[ 2013年01月 ] の記事一覧

2013.01.21

スポーツ井戸端会議

立命館大学にはストレングス&コンディショニングコーチ、アスレティックトレーナーが大学スポーツの競技力向上に貢献してくれています。彼ら・彼女たちの勉強会として、立命館アスレティック研究会が今から5年ほど前に始まり、昨日10回目を迎えました。

 

20130121-1.jpg回数を重ねてきて、学内外の同様な仕事をしている専門家、学生・院生も参加するようになり、スポーツの競技力向上に携わるものたちの井戸端会議というイメージを持って、研究会の名称も、Sports Performance Enhancement Communityと改名しました。

 

昨日の研究会では、基調報告として、昨年のロンドンオリンピックに参加した女子棒高跳の我孫子さん(滋賀レイクスターズ)から、ロンドンオリンピックの報告、筋力強化を担当した湯浅コーチによるトレーニングサポート事例が紹介されました。

 

20130121-2.jpgその後、班に分かれて実践的課題に対するグループディスカッションを行って、スポーツ現場を支えることの理解と情報交換を行っていました。スポーツ健康科学部の学生たちも積極的に議論に参加していて、非常に頼もしく感じました。これからのスポーツの高度化へ、学部での学んだ理論を実践場面でアレンジしながら、選手・コーチに信頼されるサポートができると確信しています。

 

<<今週のちょっと、もっと、ほっとな話>>

先週は、3回生ゼミが最終回でした。一年間の学びを振り返りました。その中で、12名のゼミ生と私を含めて、各個人の良かったところ、改善すべきところをコメントし合いました。私もゼミ生からフィードバックを受け、多くの気づきをもらいました。ゼミ生たちも、お互いのフィードバックを真摯に受け止めており、次へ生かせる良い振り返りができました。

【忠】

 

 

 

2013.01.20

キャンパス禁煙課題を越えて

先週ある日の午前9時前、大駐車場からインテグ・コアに向かう途中、いつも清掃をしてくれているオバちゃんが25センチ四方位のビニール袋を提げているのを、私は見かけました。挨拶がてらに中身を聞いてみると、タバコの吸い殻がびっしり詰まっていました。思わず「これ、何処で?」と尋ねると、建物コラⅠ、コラⅡ、BKCジム、アドセミ、プリズム周辺のポイ捨て(踏み消し)だ、と彼女は教えてくれました。広い範囲ですが、一ヶ所に集められた量を眺めると、その数の多さに驚嘆させられました。

 

20134月からBKC全面禁煙に向けて取り組み中であるのにもかかわらず、この状況で大丈夫なのか、いささか不安に感じるのは私だけではないと思います。キャンパス管理の業務を統括する部局は、健康に関する支援と啓蒙を行う他所の活動と協働し、喫煙可能場所を徐々に減らしています。そして全面禁煙日を漸増させて、「完全」へと慎重にランディングさせるべく取り組みを提案してきています。この歩みは、様々なところに配慮し、十分に意味のある大学らしい取り組みであると、私は評価できると思います。

けれども一方では、冒頭の心配も現実的になってきています。後は、かつての「大学キャンパス周辺への迷惑駐車」問題の場合のように、入学時の「誓約書」提出、違反発覚の場合には学生処分検討、という風に進んでいくしか仕方がないのだろうか、と感じることも最近はしばしばです。先々週の「老ブロガー・ハル先生の記事」と同じ気持ちですが、BKCジムとコラⅡとの間にある憩いの中庭で度々喫煙とポイ捨てを注意してきた経験から、私はそのような感を強めています。

 

喫煙を伴い楽しく談笑しているところに「注意介入」するには「手間・暇かかる」のも事実です。喫煙・ポイ捨てしている人も、一人ひとりは「真面目でおとなしそう」かつ「理性的な」話ができる人の場合が圧倒的に多い、というのも事実です。さらに、一度注意をした後に建物を一周してきたら、その「真面目・おとなしい・素直に注意を受け入れた」と思われた同じ人たちが、足元に踏み消した吸い殻を尻目に新しい煙を燻らせていた、のも事実です。

 

キャンパスを出て街のなかを見渡せば、上記のことと関連する状況に度々出くわします。自動車通勤の途中でのこと、バイクや商用車あるいは工事用車両から煙の出ている吸い殻がポイされるのはよくあることですが、頭文字BやA,V、W,S、Cのような高級外車や国産最上級クラスからも同じようにポイされれば、少し考えてしまいます。「もち物とそれを使う人の品格との関連は、一体どうなっているのだろう」かと。窓ガラスを少し開け、内部の空気が臭わず汚れが残らないように、運転者(多くは中高年者)は慎重に配慮しています。その反面、路上の清掃・始末や後続車の危険・迷惑、それに街中の通行者への危険など、全く予想の範囲外である風に感じさせます。

