国立環境研究所、京都大学、立命館大学の研究チームは、気候モデルによる気候変動予測データを解析し、祖父母世代が経験しないような暑い日および大雨(1960~2040年で最大の日最高気温および日降水量を超えるもの)をその孫世代が生涯(2020~2100年)で経験する回数について推計し、排出シナリオ別・地域別にその比較を行いました。気候変動の緩和がうまく進まないSSP5-8.5シナリオでは、熱帯の一部地域で祖父母世代が生涯に経験したことのないような暑い日を孫世代が一生涯に 1000回以上(日本では400回程度)、大雨の日を5回以上(日本では3回程度)、それぞれ経験しうることが示されました。さらに現状の一人当たりGDPや一人当たりCO2排出量と極端気象現象の経験回数の対比を行い、特に現状の一人当たりGDPや一人当たりCO2排出量が小さな国々で、SSP5-8.5下で高温・大雨をより多く経験する傾向があることを示しました。これは、気候影響への適応力の欠如の点からも、あるいはこれまでの気候変化への寄与・責任の小ささの点からも、高温・大雨に曝される気候影響が不公平性をより強化するものであることを示しています。一方で、パリ協定の2℃目標を実現できた場合(SSP1-2.6)、孫世代が直面する極端気象現象(世代間公平性の改善)だけでなく、国間の不公平性の強化の軽減(地域間公平性の改善)も併せて期待できることを示しました。
本研究の成果は、2021年6月1日付で学術誌「Environmental Research Communications」に掲載されました。
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