京都の老舗旅館で妖怪文化をテーマとした脱出ゲームを開催
2022年10月10日(月)、政策科学部 石原一彦教授、および同教授のゼミに所属する学生(以下、石原ゼミ)は、京都市中京区の老舗旅館「綿善旅館」にて、京都の妖怪をテーマとした脱出ゲームを開催しました。
京都のまちなかには、伝統的な街並みや由緒ある老舗など、多くの地域資源が存在しています。その一方で、マンションが増え、とりわけ新規居住者はそのような地域資源に触れる機会が少ない状況です。
そこで、石原ゼミでは、高倉校区の小学生を対象とし、中京区井筒屋町をフィールドとした脱出ゲームに「妖怪」や「祇園祭」などの京都固有の文化を盛り込むことで、小学生と地域文化や地域資源との接点を創出しました。
子供たちは、脱出のための暗号を解くため、リーダーや戦士など役割が割り振れられ、それを全うしようと頑張っていました。また、一生懸命意見を出し合って、年下の子を助ける異年齢交流も生まれ、アイテム(懐中電灯や豆)で妖怪退治をするのが楽しそうでした。異年齢交流は、近隣でありながら日ごろ接点のない旅館という非日常空間に入り込むことで緊張感が生まれたと考えられます。
また、脱出ゲーム後には協賛店舗である、京うちわ「阿以波」、和紙「鈴木松風堂」、新しいホテル「MIRU KYOTO NISHIKI」を訪問し、歴史と文化に育まれた京都ならではの地域資源を子供たちが理解するきっかけ作りを行いました。協賛先では、老舗うちわ店の創業333年の歴史を聞いたり、新規ホテルがどのように京都になじんでいくかなどの話を聞きながら、記念品をもらいました。お店を訪れるときの「こんにちは」、記念品をいただいた時の「ありがとう」が井筒屋町に響き渡っていました。協賛店のご協力の下、子供たちだけでなく保護者の皆さんにも、老舗旅館や新しいホテル、老舗店舗などの多様な地域資源に対する新たな接点・発見の機会となりました。
石原ゼミでは、脱出ゲーム終了後に、イベントでの妖怪文化や老舗店舗などの地域資源との接触感などを尋ねたアンケートを子供たちと引率の保護者の皆さんに行いました。これらを通して、地域の将来の担い手である子どもたちに、イベントを通して地域の魅力に触れてもらうことで、小学生が地域に対しどのような認識を形成するのかという点を検証しながら、今後どのように地域コミュニティが醸成され、地域文化や地域資源との関係が生まれていくのか、それらを基礎とする持続可能なまちづくりの模索を行っていきます。
北山杏奈さん(政策科学部・3回生)のコメント
私たちにとって、初めての学外イベントで不安もありましたが、今回多くの小学生、保護者の皆さんに参加して頂きとても嬉しく思います。子供たちが協力し合い、暗号を一生懸命解いている姿が印象的でした。「楽しかった!」「もっと京都の文化について知りたいと思った」「今まで知らなかった地域のお店を知れて良かった」などの声を頂き、イベントとして大成功だったと感じています。コロナ禍でこのような「リアル」な体験ができたことは、私たちにとって貴重な経験となりました。
政策科学部 石原一彦教授のコメント
私のゼミのコロナ禍以降のキャッチフレーズは、「バーチャルでは得られないリアルの楽しさを追求するゼミ」です。今回の企画を行った3回生は、高校の卒業式や大学の入学式がなくなり、大学でもオンライン授業中心など、コロナ禍の閉塞をまともに浴びている学年です。彼らがまちづくりの現場に出て、地域の人の話を対面で聞き、現場の中でイベントを実現し、研究へと展開することを心掛けました。最初は、リアルな環境でどう動いたらいいかわからず、ともすれば消極的だった彼らが、協賛店の皆さんらの叱咤や激励を受け、ともかく自分が動かないと物事は進まないことをリアルに学んだと思います。
イベント協賛店の綿善旅館女将 小野雅世さん(政策科学部2007年卒業)のコメント
約2か月定期的に打合せを行う等、お手伝いをさせて頂きました。世の中に価値を生み出すことの大変さと責任を学ばれていく様子は頼もしく学生さんの底力を見せて頂きました。
先日の京都新聞で、中京区の出生率は0.93%と発表されました。これらを改善しないと日本に未来はないと言っても過言ではありません。でもきっと、石原ゼミの皆さんなら大丈夫。明るい未来を作り上げてくれると確信しました。