2025 年4月8日に文部科学省から発表された、令和 7年度科学技術分野の「文部科学大臣表彰」において、立命館大学国際関係研究科の越智萌准教授、生命科学部の竹俣直道准教授、ならびに総合科学技術研究機構の元村一基准教授が「若手科学者賞」を受賞しました。
 文部科学大臣表彰(科学技術分野)は、科学技術に関する研究開発、理解増進等において顕著な成果を収めた方へその功績を讃えることにより、科学技術に携わる方々の意欲の向上を図り科学技術水準の向上に寄与することを目的としたものです。立命館大学研究者が受賞した若手科学者賞は、萌芽的な研究、独創的視点に立った研究等、高度な研究開発能力を示す顕著な研究業績をあげた 40歳未満の若手研究者個人へ贈賞されるものです。

立命館大学国際関係研究科 越智萌准教授

受賞の主な研究業績

 越智准教授は、分野横断的国際共同研究等を通じて得た新たな発想や視点から、国際刑事手続法が前提とする「事情や価値(プレミス)」が一般原則の特定の決定要素であるという、体系化理論と法源理論の前提となる「一般原則のプレミス理論」を提示しました。本研究成果は、ロシア・ウクライナ紛争やガザ事態といった国際問題において重要性を増すICCをも規律する、国際刑事手続法の体系性と諸原理の前提となる一般原則に関する理論を明らかにしたことで、国際刑事司法制度の包摂的理解、法解釈、法実務に貢献すると期待されます。

越智准教授のコメント

 今回の受賞は、私一人に対するものではなく、日本の国際法研究者のコミュニティ、特に国際人道法刑事法研究会が長年積み重ねてきた研究の蓄積全体が評価された証だと思います。また、僭越ながら、日本における法学、そして文系の研究者全体にとって、大きな励みとなればと思っております。さらに、これを機に、国際社会における暴力に対抗する「法の支配」を推進するための制度である国際刑事司法とICCに、より関心が集まることを祈念します。研究を支えてくださる皆様に感謝を申し上げたいとともに、今後の研究活動に一層邁進してまいりたいと存じます。

プロフィール

 2015年3月大阪大学大学院法学研究科博士課程修了、博士(法学)。2015年より京都大学大学院法学研究科(日本学術振興会特別研究員(SPD))、2019年よりひょうご震災記念21世紀研究機構主任研究員、2019年より京都大学白眉センター法学研究科特定助教などを経験し、2020年より現職。専門は国際刑事司法(国際法学)。

越智准教授

生命科学部 竹俣直道准教授

受賞の主な研究業績

 竹俣准教授は、真核生物の起源となった原核生物「アーキア」に対して、近年発展の目覚ましいHi-Cというゲノム三次元構造決定法を適用しました。そして、アーキアと真核生物のゲノムが様々な構造的類似性を有することを突き止めました。本発見は、真核生物ゲノムの進化的理解に大きく寄与するだけでなく、ゲノム構造の人為的制御を通じてアーキアがもつ有用形質を操作・改変する技術の創出につながると期待されます。

細胞内におけるDNA領域同士の近接度を定量するHi-Cにより、アーキアゲノムの三次元構造を決定した。


竹俣准教授のコメント

 このような大変栄誉ある賞を賜り、誠に光栄です。これまでご指導賜った先生方、ならびに共同研究者の皆さま方、そして陰ながら支えてくれた家族に、この場をお借りして深く御礼申し上げます。この受賞研究をさらに発展させ、アーキア生物学の発展に寄与できるよう今後も精進してまいります。

プロフィール

 2016年9月東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了、博士(学術)。2017年より米国インディアナ大学博士研究員(2018-2020年学振海外特別研究員)、2020年よりさきがけ専任研究員、2021年より京都大学工学研究科助教などを経験し、2025年より現職。専門はアーキアゲノムの構造と機能。

竹俣准教授

総合科学技術研究機構 元村一基准教授

受賞の主な研究業績

 元村准教授は、植物が種子をつくる上で不可欠な花粉管の、先端にある核の役割に着目しました。そして世界で初めて先端部に核を持たない花粉管を作ることに成功、核からの新たな指令なしに花粉管細胞が伸び続け、雌である胚珠の位置を認識して到達できるという、驚くべき能力を花粉管が有することを突き止めました。この従来の定説を覆す発見は、植物生殖科学の進展に大きく貢献し、将来の効率的な種子生産技術などへの応用も期待される画期的な成果です。

花粉管先端部から核を除去した花粉管(右)も、正常な花粉管(左)に伸長し、胚珠へ辿り着く能力を維持していた。


元村准教授のコメント

 このたびは若手科学者賞を賜り、誠に光栄に存じます。指導教員や共同研究者の皆さま、ラボメンバーや仲間たち、大学関係者、そして家族など、多くの方々のご支援により研究を進めることができました。この場をお借りして深く感謝申し上げます。現在はこの受賞研究を基盤にさらに発展的な研究に取り組んでおります。今後も生物学の発展に貢献する研究成果を目指し一層精進してまいります。

プロフィール

 2015年3月東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了、博士(学術)。2015年より名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所学振PD、2019年より立命館大学グローバル・イノベーション研究機構助教、さきがけ研究員、立命館大学生命科学部助教などを経験し、2024年より現職。専門は植物生殖の細胞生物学、RNA生物学。

元村准教授

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