[ 2012年06月 ] の記事一覧

2012.06.30

理論と実践

今日も授業に関するトピックです。スポーツ健康科学部で現在担当をしている「エクササイズプログラミング論」という授業を以前に紹介しました。私はスポ健では「トレーニング科学」や「スポーツトレーニング論」という授業も担当しているのですが、この授業はこれらの科目とは異なり、トレーニング科学の知識や理論をもとに実際にトレーニングプログラムを作成するという実践的な内容です。


そもそも、スポーツ健康科学という学問自体が応用領域で、その中でも私が関わるトレーニング科学はきわめて実践的な分野です。したがって、知識だけでなくて、「実践する」というプロセスが必要になります。ただ難しいことに、「実践する」ためには、確かな理論と知識を身につけることが求められます。


さて、
「エクササイズプログラミング論」の授業も残りわずかです。これからは「実践する」点を強調し、授業内でどんどんトレーニングプログラムを作成してもらいます。また、それと併せて、まさに今、現場でストレングスコーチやコンディショニングコーチとして体力トレーニングの計画をたてていらっしゃる方々から生の情報を提供していただければと考えています。このことに関して1つ残念だったのは、プロ野球の某球団でストレングスコーチとして選手の指導にあたっていらっしゃった方にお話を依頼し、授業の主旨にもご賛同いただいたのですが、今年からメジャーリーグで勝負をしているダルビッシュ投手のサポートとしてアメリカに滞在しておられるとのことでした。


アメリカに移り明らかに身体も大きくなったダルビッシュ投手、どのようなトレーニングを取り入れているのか・・・、シーズン中のウエイトトレーニングの取り入れ方は・・・など非常に興味のあるところです。シーズンが終わり帰国された後に、授業とは別の形でお越しいただき、お話を伺う機会をセッティングしたいと思います。その時にはごのブログ内でアナウンスしますので、ぜひご参加下さい。


GOTO

2012.06.29

亀井君学会デビュー!

 前回ご案内しましたように、エポック立命を会場に第40回日本バイオフィードバック学会学術総会(総会会長荻原情報理工学部教授)が開催されました。今日唱われている学際的、異分野融合の典型的な学会で、工学、医学、心理学部門から成り立っています。バイオ=生体(信号)をフィードバック=帰還することにより、セルフコントロール(自己調節)能力を高めることを意味しますが、目的は心身の健康であり、スポーツにおいては自身の持っている能力を最高度に発揮するための手段ともなっております。今回亀井君は、「調子の良さに関する精神生理学的研究」を発表しました。選手の報告する調子の良し悪しの客観的根拠を脳波などの生体情報から探ってみようといったかなり野心的な研究であり、会場からも今後の研究の展開に期待する意見もありました。筆者は「スポーツ健康科学とバイオフィードバック」といったテーマで50分(資格認定の単位)ほど話をしました。

 また、2日目の特別講演では「未来を拓くヘルスイノベーション」について牧川方昭教授(理工学部ロボテイクス学科・研究部長)から「我が国の科学技術は間違いなく世界のフロントランナーの位置にあり,フロントランナーになった時点から企業の悩みは深い."もの"を売ろうにも,消費者は既に豊かになり,欲しいものがない.そのためか,"人類の最大の関心事"である健康・医療・福祉の分野に進出しようとする企業からの相談は非常に多い・・・・ライフサイエンスの成果を活かして製品を差別化・・・・」との現状分析とこれ

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からの在り方についての提言がありました。(老ブロガー・ハル)
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2012.06.28

エコではないスポーツの話 その2

Hamaです。

先週に引き続き、トライアスロンのエネルギー利用についてお話します。


先週言い忘れていたのですが、トライアスロンがどれだけエネルギーの無駄使いをしているのか示していませんでした。

フルトライアスロンではなんと、1回のレースで8,000kcalのエネルギーを消費しています!!

