2020.01.04

Happy 2020!

あけましておめでとうございます。
2020年、いよいよ我が国では、「東京オリンピック・パラリンピック競技大会」を迎えます。
昨年は、ラグビーの世界一を決める大会、ワールドカップが全国12会場で開催されました。
来年には、「ワールドマスターズゲームズ関西2021」も予定され、2019年からの3年間は「ゴールデンスポーツイヤーズ」と呼ばれています。

ゴールデンスポーツイヤーズによってもたらされるレガシーとは?という議論がされていますが、
昨年末、フロンティアメイカーに参加された方から「『レガシー』とよく聞くのだが、正直、理解できていないんです」といったご相談を受けました。
スポーツマネジメント領域では、レガシーをまずは直訳である「遺産」として捉え、遺産=長期にわたる影響として理解されています。
それ以外は、レガシーは明確に定義されておらず、また一般的にレガシーを測定する尺度もありません。
ですので、「レガシー」が理解できていないというのは、もしかしたら多くの方が感じられていることなのかもしれません。

レガシーが注目されるようになったきっかけの一つが、国際オリンピック委員会(「IOC」)が定める「オリンピック憲章」です。
オリンピック憲章(「2003年7月14日から有効」版)第1章IOCの使命と役割において、「オリンピック競技大会の有益な遺産(Positive legacy)を、 開催国と開催都市が引き継ぐよう奨励する」といった文面が追記されました。
また、我が国においても、スポーツ庁が2017年4月に「第二期スポーツ基本計画」を策定し、「これからの5年間が、スポーツの価値をさらに高め、日本の未来にレガシー(遺産)を残す」と示されています。

スポーツマネジメント領域では、「レガシー」を捉えるために、それと類似した概念と差別化することで理解が試みられています。
例えば、レバレッジ(Leveraging)、持続可能な発展(Sustainability)、効果(Impact)といった概念です(Preuss, 2015)。
詳しい説明は省きますが、レガシーには、オリンピック憲章に掲げられているような有益(Positive) だけではなく、ネガティブなレガシーもあります。
オリンピックのために建設した施設がその後ほとんど使われない、といったことは代表的な事例です。
その他レガシーを理解するために一般的に使われはじめているのは、「レガシーキューブ」(Preuss, 2007, 2010, 2015)と呼ばれるものです。
レガシーキューブには、有形レガシー/無形レガシー、計画的レガシー/偶発的レガシー、ポジティブなレガシー/ネガティブなレガシーという6面があります。
例えば、メガスポーツイベントとによって旅行者の増加に期待していたものの、騒音や建造物の破損、治安の悪化などによって徐々に観光地としての価値が落ち始めたといったことがあれば、無形の、偶発的なネガティブなレガシーとなります。

(ゆ)20200104-01

2019年に開催されたワールドカップにおいて、地域の人々が試合会場やイベント会場で来日したチームの国歌を歌う姿が見られました。
個人的には、今後も競技を問わず、地域住民や観戦者が対戦相手国の国歌を歌うようなことが根付くことを期待しています。
スポーツのイベントを通じて、地域住民の他国に対する関心が高まり、両国の友好に貢献できれば、これは今回のラグビーワールドカップが残した無形の偶発的なそしてポジティブなレガシーといえるでしょう。

最後に、「遺産」を英訳すと「レガシー」の他に「ヘリテージ(Heritage)」という言葉があります。
レガシーは貨幣的価値を伴う一方で、ヘリテージは金銭的に換算ができない、かけがえのない価値があるものとして捉えられます。
世界遺産(World Heritage)が資産的価値への換算できないといえば、ご理解いただけるでしょうか。
私たちが目指すものは、その時その時精一杯の力を注いで、次の世代へとつなぎ、スポーツによってHeritageを生み出していくことのように思います。


写真はワールドカップの公認球
撮影:フロンティアメイカーの参加者ご提供
写真の無断転載はご遠慮ください。

#本年もどうぞよろしくお願いいたします
#ゴールデンスポーツイヤーズの2年目ですね
#何よりも世界が安全で皆様にとって健やかな一年になりますように