壁面内部のバッテリレス無線漏水センサの動作を検証 ~電磁波無線給電技術を用いたセンサの死活監視システムを開発~
立命館大学理工学部の道関隆国教授の研究グループは、壁面内部に設置されたバッテリレス無線漏水センサ(※)の動作検証において、電磁波無線給電技術を用いた短時間で実行可能な「死活監視システム」を開発しました。本研究成果は、2021年11月2日(日本時間)、国際会議「IEEE SENSORS 2021」で発表しました。
(※)エイブリック株式会社のCLEAN-Boost®バッテリレス漏水センサ
本件のポイント
〇 電磁波無線給電技術を用いて、壁面内部に設置されたバッテリレス無線漏水センサの動作検証をバッテリレスで実行できる「死活監視システム」を提案。
〇 センサの位置を検出する「位置検出モード」を死活監視システムに設け、センサの位置確定後にセンサに無線給電することで、死活監視に必要な送電エネルギーを削減。
〇 センサの位置検出時に、受電レクテナの整流器から発生する高調波を送電機側に送信することで、センサ位置を短時間で検出。
〇 漏水センサだけでなく、他のバッテリセンサにも広く応用可能。
研究の背景
あらゆる物にセンサを設置し、インターネットを介して多量のデータを収集・処理することで、人間の生活環境を向上させるIoT社会において、電池交換を必要としないバッテリレスセンサはとても有用です。特に、今回対象とする建物の水漏れを知らせるバッテリレス漏水センサのように、発電の有無によりセンシングを行うセンサでは、センサ自体が正常に動作しているかどうかの検証を行う死活監視が必要となります。これまでの技術では、その死活監視機能に電池が必要となっていたため、保守点検も含めたバッテリレスセンサは存在しませんでした。
研究内容
電磁波無線給電技術を用いたバッテリレスセンサの死活監視システムを図1に示します。システムは送電機とバッテリレスセンサに取りつけた受電レクテナで構成しています。送電機は、送電用の2.45-GHz送電アンテナと受電レクテナからの高調波を受信する4.9-GHz受信アンテナからなり、受電レクテナは、2.45-GHz受電アンテナ、整流器、および整流器で発生する高調波を送信機に送信する4.9-GHz送信アンテナからなります。
本死活監視システムでは、まず受電レクテナで、受電時と同時に、整流器で発生する高調波信号を送電機側に送信することにより、受電レクテナの位置を送電機側で検出し、センサの位置検出に要する時間を短縮しました。また、送電機を間欠送電(デューティー比 = 0.1)にすることにより、送電機の送電電力を10分の1に削減しました。次に、センサの場所を特定後、センサに連続給電し、センサの死活監視を行いました。センサの位置が特定された時点で、受電機のレクテナ自体の動作が確定されるので、連続給電でセンサからの応答があればセンサは正常と特定、センサから応答がない場合には、センサ自体が動作不良と特定できることになります。試作したバッテリレス漏水センサ用の死活監視システムの写真と評価結果を図2に示します。送電機の送電電力10 W、送電アンテナのアンテナゲイン15.74 dBi、受電アンテナのアンテナゲイン 2.14 dBiの条件で、送電機とセンサの距離が1m 以内では、10秒以内(位置検出:2秒、センサ応答:8秒)で死活監視ができることがわかりました。
今後の展開と社会へのインパクト
今回提案した電磁波無線給電技術による死活監視システムは、漏水センサに限らず、あらゆるセンサに適用できるため、バッテリレスセンサには必須の技術となります。
用語解説
- 電磁波無線給電技術
通信で用いられる電波のキャリアを無線給電に用いる技術 - レクテナ
アンテナと整流器の総称 - 間欠送電
電磁波を連続的に送電しうるのではなく、送電をオン・オフ制御することにより、間欠的に行う送電 - アンテナゲイン
アンテナから輻射するエネルギーを一定方向にどれくらい集中できるかの度合い。アンテナゲインが大きいほどより遠方に給電可能