際に社会のなかで仕事に就くときには、たとえそれがどんな分野であっても、役立つ強さです」と北野教授は強調します。こうした作品づくりを通じ学生同士、教員との間の密なつながりが産まれ、他学部の学生から「家族的」と呼ばれているのにもうなずけます。
 自主ゼミや課外活動(学内外の様々なプロジェクト)に多くの学生が積極的に参加しているのも映像学部ならではで、「作品を作りあげる(アウトプットする)ことが学生のモチベーションにつながっています」と北野教授は言い切ります。「自発的に学びを展開していく、こうした姿勢を育んでいくことこそが、アクティブラーニングの本来あるべき姿ではないでしょうか。苦労して作品を作り上げるものの、その先にはわかりやすい正解などありません。常に周囲の評価に向き合わねばなりません」と北野教授。いくつもの壁を乗り越えていく、そうした一つひとつの経験が学生の血となり肉となり、実践力が磨かれていきます。
 また、日本が誇るポピュラー文化に関心を抱き映像学部の門をくぐる留学生も多く、こうしたアクティブな学びのなかで、教室内でも活発に国際交流が行われています。

AI時代の大学教育、これからの映像教育

 一般に、基礎から展開、そして応用へというのが、大学における教学の是とされるパターンとなります。映像学部の場合、「何かモノを作りたいと構想し、その実現のためには、どんなスキルが必要なのか、いかなるアプリケーションが必要なのかを自身で探り、調べ、自ら習得していくカタチになります。そうした学びを通じて培われた力は、学生が巣立った企業などからも高く評価されています」と北野教授は話します。
 映像を研究し、そして教育する映像学部の存在価値も、明らかに広がっています。「在学生を含めこれから入学してくるのは幼少期からパソコンやスマートフォンに親しんできた世代です。専門性や知識の摂取に関して、下手をすると大人よりも長けている若い人も多く、以前のように著名な先生から学ぶという姿勢ではありません。知識の量の水準ではない、己の陶冶を求めて大学に入ってきます。それにしっかりと対応していくことが、デジタル社会における大学の責務の一つではないでしょうか。人々の生活の変化は、世界とは何か、社会とは何か、どうあるべきかという理解や態度まで問い直す勢いです。そうした時代の動きに向き合いつつ、映像学部だからこそ身につけられる作る力、アプトプットまで繋げる力は、狭い意味での映像産業を超えて、社会の多くの領域で活用されるべきものだと確信しています」と北野教授は語気を強めます。
 インターネットを通じ、気軽に必要な知識を得ることができ、さらにAIが導入が進む昨今、そうした傾向が強まれば強まるほど、人と人とが具体的な関係性のなかで何かを成し遂げる力が求められています。「知のあり方が根本から問われ直している今こそ、映像学部の教学のあり方、取り組みは、その魁(さきがけ)となるものであるとさえ言えます」と北野教授。そうした多彩な課題に挑戦し、社会を豊かにする使命感をもった新世代を育てていくことこそが、映像学部の今後のミッションでもあります。

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