「BKC開設30周年記念事業キックオフ・シンポジウム」を開催
2024年4月に開設30周年を迎えたびわこ・くさつキャンパス(BKC)では、今年度を通じて様々な記念事業が展開されます。その皮切りとして、4月30日にBKC・ローム記念館で「BKC開設30周年記念事業キックオフ・シンポジウム―次世代研究大学を目指したBKCのこれからの展望」が開催され、約150名の教職員が集まりました。
企画の第1部は、BKCの6学部の学部長によるプレゼンテーション、第2部では、登壇者間のパネルディスカッションを通じてBKCのこれからの展開、発展について活発な議論が行われました。
学部長による「BKCの魅力と学部・研究科の将来構想」
冒頭、BKC30周年企画・実行委員長の伊坂忠夫副学長からBKC30年の歩みや、地域社会とのつながり、BKCを通じた社会共生価値の創出についてお話がありました。具体的には、地域のwell-being向上と大学の研究教育発展を循環させるために、つながり創出ポイントとしてイノベーションを生み出す「リビングラボ」キャンパスにすることの必要性を述べられ、Innovation・Incubation・Implementationをキーワードとしてイノベーションキャンパスとする構想が語られました。「次世代研究大学を目指す立命館において、BKCのあるべき姿を学部長方とともに語り合い、会場の皆さんと共有したい」との開会の挨拶とともに、本シンポジウムの幕が開きました。
第1部のトップバッターとなる理工学部の高山茂学部長は、社会責任を担った価値創造、理系人材の母体層形成と育成、理系基礎教養の一貫教育化に言及。とくに産学連携の発展形としてスタートアップを輩出するインキュベーションの支援やユニコーンを創生するアントレプレナーシップ醸成の重要性について語りました。
また、理工学部から理系基礎教育センターへの発想、理系中学校・高等学校への展開等理系基礎教育の一貫教育化の見解を述べるとともに、教育の多様化に伴い、学園や各機関において相互にリソースが利用できるインキュベーションの場としてのBKCの立ち位置に期待を寄せました。
続いて経済学部の高屋和子学部長は、「経済学とは何か?」の切り口から、経済学部について説明。「エコノミクス」の言葉の起源等にも言及したのち、地域連携や地域協力の観点から、学生自ら「三方よし」の考えに基づき、地元企業と連携し卒業記念品を考案した実例や、経済学的行動分析とSDGs、大学や大学院での学びと地域を結ぶ取り組み等を紹介しました。
経済学は、経済学的分析手法や理論によって、Well-beingを実現するための方法を考える学問であることを説明。議論・提案ができる人材育成プラットフォームとしての発展を誓いました。
また、生命科学部の若山守学部長は、「21世紀は豊かさに対する考え方がものから心へと変化した時代」と語り、Well-beingの根幹は「自然と調和した発展」「健康問題」の2点と説明。持続可能な社会の実現に向け、新エネルギー問題や環境問題は、次世代に対する責任であり、大きな課題の1つと語りました。合わせて、もう1つの課題である、予防医学、長寿医学をはじめとした超高齢社会への対応にも触れました。
さらに現在は、脱炭素、新エネルギー等の環境外部型の分野強化を想定。研究、人材輩出を目指した取り組みと大学院拡充を目指す新展開に向けた動きについて語りました。
続いて、薬学部の北原亮学部長は、2024年度から始まった新カリキュラムについて言及。薬学部と食マネジメント学部、スポーツ健康科学部による学部横断型新科目「ヒューマンウェルビーイング」の立ち上げや再生医療や遺伝子治療など次世代医療のカリキュラム、産学連携による実践的教育と人材育成として、2回生にインターンシップ型の演習科目「薬学キャリア演習」の設置、アンメットメディカルニーズ(医薬品の開発が進んでいない疾患)について触れました。そして「立命館、BKCが一丸となり、Well-beingな世界をつくるために各学部が協力していきたい」と力強く語りました。
スポーツ健康科学部の長積仁学部長は、BKCのイメージを「最先端のサイエンスを最前線で奏でる」と述べ、キャンパスを拠点に学生や地域住民、研究者、民間企業の方々が集い、英知が集う場としての期待について語りました。さらに新しい価値を生み出す「イノベーション創発性人材」に対して、スポーツ健康科学部では、2023年度より新カリキュラムを導入したと説明しました。
また、BKCのプレイスブランディングを考えるうえで、総合大学としての強みを生み出す重要性を語り、30周年を機に、人・社会・サイエンスの関係や意味のデザインを仕掛けていきたいと抱負を語りました。
食マネジメント学部の石田雅芳学部長は、日本初の食の総合学部であることに触れ、食とアカデミアの関係性の歴史を解説。食としての学問には、大学教育における既存の学問をすべて入れる考え方が行われていると述べ、イタリア語の「Scienze Gastronomiche」、英語の「Gastronomic Sciences」であると説明しました。
自然科学、人文科学、社会科学の3領域に渡って学問分野を発展させ、食の現場にコミットする徹底したリアリティ教育の必要性を説明しました。最後に「学園の中に食を中心としたエコシステムが、未来永劫回っていくことを夢見ている」と締めくくりました。
BKCを拠点とした社会共生価値の創造
第2部では、「BKCを拠点とした社会共生価値の創造」をテーマとしたパネルディスカッションが行われました。伊坂副学長がファシリテーターを務め、各学部長から、様々な意見が出されました。
産学連携に関しては、令和5年度に採択された「地域中核大学イノベーション創出環境強化事業」や、「グラスルーツ・イノベーションセンター」に関する紹介がありました。各学部長からは、研究や仕事において社会価値とのつながりを念頭に置くことや、研究設備やアイデアのみならず、地域性や企業のニーズ、BKCや地域にとっての価値等のリソースを含める必要性に関する意見があるとともに、企業側が求める人材の育成を含め、次世代研究大学として、研究と教育の拡大再結合の重要性について意見が交わされました。
また、BKCのWell-beingに関わる取り組みについて、「健康・長寿・QOL」分野の研究領域に関して、新たな研究分野である「身体圏研究」の展開や、教学分野では、薬学部、食マネジメント学部、スポーツ健康科学部の3学部の連携による「ヒューマンウェルビーイング」科目をPBL科目についての紹介や意見交換がありました。
最後にBKCの将来について一言ずつ求められるなか、各学部長からは、今後の学部・研究の展開を進めるとともに、BKCが30年前に滋賀県に迎えていただいた意味を考え、社会・地域に貢献していきたいという、力強い言葉が述べられました。
白熱した議論を終え、ファシリテーターの理工学部・岡田志麻教授は「不変であるはずの学問形態でさえも、学際領域などに広がり、変化している。今後もつながりを大切にしていきながら、研究、地域との交流、学術的な交流を行い、おそらく地球の中のBKCとしてこれからの30年はさらにプレゼンスを確立していくのではないか」と感想を述べたのち、卒業生として教職員の一員として、これからの展開にも注視しながら助力したいと話がありました。
最後に伊坂副学長から30年の感謝の言葉が述べられ、「今後は、つながりを広めるとともに深めながら、学術研究の豊かさ、多様性を大切にして、より多くの方を巻き込みながら、BKCをさらに発展させていきましょう。これから1年間、みなさんと一緒に一体感を持ち、次の30年を見据えて進めてまいりましょう」と述べて、本シンポジウムは閉幕しました。