学校法人立命館は、学園が運営する附属高校(立命館守山、立命館高校、立命館慶祥)で理系科目を選択している高校3年生らを対象に、これまで学んできた探究学習の成果を発表する「課題研究アワード」を実施しています。
 2021年度の課題研究アワード最優秀賞を受賞したのは、立命館守山高校の生徒4人が取り組んだ課題研究「床発電を用いたゼロスタンバイ自動改札機」。“研究”に向き合った約半年間の取り組みについて、立命館守山高校の生徒4人と指導にあたった理工学部の道関隆国教授、田中亜実講師らに、最終プレゼンまでの様子や今後の活動についてうかがいました。

完成した自動改札機について、田中亜実講師が解説
完成した自動改札機について、田中亜実講師が解説

高校で学んだ探究的な学びを大学の学びへとつなげる

 課題研究アワードは、2018年に理工学部が単独で開始した取り組みを契機に、現在は理工学部・生命科学部・情報理工学部・薬学部・スポーツ健康科学部の5つの学部と高大連携を推進する一貫教育部が連携して取り組んでいます。生徒らが取り組んできた探究的な学びの成果を、シームレスに大学(大学院)の学びにつなげることを目的とし、活動には、大学のさまざまな研究室も協力しています。2022年2月21日に行われた課題研究アワードの最終プレゼンでは、生徒らが積み重ねてきた成果を大学教員の前で発表。フィードバックをもらい、大学での学ぶ意欲を高めるきっかけとなる生徒も多く、大学入学前教育としても位置づいています。

答えがない、だから、楽しい

 最優秀賞を受賞した立命館守山の生徒らが取り組みをスタートしたのは、2021年6月17日、2年生の授業「理数探究」でグループを組んだ大西慧次朗さん、江城将斗さん、澤村歩務さん、嶽山友貴さんが、担任の水野翔太先生とともに、道関研究室を訪問したことがきっかけでした。生徒らは「圧電素子を使って、歩く振動で携帯を充電したい」という課題テーマを道関先生に相談。しかし、道関先生からは「みなさんの仮説では、発電量が少なく、携帯の充電ができる電力は確保できないと思う。オン・オフのスイッチ(回路)を動かすような微量な電力を使って無駄なエネルギーを減らす研究をしてみてはどうか」とアドバイスがあり、そこから本格的な研究がスタートしました。

 2年生で課題設定した“発電”に関するテーマだが、テーマを決めるにあたって澤村さんは、「圧電素子を使って発電するというテーマを探すのに時間がかかった。答えのない問い(課題)について考えるプロセスを経験できたことは、これからの大学生活にもつながると思った」と課題設定の難しさを話してくれました。

 新型コロナウイルスの影響で、校内での活動が制限され、思うように研究が進まない中、生徒らはオンラインミーティングなどを重ね、少しずつ課題解決に向けたデバイスづくりに着手。立命館大学のものづくり施設「AIOL(アイオーラボ)」の3Dプリンターを使うため、1からCAD(Computer Aided Design)を学んで模型を作ってみたり、高校で学んだ回路図をリアルの場で試してみたり。田中亜実講師と杉本弘之さん(工作センター職員)ら教職員に加え、TAの平井湧一朗さん(理工学研究科博士前期2回生)も積極的にサポートを行う中で、生徒らは学んだ知識をものづくりに使う難しさを感じたそうです。
 「物理の授業で電磁気の回路を書いたことはありましたが、実際に手にとってみた時に、どれがどれだかわからなくてギャップを感じました」(江城さん)

 「研究はただ調べれば答えが出てくるものだと思っていましたが、実際やってみると、研究のためには数学や理科など複合的な知識が必要だと気づきました。何かを組み立てるという行為一つとっても、組み立て方はたくさんあって。今回の経験を通じて、研究そのもののイメージが変わって、難しい分、やりがいも感じました」(大西さん)

 定期テストとは違い、答えのない課題に対して試行錯誤する生徒らの姿を見ていた水野翔太先生も、生徒が取り組む姿勢を次のように評価しています。
 「取扱説明書を読んで、その通りにやったとしても動かないことがあったりしたとき、自分は一体なにを信じてやればいいのかわからないことがあります。生徒たちにとって今回の研究は、わからないことだらけだったと思いますが、道関研究室のみなさんに、一つずつ教えてもらいながら、トライ&エラーを繰り返してくれました。トライした回数は、高校の授業の量とは比べられないレベルです」

220315-1235-6
220315-1235-6

課題解決アワードを通した経験が、生徒たちの考えを変える

 「小さな発電を使って、大きな電力の消費量を制御」を研究の目的とし、私たちが日常的に使っている自動改札機の消費電力の削減を目指して試作機を作り、見事最優秀賞を受賞した立命館守山のチーム。生徒らは、課題解決アワードに向けた取り組みを通して、高校では中々味わうことのできない経験と、研究ってこういうものなんだというイメージを獲得できたそうです。活動を通して身についた能力について、生徒たちは次のように振り返りました。

 「活動を通して、プレゼンをする機会が多かったです。自分たちの意見を道関先生はじめ、さまざまな方々と話す中で、決められた時間で説明する能力がついたと思っています。大学でもいかせそうですよね」(澤村さん)

 「チームでやり遂げたことがよかった。一人ひとり、強みや弱みがある中、一人ひとりの良いところが合わさったことで、良い研究ができたと思います。大学で研究に向き合う際も、チームで進めることや団結力が大事だと学びました。結果としてアワードにつながったと思います」(大西さん)

 指導した教職員らも、生徒たちが課題解決に向けた取り組みに没頭する様子や生徒らのコツコツと取り組む姿勢について次のように振り返ってくれました。
 「ものづくりはリアルでないとできないこともある。ものづくりは、実際に機械に触れ、手を動かすことが大事。研究には泥臭いことが多いことを知って、経験してもらえてよかった」(道関先生)
 「今回の経験を活かして、大学入学後もたくさんの仲間と力を合わせて、研究や学生生活を送ってほしい」(田中亜実・理工学部講師)
 「生徒たちがものづくりを楽しんでいる様子が印象的でした。ものづくりというのは、ものができていく話(過程)でもあり、人として成長していくことでもあることを、生徒たちを見て感じた」(杉本弘之・工作センター職員)

 高大接続で生徒らにも大学の研究に触れる機会を創出した課題研究アワードの取り組み。今回の立命館守山高校の事例では、理工学部が持つさまざまなリソースを生徒らが活用し、教職員が一体となりサポートした成果です。これからも、大学の研究にたくさんの生徒が触れる機会になるよう取り組んでいきます。

関連情報

NEXT

2022.03.14 TOPICS

青山中学校との初の教育連携企画「立命館大学BKC 体験授業」が開催されました

ページトップへ