 

大学キャンパスは社会のなかで空間的に隔離された一定の範囲ですが、その中で営まれる活動内容やその活動主体である学生・院生・教職員は、すぐれて社会からの影響を受けている存在です。禁煙・キャンパス環境づくりに関して、大学内部で大学らしい取り組みをしているにもかかわらず、「街中と同じことが同じ水準で起こっていること」に、私は注目せざるを得ないと思っています。

古いタイプの社会心理学では、個々人が「自己アイデンティティを高めるようにふるまう傾向があること」、「より一層優れた集団に加わろうとする傾向があること」、「参画集団の成績を優秀と知覚・認知する傾向があること」、それに「その集団の助けとなることを行おうとする傾向があること」等々を、社会的アイデンティティの項で教えています。大学がユニバーサル化した段階では、このような牧歌的なことを言っているわけにはいかないのかもしれません。後戻りや進行速度を緩めることは許されませんが、かつての「迷惑駐車問題」と同じレベルには留めたくないと考えて、それぞれの持ち場で運動している人たちは感じておられることでしょう。

今日、自分を中心にして考えている人々が、中心の点や狭い面しか考慮していないことは否めません。同心円的に外へ拡がる幾重もの外層と、逆にできる限り外側から自分自身に辿りきれる「想像力と空間思考力」を磨いていくことも、大学がもっている大きな「教育力」の一つです。その力量を磨かれない、社会からの影響を一方的に持ち込まれた、一時の通過点であると、立命館を参画者自身がとらえてしまうこと、これこそが「禁煙問題」に留まらない、キャンパス環境づくり「運動」が提起している問題だ、と私は思います。

 

【善】

 

 

2013.01.19

定期試験が近づいてきました

本日から大学入試センター試験が始まりました。全国で受験生は約57万人、受験生にとって気が抜けない2日間になります。そういう私も、もう随分前になりますがセンター試験を受けた身です。受験日は大雪で、試験に遅刻しないように相当早めに家を出たことを今でも覚えています。


さて、試験といえば、来週水曜日から後期の定期試験が始まります。後期は、スポ健生に対して【トレーニング科学】という授業を担当しており、来週の水曜日に試験が実施されます。受講生の多くは既に試験勉強を開始しているようで(かなりしっかり勉強しているという噂です)、ここ最近は頻繁に学生が研究室に質問に来ています。用語を暗記するだけでなく、十分に理解をして、自分の言葉で論述できるようにしなさい・・というアドバイスを繰り返していますが、研究室に質問に来る学生から「範囲が広くて試験勉強は大変だけど、勉強が面白いです」という声が聞かれるのは幸いです。


試験まであと数日、最後の追い込みを頑張って欲しいものです。


GOTO

2013.01.18

成人の日に

 今年の成人の日は、雪が激しく降る生憎のお天気(私のいる奈良だけでしょうか)で、折角の晴れの日にと、かわいそうな気にもなりましたが、むしろこれからの長い人生に向け、自覚と覚悟を促す想い出深い日になったのではないかと思います。

成人式は確か奈良時代の1,300年も前から、大人になったことを祝い励ます通過儀礼の一つとして行われてきたと聞いたことがあります。以後、人を頼りとしないで、自ら考え、自ら行い、将来に向かって志を立てることをしっかりと自覚する日であり、責任を持った社会生活を送ることを誓う日であると言われておりますが、四十数年前の我が身を振り返ってみると、"バリケードの中の青春"の真っ直中で、ある意味、時代の波に流された学生生活であったと当時の写真を見ながら反省しています。成人式をむかえた若い人には、意義有る人生を送ることを願っています。(老ブロガー・ハル)

P1000427.JPG

2013.01.17

運動と健康についてのエビデンス(証拠)その2

  Hamaです。

 それでは今回は、ハーバード大学卒業生の「身体活動と疾患予防」に関する
疫学研究を紹介しましょう。

 そもそも疫学研究とは、たくさんの人を集めて、長い間にその人たちの状況を観察して、
どんな環境でいたり、どんな生活をしていると病気が予防できるかを辛抱強く待つ研究です。

 このような研究はとても価値があるのです!
どうしてかと言うと・・・人にタバコを無理やり吸わせて、観察するわけにはいきませんよね。

 話しが飛びましたが、このハーバード大学卒業生の研究は衝撃的です。

 日々歩いてると寿命が延びるのです。

 具体的には、1日1万歩、毎日歩いていると、狭心症や心筋梗塞になる確率が
約3割下がるのです。その結果、寿命が延びることになるようです。

 これは、アメリカ人のデータなので、日本人にそのままあてはまる訳ではないかもしれませんが、
日本人でもあてはまると思います。

 どうですか??運動したくなりましたか??

