京都大学大学院工学研究科の藤森准教授、立命館大学の長谷川准教授、農研機構の櫻井上級研究員、国立環境研究所の高橋副領域長、肱岡副センター長、増井室長の共同研究チームは気候変動によって極端な気象現象が増加し、世界全体の将来飢餓リスクがどの程度増えるのか、またそれに備えるには食料備蓄がどの程度追加で必要になるかを明らかにし、この度Nature FoodのArticleとして掲載されることになりました。
気候変動は、極端な気象現象の頻度、強度、および空間的広がりを増大させると予想され、将来の食料生産にとって重要な懸念事項となっています。しかし、これまでの研究では食料安全保障は確率的に表現した極端現象を対象とはせずに、平均的な気候変動下の想定で分析されてきました。今回研究グループは作物モデルと将来の気候の不確実性を考慮に入れて、極端な気象現象が将来の食料安全保障に与える影響を推定しました。その結果100年に1回程度しか起こらない稀な不作について解析すると、世界全体の飢餓リスクは、2050年において平均的な気候状態と比べて温暖化対策なしケース、温暖化対策を最大限行い全球平均気温を2℃以下に抑えたケースそれぞれで20-36%、11-33%程度増加する可能性があることがわかりました。南アジアなどの所得が低く、気候変化に脆弱な地域では、上記のような影響に備えるために必要な食料備蓄量は、現在の食料備蓄の3倍にも上ります。本研究は今後の温室効果ガス削減の重要性を再確認するとともに、温暖化してしまった時に備える適応策の重要性も示しています。本研究成果は、2021年8月9日(現地時間)に、国際学術誌「Nature Food」のオンライン版に掲載されます。
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