 

では、まずその基礎的な知識の習得から始めましょう。

「なぜトライアスロンの選手が、10時間以上も運動を続けられるのでしょうか?」

その答えは・・・

 

「有酸素代謝系の優先的な利用と脂質代謝の亢進、それに伴う糖質(グリコーゲン)の節約」に集約されます。

この点に関して、良くトレーニングされた持久競技選手においては代謝面での様々な改善が起こっています。

それは、心拍出量や筋血流量の増加、筋内の毛細血管の増加、ミトコンドリアや酸化酵素活性の増加などによる有酸素機能の向上、体内グリコーゲン蓄積量の増加、筋内の脂質代謝酵素活性の上昇による運動時の脂質代謝能力の向上などが起こっているのです。

ちょっと難しい話になってしまいましたが。。。

 

このような体の適応があるおかげで、トライアスロンの選手は比較的強度の高い運動を長時間にわたって続けることができるのです。

写真はうちの研究室の学生です。

現在2名がトライアスロン競技に参加しています。

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2012.06.27

平和ミュージアム見学

こんにちは。ma34です。

今日は基礎演習のクラスで、

衣笠キャンパスにある国際平和ミュージアム見学を行いました。

Aクラスでも何名か、すでに中高生のときに訪れたことがあるようでしたが、

大学生の今、感じられること、そして行動に結び付けられることがあるのではないかと

今日のこの日を設定しました。

 

 

はじめに15分ほど、戦争を体験されたボランティアスタッフの方から

実体験をお話いただきました。

スポーツ健康科学部の学生だということもあって、

体を鍛えることやスポーツが、戦争とどのようなつながりがあるのかということを

話して頂きました。

 

甲子園の試合中に、召集令状を受け取った観客の方を

甲子園全体で拍手で送り出すエピソードや、

「戦争で立派に死んで来るために体を鍛えたのだ」という言葉は

私の胸にも突き刺さりました。

 

展示では、実際に当時徴収された兵隊が身につけ、移動していた荷物(25キロほど)を

持ってみたり、いろいろな映像や展示品を見て回りました。

ボランティアスタッフさんが丁寧に解説してくださったので、

ただ見るよりも、いろいろと学べたことと思います。

 

私も改めて、色々と学ぶことができました。

なかでも、2階の展示室では、立命館大学の学生スタッフさんが説明をしてくださりました。

学生の今の目線で語られる話、そしてその伝え方のうまさに

感心しきりでした。

 

来週、Aクラスは一人ひとり今日の感想を発表する機会を設定しています。

それぞれがどんなことを感じたのか、みんなと共有できるのを楽しみにしています。

 

ma34

2012.06.26

大学の前期の講義

そろそろ大学の前期の講義も終わりつつあります。
ほぼ3分の2が終わり、後4回を残すところまできました。

さて、大学の講義が良く分からない人もいると思いますので、
その特徴を今回は伝えようと思います。

まず、大学の講義は、90分で、回数が15回です。
これ以外に定期試験が入ったりします。

この学ぶ時間は、文部科学省で定めている大学設置基準、で定められていて、
大学はそれに従わなければなりません。
単位で大学の学習は計られるのですが、
その単位の基として、最低勉強すべき時間が定められいている、
ということです。




その時間の計算は、けっこう細かいのは、ほとんどの人が知らないと思います。

1単位当たりの予復習の時間も定められていますし、
どんな勉強内容に単位を出せるのかも書かれています。

そして高校までとの大きな違いは、
日本全体で使われるテキストや、授業内容で何を学ぶのか、が
定められていない、ということです。

高校までは、学習指導要領で内容などが定められていますが、
大学は違います。
つまり、大学は高校までの勉強の内容を受けて、
もっと考える力を身につけるということです。
覚えるだけでなく、考える力、表現する力を、
大学での学びでは、自分で考えて身につけていく必要があります。

ということで、大学の講義の概要でした。

PS:さて、大学での学びを書いたのですが、今の学生のどれぐらいがわかっているかは。。。
謎です。。。

2012.06.25

脳を鍛えるには運動しかない

20120625-1.jpg上記のタイトルは、ハーバード大学の先生、ジョン・レイティ先生の著書の日本語訳のタイトルです。先週の水曜日に、インテグレーションコアのアカデミックラウンジで、レイティ先生の講演を聴く機会がありました。

 

学校で、定期的な運動を早朝に行ったところ、肥満児童が激減しました。さらには、授業前の早朝の時間に、定期的な運動を行うことで、学業成績が高まりました。イリノイの高校では、世界の数学オリンピックで好成績を収めるまでになりました。

 

運動すると脳内に、BDNF(脳由来神経栄養因子)が盛んに分泌されるようになります。このBNDFには、運動がもっとも効果的なようで、このBNDFの分泌促進が脳の発達を促すといわれています。

 

もちろん、運動により脳を含めた全身が活性化することで、心身が活発に活動する準備を整え、その後の高い集中、意欲につながっているようです。1回生の基礎演習の時には、「チームゼロ」(朝8時から8時半までのトレーニング)があり、授業前にトレーニングの機会があります。その効果を実践で確かめて、継続して欲しいですね。

