立命館大学産業社会学部の永野ゼミ(永野聡准教授とゼミ生(ジェロントロジー班))は、60歳から亡くなるまでの人生を体験できるゲームを開発し、日本国内の60歳以上の高齢者を対象に活動しています。地域の医療や福祉に関する包括的なケアシステムを構築することを目標として活動する永野ゼミでは、このたび、マサチューセッツ工科大学AgeLabと連携した研究が実現。2023年2月21日・22日の2日間、アメリカのMIT AgeLabで、ジェロントロジー班が制作した「60歳からの人生ゲーム(US版)」をワークショップ形式で実施しました。

ゲームを通じて人生を終えるまでを体験し、これからの生活について考える

「60歳からの人生ゲーム」は、すごろくのようにマス目があり、参加者はサイコロを振って自分の名前の書かれた駒を動かします。マス目には病気や家族などに関わる出来事が書かれ、その内容に合わせてお金を支払ったり受け取ったりします。参加者はこれからどのようなことが起こるのかを想像し、どう対応するのかを話し合い、自らの人生の終着点を考える取り組みです。

「永野ゼミのジェロントロジー班では、日本国内でジェロントロジーを研究するチームがあります。人生ゲームを作って、高齢者の死生観や価値観を、ゲームを通して調査すると同時に、高齢者自身にとっても将来を考えるきっかけや機会を設けています。今回、この研究を著書としてまとめMIT AgeLabの研究者に情報を提供したところ、このゲームをアメリカの高齢者にも実施してみましょうとなりました」(永野聡准教授)

MIT AgeLabは、企業、政府、NGOと協力して、高齢者とその介護者の生活の質を向上させる学際的な研究組織です。AgeLabは、消費者中心のシステム思考を適用して、長寿と新興世代のライフスタイルの課題と機会を理解し、ビジネス市場全体のイノベーションを促進しています。

6人の高齢者に学生が作った人生ゲームを体験

現地では、MIT AgeLabの協力により6人の高齢者と人生ゲームを活用したワークショップを実施しました。ワークショップにはMIT AgeLabの研究者も同席いただき、学生たちは慣れない環境の中、自らの役割を遂行。ワークショップを主導してきた3人の学生は次のように振り返りました。

「海外版人生ゲームの制作は、2022年11月から着手し、約1か月で制作しました。制作にあたっては、今まで永野ゼミの先輩たちが制作した過去の人生ゲームに目を通し、ゲームの目的や意図を再度確認し、そのうえで試作品を制作しました。ゲームとして成立しているかどうかは外部の方々にも協力してもらい、改良を重ねた人生ゲームです」(大村将史さん、産業社会学部3回生)

「言語の問題があることはわかっていたので、高齢者の方々が主体的にゲームを進行させる工夫を施しました。結果、見事に進行が進みさまざまな意見が出たことは自信になりましたね」(金家達己さん、産業社会学部3回生)

「一方、言語の壁によって、高齢者のコメントに対して私たちが深堀するコメントができなかった点は課題です。日本語版であれば言葉のキャッチボールがスムーズなのですが、今回は私たちの意図が伝わらない点がありました。日本でできることも海外では簡単にはできない。研究の楽しさと難しさを学びました」(菊川愛歌さん、産業社会学部3回生)

MIT AgeLab研究員とのディスカッションも

ワークショップ終了後、永野ゼミの学生たちは、MIT AgeLabの研究員との意見交換の場も設けられ、人生ゲームを使った研究についてさまざまな知見を得ることができました。

「ディスカッションの場では、ゼミの研究内容や、ゲームの使い方や意図などの解説を行いました。MITの方々からの専門的な意見は、これからの研究に対するモチベーションになりました」(金家さん)

「MIT AgeLabの取り組みと、私たちジェロントロジー班の研究には高齢者の生活の質を向上させるという点で共有する部分がありました。ディスカッションの場ではアメリカの研究事例を直接教えてもらえたことでモチベーションにもつながりました」(菊川さん)

「US版人生ゲームをもっと改善して、再度チャレンジしたいですね。英語を学ぶ意欲も高まりました」(大村さん)

永野聡ゼミでは、これからも地域の医療や福祉に関する包括的なケアシステムを構築することを目指し、さまざまな機関と連携した取り組みを進めていきます。

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