立命館とJAXAが連携協定を締結:アルテミス計画における有人与圧ローバーの研究開発、月面探査の検討・普及に向けて、共に取り組む
学校法人立命館は、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)の有人宇宙技術部門と、有人与圧ローバーの研究開発及び月面探査の検討・普及に関する連携協定を、2025年3月27日に締結いたしました。本協定に基づき、両者は共同で有人与圧ローバーの探査性能向上を目指すとともに、月面探査の新たな可能性を広げるために協力してまいります。
昨年4月に日米間において、アルテミス計画における「与圧ローバを使用した月面探査に関するアメリカ合衆国航空宇宙局と文部科学省の間の実施取決め」が署名されました。本実施取決めでは日本は有人与圧ローバーの提供・運用の役割を担い、それに向けた研究開発がJAXAにおいて行われています。有人与圧ローバーは、宇宙服無しで居住及び移動ができる、世界初・唯一の月面走行システムで、今後の月面探査において人類の活動領域を大幅に拡大することが期待されています。
このたびの協定により、立命館は、月面の地盤特性や低重力環境下でのテラメカニクス(土と車輪とのインタラクティブなダイナミクス)に関する知見を生かし、JAXAの有人与圧ローバーの探査性能向上に貢献します。また、立命館が有するマルチバンド分光計等の観測装置に関する開発・運用知識も活用し、有人与圧ローバーの探査性能向上に貢献します。一方、JAXAからは、立命館の研究活動に必要な技術情報やデータが提供され、共同で探査性能の向上を図ります。両者は、月面探査の実現に向けた協力を深め、技術開発のみならず、月面探査に係る研究活動の普及にも寄与していきます。
この協定を契機に、月面探査をはじめとする宇宙活動における新たな技術革新を推進し、両者の協力が、月面探査や他の宇宙ミッションにおける技術的な課題解決に繋がるよう、取り組んでまいります。
佐伯和人 立命館大学宇宙地球探査研究センター(ESEC) センター長のコメント
与圧ローバーは、移動手段であるだけでなく、宇宙飛行士の居住空間として機能し、さらに飛行士不在時には無人探査車としても活用できるという多機能かつ柔軟性に富んだシステムです。このシステムの開発・運用には、さまざまな技術革新が不可欠であり、それらの技術は今後の月・火星探査や基地建設にも必須な国際的宇宙標準技術として確立されていくことでしょう。この重要なプロジェクトに貢献する機会をいただいたことは、大きな誇りであり、また挑戦しがいのある使命と感じています。ESECの理学と工学の枠を超えた総合力を生かし、全力で貢献する所存です。
小林泰三 立命館大学ESEC副センター長のコメント
JAXA有人与圧ローバーエンジニアリングセンターとの連携を通じて月面探査・月面開発の発展に貢献できることを光栄に思います。整備された道路を走行する一般的な自動車とは異なり、未踏の不整地を走行する与圧ローバーには、スタックを回避し、軟弱な砂質地盤でも確実に走破できる高い走行性能が求められます。これまでに培ってきた月面の地盤工学・テラメカニクスの知見をはじめ、ESECの総合力を生かして与圧ローバーの設計・運用に貢献してまいります。
筒井史哉 JAXA有人与圧ローバーエンジニアリングセンター(PREC)センター長のコメント
有人与圧ローバーは、世界初の移動型月面居住インフラであり、日本にとって初めての独立型有人宇宙船となります。技術的なハードルが非常に高い開発になると考えており、このたび立命館大学宇宙地球探査研究センターの方々から技術的に多くの知見や助言をいただける関係を持てたことを心強く思っております。また、この連携により、開発成果や得られた知見・経験を、将来の有人宇宙開発を志す、より多くの方々に繋げていく機会が得られることを楽しみにしています。