福島の“かぜ”を感じる
~福島県民の皆さんを迎えての講演会を開催~
震災から5年、福島県の今を聞く
もう一度震災を考え直すいい機会に
1月8日(金)、東日本大震災で被災され仮設住宅で生活している福島県民の皆さんや福島市内で果樹産地の再生に向け取り組む農家の方々などによる講演会を開催しました。「応用社会心理学」(担当:サトウタツヤ教授)の講義内で行われたもので、受講する学生約250人が福島の今を知る、生の声に耳を傾けました。
今も続く仮設暮らしの実情とは
苦難を乗り越え、福島の農業は次のステップへ
講演会では、まず福島県浪江町で被災し、まもなく震災から5年が経とうとする現在でも福島市の笹谷東部仮設住宅で暮らす熊田伸一前会長があいさつ。震災直後から避難所を転々とした体験談や「早く仮設は出たいが、(コミュニティにうまく溶け込めるか、なじめるかなど)出た後の不安」などについて話がありました。
また、「立命館大学の先生や学生の皆さんにはボランティアなどで何度も現地に足を運んでもらっています。今一番必要なのは“心”の支援。仮設住宅も高齢化が進んでおり、若い人たちに来てもらえるのはとてもありがたい。みんなとても喜んでいます」と話しました。
続いて福島市で農業を営む30から40歳代のメンバーで構成するふくしま土壌ネットワークから、副代表の橘内義知さん、阿部宏治さん、安斎直樹さんが「福島の農家の努力とその結果」と題して講演。「震災直後は情報・知識不足などもあり、何から手を付けていいのか分からず、まったくの手探り状態からのスタートだった」といいます。しかし、そこから土壌の分析や徹底したモニタリング放射性物質検査、イベント展開などにより、震災前の状態を取り戻しつつあるといい、今後は積極的な情報発信により「安心・安全はもちろん、くだもの王国・福島をアピールしていきたい」と力強く話しました。
KYKで心のふれあいを
浪江町出身で、現在は京都で暮らしNPO法人ニッポン・アクティブ・ライフ・クラブ(ナルク)の京都「ことの会」代表を務める岡部正則さんは、現地や関西各地で避難生活を送る人々のボランティア活動などを通じ「仮設などでのボランティアではKYK(声かけ、寄り添い、傾聴)が大切。若い人たちの助けが仮設暮らしの人たちの力になる」と訴えました。
「福島県民の皆さんから直接、話が聞けるのは貴重な体験。いろいろな立場の人から話が聞けて良かったと思う。そうした話を総合するのは学生自身。もう一度、震災を考え直すいい機会にしてほしい」とサトウ教授。受講した学生からは、「農家の方々の苦労が改めて分かった」「メディアを通じての情報しか知らなかったので、直接話が聞けたことは大きい」「震災復興はまだ終わっていないと感じた」などの声が聞かれました。
講演会後には、立命館大学人間科学研究所主催で、ゲストの皆さんと立命館災害復興支援室のメンバーなどによる意見交換会も行われ、「福島復興の現状と課題」と題し議論を深めました。
ゲスト(敬称略)
熊田伸一(福島市笹谷東部仮設住宅前副会長)
菅野信雄(福島市笹谷東部仮設住宅在住者)
佐藤宏美(ふくしま連携復興センター)
橘内義知(ふくしま土壌ネットワーク副代表)
阿部宏治(ふくしま土壌ネットワーク)
安斎直樹(ふくしま土壌ネットワーク)
岡部正則(NPO法人NALC京都「ことの会」代表)