 

20120625-2.jpg<<今週のちょっと、もっと、ほっとな話>>

スポーツバイオメカニクス論の補講に、石川昌紀先生(大阪体育大学)をゲストスピーカーとしてお招きしました。凄く優秀なバイオメカニクス研究者です。ケニア選手が中長距離で強い秘密は?を解明するプロジェクトにも携わっています。そのプロジェクト内容もお話ししてもらいました。学生からも活発な質問があり、興味深い内容で密度の濃い講義でした。

 

【忠】

 

 

2012.06.24

高校訪問

先週に引き続き、高大連携推進の話題です。

学部発足以来6月中旬には、高校訪問を行います。静岡、北陸地方から九州方面まで、課外活動が活発でかつある程度以上の進学実績を示している公立高校を中心に、約120校余りを対象にしています。教職員一人ひとりが手分けして複数校を受け持ち、進路指導部(課)や保健体育の先生方にアポを取り、2013年度版大学ガイド、入試ガイド、学部パンフレット等の仕上がりを持参し、説明するのが訪問の目的です。

 

 写真は、その時にもっていく冊子、パンフの一部です。中を開いて、学部で学ぶ内容・カリキュラムやどのような人材を育てたいのかを話し、入試類型や方式、生徒に準備してもらう方向などを提案します。立命館大学は「私立型3教科独自入試」をメインにしますが、スポーツ健康科学部が文系、理系のどちらからも来て欲しいと真剣に考えていることを、私は特に強調します。やはり文理総合(融合)の学びに対するレディネスは、「5教科5科目以上」の一定水準を保ったバランス型が必要だと考えるからです。

 

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大学教育は、入り口-成長プロセス-出口の比較的長いスパンでとらえられます。大学の教職員にとっては、入り口=入試と捉えられがちですが、受験する人にとっては入り口にさしかかる前に随分と長い道のりといくつかの関門をくぐりぬけてきています。

最近訪ねた進路指導のベテランの先生は、次のように語っておられました。受験の準備をきちんと行うこと、学部や学科・コースの内容をよく調べ、自分の将来をイメージすることの2つが肝心、これに尽きます。

 ネットを通じた情報はあふれていますが、むしろ情報過多のきらいがあります。担任やクラブ顧問、それに父兄などを交えて十分懇談できた生徒とそうでない生徒との間には歴然とした差違が結果的に生まれてしまいます。そうでないことを目指して、いつも仕事をしているのですが・・・・・。

 

そのような話を聞けば、私たち大学の学部の方から「分かり易い」「正確で」かつ「丁寧な」情報が「いつ、いかに、誰に」届けることができているか、を思い起こしてみる重要さを感じます。

入学以後に学生の成長プロセスに操作を加える大きな手段の1つが、カリキュラムの運営です。その運営に当たる教職員が、入り口以前の「見えない葛藤」をくぐり抜ける受験生と直接対峙する高校の先生方を訪問し、ご意見を聴かせていただくことは、「受験者の確保」以上の意義があると、私は感じます。

入ってきた学生は、入試の合格点をクリアしただけではなく、それ以前の多くの人々との交流から自分の将来を何らかイメージして入ってきているのだな、と強く思います。それが自由に動き出せれば、「連携」が少しは推進されたのだと胸を張れるというものです。


【善】





2012.06.23

補講日

今日は統一補講日です。6月上旬に学会出張のため休講にしたために、今日は1時間目から補講授業を行っています。ちなみに、月曜日〜金曜日までの授業の補講が統一補講日に集中しますので、学生にとっては幾つかの授業の補講が同じ時限に重複することもあります。そのため、補講日の授業では出席人数が普段よりも大幅に少ないことが特徴です。


そして今日は1時間目からの補講・・・・何人来るだろうかと内心ヒヤヒヤしましたが、出席は12名(受講登録は21名)でした。まずまず・・・といったところでしょうか。


授業は2回生を対象にした【研究入門】でした。この授業は大人数での講義とは異なり、毎回グループワークを行い、【研究】について考えてもらう時間を設けています。今日は、持久性運動時における糖質摂取の有効性や至適なタイミングをテーマとして、今後必要な研究テーマのアイデアを出してもらいました。この授業、3回生からのコース選択やゼミ選択に向けて重要な意味を持っています。前・後期を通して、原則として領域の異なる4人の先生から講義を受けることができますので、授業を通して自分の興味関心を明確にしていって欲しいと願っています。


