食でいろいろな人を幸せに~代替肉で「おいしくてサステナブル」を追究する~
環境負荷の削減や食糧危機の解決に効果があり、健康にも良いとされる“代替肉”。中でも大豆を原料にした代替肉を普及させる活動をしているのが「WITH US コネクト」の菅原龍佑さん(経営学部2回生)と大西美羽那さん(総合心理学部2回生)だ。ハンバーグの取り扱い、補給食の商品開発、飲食事業者の集客支援、学校講演やイベント企画など、代替肉とサステナブルを軸にさまざまな活動を行っている。「食べることを通じて、多くの人に幸せになってほしい」と話す2人に、事業にかける思いを聞いた。
心に刺さった代替肉の存在
2人が立命館宇治高校の同級生と共に活動を始めたのは、高校3年生の春。菅原さん、大西さん共に「食は幸せにつながるもの」という思いを持っていた。
「幸せの象徴は、母の作ったお弁当に入れてくれたハート型の卵焼き。食べる時とてもうれしい気持ちになりました。“食”には作る人や食べる人の思いや愛が宿っていると考えています」と話すのは菅原さん。大西さんも「食べることが昔から大好きです。“食”はどんなときも幸せを運ぶものだと思います」と言う。
“食”を大切にする2人が代替肉と出会ったのは、高校の授業がきっかけだった。「環境問題などの社会課題解決にも興味があったので、『これだ!』と代替肉の存在が心に深く刺さったんです」と振り返るのは菅原さん。すぐに菅原さんは、代替肉を扱う飲食店に食べに行った。
菅原さんが大西さんを誘ったのには理由があった。「高校2年生の時、課外授業の一環で、大西さんと一緒にある起業家の講演会に参加したんです。社会にイノベーションを起こすという信念を強く持ち、面白い事業を手掛けているその方の話を聞いて、自分も社会課題解決の手段として起業したくなりました。また、当時はSDGsの学生団体をしていましたが、真に持続可能にするには三方よしの事業化をする必要があると痛感しました。だから同じ講演を聞いていた大西さんと、代替肉の可能性を共有したくなったんです」。
一方の大西さんも「中学時代あこがれていた先輩の影響で、以前から起業って楽しそうだなと思っていました。自分の好きなメンバーと好きなことをできるところがいいですね。菅原さんから代替肉をすすめられて、それを事業にしたら面白いなと感じました」と話す。
「おいしい」がモチベーションに
そこから彼らは、代替肉を取り扱う会社をリサーチし、まずは校内で代替肉を広める取り組みを始める。文化祭で代替肉のハンバーガーを、食堂では代替肉を使ったどんぶりのメニューを販売した。「予想以上に食べたみんなが喜んでくれて。そのことが自信やモチベーションになり、『どんどんやってみよう』という気持ちにつながりました」と2人は話す。その後は、代替肉のビジネスマッチングを行うため、代替肉を作るメーカーと飲食店をつなぐために試食会を開催したり、飲食店への営業活動をしたりするなど、本格的に取り組み始めた。
2人とも同じ立命館大学に入学した後は、未来人財育成奨励金を活用し、仕入れた代替肉を使用した料理をイベントで販売。飲食店や一般社団法人などの支援もあり、ハラミ串、ソーセージ、餃子など代替肉のさまざまなメニューを開発し、多くの人にアピールした。
さまざまな人の協力で、事業化へ
こうした活動を積み重ね、2024年1月には「WITH US コネクト」として事業化。菅原さんが代表、大西さんが副代表を務めている。「開業届の提出を機に、事業としてもっと攻めていこうと考え、美味しさを最優先にしたインターネット通販のサイトを立ち上げました。取り扱っているのは大豆ミートでできた『罪なきハンバーグ』という商品です。この商品は伊藤ハムが製造しており、今まで食べてきた代替肉メニューの中で一番おいしいんです」と話す菅原さん。ホテルやレストランでしか流通していなかったこの商品を一般家庭に届けられるシステムを整えている。飲食店向けにもこのハンバーグを取り扱い、実際に導入している飲食店もある。
また、代替肉を使った新しい商品を考案中だという。それは、ランナーやアスリート向けに、どこでも美味しく栄養補給ができる「どこでも補給肉」。副代表の大西さんはこう話す。「思いついたきっかけは、ビジネスアイデアのブラッシュアップ支援会に参加したことや、2023年10月に出場した『第20回学生ベンチャーコンテスト2023 Powered by RIMIX -THE FINAL PITCH-』で商品開発プランをプレゼンテーションし、賞を受賞したことでした。そこで出会ったメンターさんたちから、起業のことや商品ブランディングのノウハウを教わっていて、かなり実践的な知識を学べています」。受賞をきっかけに、関係会社から協力を得て、2024年6月からクラウドファンディングに挑戦し、テスト販売を開始している。
「食の幸せ」追求の先にある持続可能性
さらに今後は経験を生かして、食とサステナブルを掛け合わせたイベントの企画や企業のサスティナビリティ推進の支援なども進めていくそうだ。これからのビジョンについて、菅原さんはこう語る。「事業化したことで、よりしっかりマネタイズすることを考えたいとも思いますが、何よりも理念である『100年後も"住める地球"と"食の幸せ"を残す』という思いを大切に活動したいです」。大西さんもこう話す。「私たちの強みは、押し付けじゃないサスティナビリティを推進していけるところです。それは何よりも、“食の幸せ=おいしさ”を大切にしているから。その先に、代替肉が食べた人だけでなく生産者や途上国の人など、いろいろな人の幸せにつながると考えています。もっともっとたくさんの人を幸せにするために、代替肉を広めていきたいです」。持続可能な代替肉が当たり前にある世界を目指して、彼らの挑戦はこれからも続いていく。