大熊町留学プロジェクト

 2011年3月11日の東日本大震災から10年以上経った今も、被災地での復興は続いています。
 東京電力福島第一原発事故により全町域に避難指示が出された福島県大熊町。震災当時の町民の多くは、依然として県内外で生活を送っている人もいます。2019年4月からは一部地域で避難指示が解除され、この地域を足掛かりに復興に向け取り組みを続けています。
 この大熊町で、「復興支援と国際交流」の実現を目的に、外所祐香さん(経済学部4回生)が2021年11月29日(月)~12月3日(金)に、大熊町で「農業インターンシップ〜⼤熊町留学〜」を実施しました。

 本プロジェクトでは、コロナ禍で海外留学に行けなかった日本人学生6名、日本へ留学に来たものの交流の機会に恵まれなかった留学生4名を各地の大学から集め、大熊町での農業インターンや復興支援を通して、学生と地域住人などとの国際交流を実現しました。

 これまで中国の北京と大連で海外留学を経験してきた外所さん。留学を通して多種多様な人と出会い、交流するなかで「自分が自分らしく生きていくこと」の大切さを学び、留学が自分自身の価値観を変える大きなきっかけになったといいます。現在、多くの学生がコロナ禍で留学を諦めざるを得ない状況下で、「コロナ禍で留学できない学生を救いたい」との思いからプロジェクトを立ち上げました。
 また、2回生の頃から復興支援に携わっており、「大熊町の復興に寄与したい」との強い思いも背景にありました。「関係人口の増加」を課題とする大熊町で、学生団体「みんなで大熊町づくりプロジェクト(みんくま)」を通し、大熊町に関わった人が今後もつながっていける新たなコミュニティの実現を提案。8月、大熊町役場から事業化決定の認可が下り、プロジェクトの実施に至りました。「コロナ禍での国際交流を大熊町で実現するとともに、10年経った現在も復興途中である大熊町で、日本人学生、留学生と一緒に未来の新しいFukushimaを考えていこう」と事業目標を掲げました。

 プロジェクトでは、参加者が大熊町役場での就業体験や大熊町の復興シンボルであるいちご産業で農業インターンを体験しました。震災学習として福島第一原子力発電所事故の被災現場である「帰還困難区域」を訪問。10年経った今も町民が帰れず震災の爪痕を大きく残すこの地で、被災した施設などを見学し、大熊町役場や大熊町の出身者など現地に生きる人々の声を聞きました。

 プロジェクトでの学びは5日間を通してSNSで発信。日本語のみならず中国語や英語でも大熊町について参加者が広報しました。また、学生同士の交流を図るため、グループワークでは参加者の学びや考えの変化、それぞれの思いを言葉にして共有し合う機会を設け、多文化の価値観を学び合いました。

 プロジェクトの参加者からは「被災地での学びは今までにない経験となった」、「初対面の人と5日間を通して交流を深めたことで、多様な価値観や考えを知り、視野が広がった」などの声が寄せられました。また、現地の関係者からは「大熊町の復興には、多種多様な人材を寛容に受け入れることが大切。今回、日本人学生だけでなく海外の留学生が大熊町に関わってくれたことで新たなつながりが生まれ、本当に良い取り組みだった」と喜びの声が届きました。

 プロジェクトを企画し、現地でコーディーネーターを務めた外所さんは、「プロジェクトを成し遂げ、参加者や現地の方からいただいた言葉で『自分に関わってくれた人を笑顔にし、その人の成長のきっかけになれること』がどれだけ幸せなのかを実感しました。大熊町は復興に向け、日々まちの景色が変わっています。まちの人が語る復興についての考えやエピソードは、何度聞いても心に響きます。現場を見て知ることの大切さを改めて実感しました」と振り返りました。

 「常識を変える価値を生み出し、世界を豊かにする」という志を掲げる外所さん。今回のプロジェクトでも、「コロナ禍での国際交流」という視点から、参加者・地域の人をつなぎ、新たな価値を創出しました。「社会人になった後も、学生だけではなくさまざまな人を巻き込み、大熊町の復興に関わり続けていきたい」と、今後の抱負を語りました。

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外所祐香さん(経済学部4回生)のコメント

 夢に向かって挑戦し、やり遂げる楽しさを学べた立命館。
 留学では“真実は人の数だけある”ことを知り、より人生を楽しく生きることができるようになりました。そんな留学がコロナ禍で経験できないことが私自身とても辛かったです。また、3年間続けている留学ボランティアでは、私と同じように留学したくてもできない人たちが多くいることを知っていました。留学したかった日本人のため、国際交流機会に恵まれなかった留学生のため、大好きになった大熊町のために、国内留学のプロジェクトを立ち上げよう!とすぐに提案書を書きました。立命館グローバルリーダー養成プロジェクトやPBL(Problem/Project-based Learning)理論の講義で知識を学んでいたものの、実際に企画から実行までを行うのは、初めての経験ばかりでした。それでも、「どうすればより良くなるのか」を考えることが心の底から楽しかったです。
 大熊町留学プロジェクトは、今までで最も達成感がありました。なぜなら、大熊町役場の方も参加したメンバーも、インターン先の企業も、関わってくれた人たちをいっぱい笑顔にできたからです。
 これからも私の志“常識を変えるサービスを生み出し世界を豊かに”を実現できるよう挑戦していきたいです。

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