さて、授業が終わると恒例の作業です。まずは、コミュニケーションペーパー(出席用紙を兼ねた紙)に目を通して学生が何を感じたか、どういった疑問を持っているかを確認します。このコミュニーションペーパーのチェック、授業によっては400枚程度になりますので結構大変です。ただ、おもしろいことに、コメントを読むことでその日の授業への理解度(=私がどれぐらいわかりやすく授業を展開できたか)がよくわかります。今日の授業に関しては・・・・まずまずの出来だったようです。


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枚数が多すぎて授業後に読めない場合には、とりあえずスキャナーを使ってEvernoteに取り込んで、落ち着いてから目を通すようにしています。私はEvernoteのヘビーユーザーだと思いますが、授業の準備や資料の整理をする上で欠かせないツールになっています(写真はこちらも普段の仕事に欠かせないScansnap S1300。これもものすごく便利です)。最近どうも記憶力が落ちて学生を困らせることもありますので、割り切って、大事なメモはEvernoteに覚えてもらっています。Dropboxと併せて非常に便利ですので、学生の皆さんもぜひ積極的に活用して下さい。

さあ、前期の授業もいよいよ終盤です。

GOTO

2012.06.22

バイオフィードバック学会学術総会

 23日・24日にかけて第40回日本バイオフィードバック学会学術総会(総会会長は情報理工学部萩原教授)が、エポック立命21を会場として開催されます。バイオとかフィードバックという言葉は今日では日常でもよく用いられますが、心電図、筋電図、脳波などの生体信号を用いて心身の状態をより望ましい方向に変容させていくセルフ・コントロール(自己調整)技法です。私にとっては、"こころ"と"からだ"の関係―心身相関―を調べる重要なツールになっております。特に、スポーツでは、"あがり"、"集中力"といった 

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"こころ"の在り方が、競技成績に大きな影響を及ぼすことは皆さんが経験済みかと思います。

この学会のおもしろい点は、心理学、医学、工学の学際的領域として発展してきた点であり、近年、文理融合、学際領域、医工連携、統合科学などのキーワードが目立つようになりましたが、本学会はすでに40年の歴史があり、歴史的にも先駆的な役割を果たしてきた(会長談話)と考えています。24日(日)の特別講演では本学理工学部ロボティクス学科の牧川方昭教授による「未来を拓くヘルスイノベーション」というテーマでの講演があります。また、本研究科修士課程2回生の亀井誠生君が「調子の良さに関する精神生理学的研究」の演題で学会デビューします。ご期待ください。

2012.06.21

とってもエコでないスポーツの話

Hamaです。

今週は、先週からのエネルギー代謝の続きとして
エネルギーを大量に無駄使い(!?)するスポーツの話をしましょう。
そうです、「トライアスロン」です!!

トライアスロンは1978年にハワイオアフ島で参加選手14名で行なわれた水泳(3.9 )、自転車(180 )、マラソン(42.195 )3種目の複合持久競技(アイアンマンレース)から始まったと言われています。
ただし、それ以前にアメリカ・サンディエゴで行われていたとも言われていますが。。

日本では1981年の鳥取の皆生での初のレースを契機に現在各地で多数のレースが行なわれており、西暦2000年にはトライアスロンはオリンピック競技に加えられるまでに一般化してきています。

オリンピックで採用される距離は、水泳1.5km、自転車40km、ランニング10kmです。


一般に、骨格筋の収縮に必要な直接的エネルギー源であるATP(ア デノシン三リン酸)は有酸素系と無酸素系により産生されますが、トライアスロン等の持久運動時には有酸素系が主要な役割を担うこととなります。


有酸素系が優先的 に働けば、効率的に筋でのエネルギー産生が行われ、乳酸等の疲労物質の蓄積が生じないために運動は長く持続できます。

また、運動中のエネルギー源としては糖 質と脂質が主体です。脂質がよく使われると、糖質が節約できいます。運動中に糖質が足りなくなると低血糖を起こしますし、危険です。


また、糖質が足りなくなると、ケトン体という燃えかすができて、それまた危険です。

競技中に糖質を節約しておけば、上り坂、追い越しや、ラストスパート時に無酸素的(解糖的)エネルギー産生ができて、有利となります。


次週は、トライアスロン選手のエネルギーの使い方をさらに科学的に分析します。

 

【今週の1 shot!!

紫陽花が綺麗に咲く時期になりましたね!
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