国際学術誌に政策科学部卒業生の研究成果が掲載 昆虫食を若い世代に再び受け入れられる未来へ ~持続可能な食生活の推進に向けた新たな研究~
HUANG Shuoさん(政策科学部上原拓郎ゼミ所属/2024年9月卒業)の研究成果が国際学術誌「 Food Quality and Preference」に掲載されました。HUANG Shuoさんは3回生の時にも国際学術誌に掲載されており、学部在籍中の研究内容としては今回で2度目の掲載となりました。
HUANG Shuoさんは、持続可能な社会を目指すためには、環境に優しい食生活がますます重要になっていくと考えました。そこで、昆虫食という、かつて日本でも親しまれていた食文化に注目し、若い世代に再び受け入れてもらうための方法をテーマに研究しています。将来的には、食糧問題の解決や環境負荷の低減にもつながること、昆虫食という新しい選択肢を通じて、持続可能な食生活に一歩近づくことを目指しています。
研究の内容
HUANG Shuoさんは、日本の若い世代(大学生)が昆虫食についてどう考えているかを調べ、その消費意欲に影響を与える心理的な要因を分析しました。調査の結果、昆虫食は日本の若い世代にとってなかなか受け入れがたい食品であることがわかりました。参加者の多く(84.1%)は昆虫食を試したことがなく、将来食べてみたいと考えている人は22.0%にとどまりました。昆虫への嫌悪感や、味や見た目への抵抗感が、若い世代が昆虫食を受け入れにくい理由になっていました。消費の際に特に重要視されるのは「食品の安全性」「味」「食品中の昆虫が分かるかどうか」で、価格や入手のしやすさはあまり重視されていませんでした。特に「味」や「見た目にどれだけ昆虫が分かるか」という点が重視されており、これは昆虫食に対して「楽しさ」を求める傾向があることを示しています。一方で、栄養価や環境への配慮は、消費を決める強い動機とはなっていませんでした。また、友人や家族、有名人や専門家からの支持があると、昆虫食を試してみたいと思う気持ちが高まることもわかりました。したがって、有名人や専門家による推奨や積極的な情報発信は、昆虫食の普及に役立つ可能性があります。これらの知見は、昆虫食を広めるためのマーケティングや教育活動に活用できると考えられます。
HUANG Shuoさんからのコメント
昆虫食市場の拡大は、昆虫を食用として消費する文化が新たに始まった西洋諸国だけでなく、長い昆虫食文化を持つ地域の消費でも注目すべきです。伝統的な食習慣の影響から、昆虫を食用として消費する認識には世代間の違いがあり、昆虫食文化を持つ地域の若い消費者にとって昆虫が新しい食品として認識されています。日本の若い消費者の昆虫食に対する見解と消費の心理的決定要因を探ることで、若い世代の昆虫食の伝統を復活させるための重要な洞察を提供し、代替タンパク質や持続可能な食生活の推進につながる研究と考えています。
論文掲載
掲載誌名:国際学術誌「Food Quality and Preference」
論文名:Reviving the entomophagy tradition among the younger generation: An application of the theory of planned behavior
リンク:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0950329324002581?via%3Dihub#f0030