12月5日(木)、立命館大学国際平和ミュージアムにて「『絵は読むもの?』‐無言館共同館主・内田也哉子さんとの対話型鑑賞会」を開催。君島東彦・国際平和ミュージアム館長や集まった約100人の学生らとともにファシリテーターの内田也哉子・共同館主は、予め選定した無言館の絵画5点を対話形式で鑑賞しました。

 国際平和ミュージアムは、1999年から戦没画学生慰霊美術館・無言館との連携関係を築き、2005年に館内に無言館京都館「いのちの画室(アトリエ)」を開室。2024年6月、立命館と無言館は世界と日本の平和的・民主的・持続的発展に貢献すべく連携を強化し、文筆家の内田也哉子氏を無言館の共同館主に迎えました。
 そして今回、その教育・研究連携活動の一環として、内田也哉子・共同館主をファシリテーターとした対話型鑑賞会が実現しました。

詩を朗読する内田也哉子・共同館主
詩を朗読する内田也哉子・共同館主
君島東彦・国際平和ミュージアム館長
君島東彦・国際平和ミュージアム館長

 冒頭、内田也哉子・共同館主から、「作品を純粋にアートとして愛でる側面」、「戦没画学生の絵画を通じて負の歴史・人間社会を振り返る側面」、無言館はその共存しにくい両面を備えた美術館であると説明がありました。そして「どういった戦没画学生が描いた作品なのかを伏せて、まず純粋に絵画と向き合い、みなさんとのダイヤログを始めたい」と語りました。
 また11月に他界し、生前交流のあった谷川俊太郎氏から掛けられた言葉「僕はもともと『言葉』を信じていなかった。現代は、『言葉』に頼りすぎているのではないか」を紹介。「谷川さんは言葉で説明できなくてもいい。何かを感じることこそが大事だと伝えたかったのだと思う」と回顧し、谷川俊太郎氏の「生きる」「そのあと」を朗読。そこから、絵画を通じた対話が始まりました。

 太田章「妹・和子の像」、日高安典「裸婦」、石井正夫「模型建艦」、伊澤洋「家族」、中村萬平「霜子」の5点を鑑賞。一つひとつ、丁寧に絵画と向き合い、内田也哉子・共同館主と参加者との対話が紡がれていきました。それは、まるで5つの物語を作っているようでもあり、また同時に読んでいるようでもありました。

 最後に内田也哉子・共同館主は、「『言葉』にして安心してしまうのではなく、もっと自分の感性にゆだねていい。名もなき人の絵画でも、これだけ私たちの心に届く。私たちの感性を柔らかくし、解放できるのは、アートだと思う」と語りかけ、物語は幕を閉じました。

 参加した藤永凜さん(国際関係学部・4回生)は、「振り返ると、今まで美術館では説明文と絵画をただ眺めていただけだったのかもしれません。今回、『何を感じるのか』という視点、そして自らの感性で作品と向き合い、読んでいくことの大切さを学びました」と話しました。
 今回の鑑賞会を通じて、参加者一人一人の心に、その人だけの物語が残ったに違いありません。

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