 来週は、もっと運動したくなる話をしますので、乞うご期待!!

【今週の1 shot !!】
 とある日の散歩道にてパート2
hana.jpg

yoru.jpg






















【Hama】



2013.01.16

最終日

こんにちは。ma34です。

水曜日の担当ということで、4月の最初より、1回生の基礎演習の様子をアップすることが常になっていました。
今日は、いよいよ基礎演習の最終日。
最後はみんな仲良く、(これまで結構真面目に取り組む時間ばかりだったので)
楽しい時間となるような企画を2回生のオリター・AAさんと考えました。
DSCF0500mini.jpg


クラス論集も、AAさんを務めてくれた平井くんをはじめ、オリターのみなさんのお力で、
素敵なものが仕上がりました。今日はすこしパラパラと見ただけでしたので、あとでじっくりとみんなのコメントを読みたいと思います。

後半は、ゲームと創作。班で何を創ったのかは、秘密にしておきます。
 ゲーム(フルーツバスケット)では、真ん中になってしまった人は一回生の振り返りと2回生への抱負を皆の前で言わなくてはいけないというルールにしたこともあり、白熱したものとなりました。でも、みんな1年間の自分を振り返り、自分の成長も受け止められていたので、教員としては聞けてよかったなあと思います。
 創作では・・・、女子はもちろんのこと、男子のグループが創作のセンス・集中力を発揮していたのは新たな驚きでした。何事も、どんな時でも、「全力で」「楽しむ」ことは大切ですね!
 何を創ったのか気になる方は・・・私をはじめ、関係者に聞いてください。

最後に、思いもかけず、素敵なプレゼントを頂きました。2回生のAAさん、オリターさんからと、クラスの皆から花束を頂きました。
もっと授業として充実したものにしなければ、と反省することも多く、けれどもなかなかうまく進められなかったことに悔しさも抱いていましたので、思いがけないプレゼントに驚きました。
ohana mini.jpg
本当にありがとうございました!
ori-ter mini.jpg













来年度、AAさんやオリターさんとして活躍するメンバーもAクラスから出ていくようです。
彼らをはじめ、皆のさらなる飛躍を期待しています!

っと、その前に、みなさん、試験をがんばりましょう!

写真:上はAクラスのみんな、下はオリター・AAのみなさんです。皆さん、ありがとう★

ma34.



2013.01.15

3回生の1月

さて、スポーツ健康科学部も2010年に開設されてから、
3年が過ぎようとしています。
その間に1期生が3回生となりました。

ちょうど3回生は、12月ぐらいから就職活動に入ります。
12月1日が企業説明会の解禁日。

12月~2月ぐらいの間に、企業説明会に行ったり、
エントリーシートを出したりして、就職活動が進んで行きます。

ちょうど昨年から大きく後ろ倒しになって、短期決戦になったので、
今年も同じ傾向です。

新卒一括採用で大きいのは、
その時期に活動をしなければ、二度と機会はやって来ない、
ということです。





どういう事かというと、
エントリーの機会が基本的には1回なので、
それに乗り損ねると。。。ふと気付くとほとんど選べない、
という状況になってしまいます。

つまり、2月ぐらいが最盛期の説明会に、
できる限り多く行く事、が重要になります。

興味のあるなしはありますが、
興味のある会社は名前の知っている会社に限られる、
という傾向がありますので、
名前の知らない会社も行く事が重要になってきます。

そして、働く上では、会社内の人との相性が重要になります。
1回採用されれば、辞めない限り30年ぐらい働きますので、
30年間の最低でも1日の4分の1を過ごす場所の居心地は、
とても大切です。
居心地の悪いところで無理して毎日過ごすのはねぇ。。。

