2018.10.19 NEWS

オーダーメイド医療時代における創薬のオープン・イノベーションの重要性を定量的に解明

 児玉耕太(テクノロジー・マネジメント研究科・准教授)らの研究グループは、オーダーメイド医療医薬品23品目と従来型医薬品24品目の社外取引数やその内容について、データベースを用いて直接比較することで、オーダーメイド医療医薬品開発におけるオープン・イノベーションの重要性を定量的に明らかにしました。この成果は、Drug Discovery Today(オンライン版)で発表しました。

 顧客の身長や体型に合わせて採寸し、仕立てをするオーダーメイド服飾と同様に、医療の領域においても患者の遺伝的背景や体質に応じて薬を選ぶ時代に突入しつつあります。これまでの医薬品は、たとえば、ひとくくりに胃がん、肺がんと診断されれば、そのがんに対する薬剤を処方する手法が一般的でしたが、効果が予測できない上、副作用の問題がありました。それに対してオーダーメイド医療はそれぞれの患者の疾患の原因遺伝子や分子を的確に診断し、それに応じた特効薬を処方する画期的な医療手段です(図1)。これにより製薬企業は開発費を削減でき、医者は各患者に対して最適な薬物治療が行えるようになり、結果として医療費の削減に繋がることが期待できます。
 一方で、オーダーメイド医薬品の開発には、診断薬と治療薬を並行して開発する必要があるため、外部とのコラボレーションやオープン・イノベーションがこれまで以上に必要になるのでは、といわれていました(1,2)。そこで我々研究グループは実際の上市済みオーダーメイド医療医薬品23品目と従来型医薬品24品目の社外取引数やその内容についてデータベースを用いて直接比較することでオーダーメイド医療医薬品開発におけるオープン・イノベーションの重要性を初めて定量的に明らかにしました。
 解析の結果、オーダーメイド医薬品では、総取引数、社外提携数、特に研究開発に関連した提携やバイオテック間の提携が従来型医薬品よりも有意に多く、かつ体外診断薬の開発に関する取引数が突出していました(図2)。さらに、オーダーメイド医薬品では、成果物の指標となる商品化ライセンスや投資の数が他の取引と強く相関しており、より活発な社外取引が成果創生に結びつくことも示唆されました。また、個別のオーダーメイド医薬品の取引内容を時系列で詳細に追跡したところ、大半の医薬品において上市前から体外診断薬や治療薬に関する共同開発や提携が活発に行なわれていることも明らかになり、開発早期からの外部コレボレーションが成功の鍵であることが強く示唆されました。
 今後はオープン・イノベーションを活発に行うことによって個々の医薬品の売上が増加するか、その医薬品を用いた治療の費用対効果が向上するかを研究していく予定です。

Reference
1. Haruya. M. and Kano, S. (2015) A new look at the corporate capability of personalized medicine development in the pharmaceutical industry. R&D Management 45, 94-103
2. Makino T, Lim Y, Kodama K. (2018) Strategic R&D transactions in personalized drug development. Drug Discov Today 23 (7), 1334-1339

図1 従来型医療(左)とオーダーメイド医療(右)の違い
図1 従来型医療(左)とオーダーメイド医療(右)の違い
図2 従来型医薬品とオーダーメイド医薬品の1剤あたりの開発における平均取引数
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