"Business"という言葉を聞いて、みなさん、どのようなことをイメージするでしょうか?
金儲け?商売?仕事?サラリーマン?
私が授業で、学生にそう尋ねれば、おおむねこのような言葉が返ってきます。
この"Business"ってなに?ということに、明快な答えを提示してくれる授業が、"プロスポーツ・ビジネス論"です。
プロスポーツ・ビジネス論は、まだスポーツ健康科学部の授業として開講されていないのですが、経営学部の「特殊講義」という授業で、【Joe】先生とNFL Japanの代表取締役社長である町田さんがタッグを組んで、プロスポーツ・ビジネスについてのお話をされています。
またこの授業は、"世界で最も成功しているスポーツビジネス"といわれるNFLが立命館大学との「協定科目」として開講しているものです。
ちなみに...
NFLの市場規模は、8,000億円といわれています。
Jリーグの市場規模が約10分の1の850億円、日本のプロ野球ですら、1,250億円といわれているわけですから、NFLがいかにすごいかということが、マーケットサイズだけでもおわかりになることでしょう...。
8,000億円?
まぁ、ピンとこないとは思いますが、ユニクロの取引高が約8,500億円ぐらいです。
話を本題に戻しまして...(笑)
昨日は、NFL Japanの町田さんが「スポーツビジネスって、一体、なに?」というお話をされました。
多くの人々が「Businessイコール金儲け」のようなイメージを持ってしまうのは、我々の周りでビジネスをする組織といえば、民間企業のことを思い浮かべてしまうからに他なりません。
周知の通り、民間企業は、「利潤追求をする」ことを一義的な目的としているため、目的を達成するための"手段"であるビジネスのことを、我々は、当然、金儲けの道具と考えてしまいます。したがって、多くの人々が「Businessイコール金儲け」と想像してしまうのも無理はありません。
ただ、ビジネスは、組織の目的を達成するための手段ですから、民間企業だけが手掛けるものでもありません。"Business"という英語を日本語に翻訳すると、"事業"という言葉になりますが、市役所や教育委員会といった行政機関、公立の学校、NPOといった営利を目的としない組織も、実際、ビジネスを行っています。年間事業計画、事業企画書という言葉は、このような組織でも頻繁に用いられます。その様に考えれば、「Businessイコール金儲け」だけではないということが理解できることでしょう...。
そのビジネスについて、町田さんは、「BusinessイコールSolution」という説明をされました。
つまり、企業の商品やサービスは、現在、そして将来の「誰の問題」を、「どの様に解決することができるのか」ということが問われるため、「ビジネスとは、ソリューションである」という論理が成り立つという解説をされました。
また興味深いことに、我々多くの人間がビジネスを進める際には、"How"ということに目を向け、そればかりを考えようとしがちですが、ビジネスをすることにおいて最も重要なことは、"Why"という問いかけに対する答えを見つけること、すなわち、"Why(なぜ?)"を考え、"What(なにを?)"を考え、そして、"How(どのように?)"を考える、それが"Solution(解・解決策)"であると説明されました。
※ 多摩大学で教鞭に立たれており、本学の客員教授で立命館大学スポーツマネジメントスクールを主宰されている広瀬先生も同様のことを、お話しされており、2週間ほど前のブログでも、「Howから考えるのではなく、まずはWhyについて考える」ということをご紹介しました...。
これは、実務に携わっておられた方々の経験知が、ロジックを生み出した典型的な例なのかなぁと...
したがって、スポーツビジネスとは、「スポーツが現在と将来の日本の"何の問題"を、"どのように"に解決できるのかを考えること」であり、スポーツビジネスを学ぶということは、突き詰めると、「人間とは何か」「社会とは何か」を考えることでもあると、町田さんはお話しされました。
NFL Japanの代表である町田さん...実は、早稲田大学時代は、文学部で宗教学を専攻されており、講義中のスライドや、お話に含蓄があるような雰囲気が漂うのは、まさに専攻されていた「宗教学」の影響なのかなぁという感じがしました。
さらにおもしろいことに、学生時代は、映画と音楽に明け暮れていたそうです。映画をみた数も半端ではないらしいのですが、ご自宅にある音楽のアルバムのコレクションは、1万点を超えるそうです...(笑)
しかも...
町田さんは、NFL Japanの代表であるものの、アメリカン・フットボール経験はおろか、散歩以外は、ほとんどスポーツにも携わったことがないということです。町田さんは、スポーツマン同士が、多くの言葉を語らずとも、スポーツ独特の雰囲気や空気、一体感や感動を共有することも重要であるものの、スポーツをビジネスの対象と考える際には、スポーツの持つ価値やスポーツの機能を、主観的に評価するのではなく、客観視することが重要であるともお話しされていました。
「"井の中の蛙..."に陥らないこと、そしてスポーツビジネスを発展させるのは、ビジネスを進める上で書くことができない人・モノ・情報・資金といった"外側の力"であるということを理解することである」...
私自身も大変考えさせられました。
このプロスポーツ・ビジネス論は、マスコミ、メディア関係者、またアメリカでスポーツビジネスに手掛けられる様々な方々がゲストスピーカーとして招かれ、授業が進められます。
私自身、ワクワクしています!また機会があれば、ご報告します...。