2017.09.08

種を育てる ―定籐先生の集中講義―

Hitomiです。
今週、月曜日から木曜日にかけて生理学研究所の定藤規弘先生をお招きし、大学院生対象の集中講義が行われました。
定籐先生は脳科学研究の第一人者であり、fMRIという機械を使って人間の高次な脳機能を解明する研究をしておられます。



以前の記事でもちらっと書きましたが私もfMRIに関する研究に興味があったので、ちゃっかり院生さん達に交じって講義を聴講させていただきました。

今回の講義では、fMRIの仕組みについてご説明いただいた後、模倣に始まり共同注意、自己/他者の識別、メンタライジング、語用論(皮肉や比喩)、向社会的行動など様々なヒトの社会能力に関して、脳科学の観点から現在明らかになっていることをご紹介していただきました。

fMRIの仕組みについては、ある程度知っていることを前提として進んだので、本当に事前の勉強会に出ておいてよかったです…!勉強会を開いてくださった【敦】先生とK原先生、メンバーの皆さんに感謝です…
※勉強会ではこちらの本を分担して読んだのですが、定籐先生も教科書としてよい本だとおしゃっていましたよ。
福山秀直監訳(2016) fMRI 原理と実践,メディカル・サイエンス・インターナショナル,ISBN: 978-4-89592-854-0

門外漢の私でも大変分かりやすい説明をしていただき、4日間余すところなく面白く感じました。

普段あまり触れない内容としては点字の研究がとても興味深く、人間の脳が自分の身体状況に合わせて思った以上に適応していることが分かって驚きでした。
自分の関心に近いところで言えば、sharing(共有)に関する話が面白く、グループ内での一体感や規範、価値観、チームワーク…といった集合的な信念の形成と関係しそうだなぁと思いながら夢中で聞き入っておりました。

また、研究の内容ももちろんなのですが、ご紹介いただいた研究一つ一つの実験デザインの精緻さ(いかにうまく自分の見たい影響を測定できるようにデザインするのか、という意味で)は、本当に見習いたいと思いました。学生時代から教員や先輩達に「実験の結果は、データを取る前には決まっている。(事前にいかによく考えて、デザインを組んだかで決まる)」と言われてきましたが、改めてそうだということを実感しました。


↑もはや院生・教員関係なしに質問&ディスカッション

さらに、アクティブ・ラーニングとしてオーディエンスひとりひとりの研究の話も聞いていただきました。私も恥ずかしながら色々と相談させていただきましたが、とても真剣に話を聞いてくださり、こちらが1話したことに対して10以上の情報を返していただくような状況で…「集中講義来てよかった…」と静かに目を閉じて天を仰ぐ気持ちです。

その中で、研究を“作物を育てること”に例えておられたのが印象的でした。
研究のアイデアは「種」であり、たくさんの種の中からよく育つものを見つけて世話をしていく、すなわちたくさんのアイデアの中から、実証されるものを見つけ出し、言語化(論文化)して世に出すことが研究であるということです。(間違ってたらすみません)
そのためには、一つのアイデアに固執しすぎないようにすること、アイデアが埋没して忘れ去られないように、自分の考えを言語化してノートに記録すること、それを定期的に見返して、考えなおしたり整理したりすることなどが有効であると教えていただきました。

ちなみに、私が院生時代に力づけられた言葉に「涙と共に種を蒔く人は喜びの歌と共に刈り入れる。」というものがあります。
研究に行き詰まって苦しい時もありますが、それを乗り越えて大きな花を咲かせられるように頑張っていきたいです。
(意外と研究アイデアを出してあーだこーだと議論している時が一番楽しいですけどね)

定籐先生、本当にありがとうございました!
また、アレンジしてくださった【敦】先生にもお礼申し上げます。

Hitomi