そんなこんなですが、とりあえず、私のゼミ生は、
何でもいいから行かなければ、という気持ちで活動している学生がほとんどなので、
ちょっと安心しています。

でも、どうにかなるかなぁ、という気持ちも若干あったりして。。。

では、また次週。

PS:小さい字コーナーはネタ切れ。
一般公開できないネタばかり(謎

2013.01.14

教員紹介 その13

20130114-1.jpgコンプレッションウエアは、運動中の着用による静脈環流の増加、疲労軽減効果が見込まれてきた。少し発想を変えて、運動中から"運動後"の着用の効果に注目をして研究を進めている【GOTO先生】。激しい筋力トレーニング後にコンプレッションウエアを着用させると上半身、下半身の最大筋力の回復が速やかに生じます。今まで以上にコンプレッションウエアの使い方の幅が広がる結果を得て、次の研究に進んでいます。「研究はこのように、どんどん先へ先へと進んでいくんですよ」と学生に研究深化のプロセスについて分かりやすく解説してもらいました。コンプレッションウエアの研究以外にも、最新の研究トピックス2つを紹介してもらいました。多くのプロジェクトを並列で実施しているパワフルなGOTO先生ですが、語りはソフトで、明快な論理で研究紹介してもらいました。

 

20130114-2.jpg「スポーツ科学は、理論と実践のギャップを埋めるものである、その上で実践を伴って実証し、現場へ還元することがスポーツ科学の真価でもある。」とスポーツ科学の立ち位置を明確に示した【ハル先生】は、豊富なキャリアと教育経験をお持ちで、まさに学部の"知恵袋"で、スポーツ心理学の専門家です。スポーツを充実させるためには「心技体」といわれるように、心の問題は非常に重要です。身心一如といわれるように心理指標、生理指標は関係します。それを利用してパフォーマンスを高める手法として、バイオフィードバックがあります。【ハル先生】はこの分野の第一人者で、学習、スポーツ、社会的場面に応用して研究を進めてこられています。競技スポーツに関しては、体協、日本オリンピック委員会にも関わってこられ、選手のサポートもされてきました。今後、本学のスポーツ選手もその恩恵を大いに受け取ることができるでしょう。

 

<<今週のちょっと、もっと、ほっとな話>>

今日は成人式。人生の中でも大きな節目です。スポーツ健康科学部の2回生を中心に成人式を迎えていることでしょう。節目節目の時に、自らの今後を考え、方向性を見定め、決意を新たにして、進んで欲しいと願っています。

 

【忠】

 

 

 

 

 

2013.01.13

ヒューマニズムについて思う

大阪市立高校バスケ部顧問の体罰を受けた生徒がその翌日に「自ら命を絶った」事件の報道が、先週では一番印象に残りました。同様の指導実践を行うコーチ・指導者の方々や有識者のコメント、生徒・父母・学校関係者達による証言や意見、等々が連日報道されています。

 

それらのコメント内容を見ると、大きく三つに分かれます。1つは、「体罰は禁止されており、子ども・学習者の人権を著しく侵害するものであり、指導・コーチングの有効な手段になるはずもないもの」で、「否定・不要」論とでも言うべき内容です。2つは、「厳しくされたおかげで今日の自分がある、情熱を入れ込むあるいは相手の態度変容を性急に求め過ぎた結果やむなきに至ったもの」だといった、「容認・必要」論とでも言うべきものです。他の三つ目は、「学校名の露出効果を増し、競技界の次代のホープを発掘・育成することに関する結果の実績が求められ、指導者もそれによって評価される「競争事態」に置かれているので、彼らも学校や競技界の被害者」だという、「スポーツ選手育成体制の脆弱」論です。1つ目が表面上は多いようですが、2つ目と三つ目はきちんと系統的に論理内容が明らかにされているとは言えない状況です。

 

スポーツ界、特に学校の運動クラブ(大学では体育会)の暴力容認体質について私が鮮烈な記憶に留めているのは、1965年の東京の大学ワンダーフォーゲル部の「死のしごき」事件です。これは、およそ次のようなことでした。

1965515日から18日まで、東京農業大学のワンゲル部は山梨県へ合宿に行きました。そのハードな日程のもと、それまで登山経験のなかった1年生部員のW君は衰弱しきっていました。それでも頂上への前進強行を求められ、彼は上級生から殴る蹴るの暴行を伴った、指導・援助を受けていました。その状態が3日間ほど続き、やっとのことで同級生に連れ帰られた後彼は死亡しました。当時の朝日新聞の記事では、次のように知らせています。

『練馬署は21日の段階でリンチの線で捜査を進めており、25日には主将のWと副将のF2人を逮捕した。なおも「徹底的に事件は叫明する」という署長の言葉のもと、合宿参加者全員(1年生28名、上級生18名、OB2名)に対し、事情聴取を行い、25日に副将Mと副将T5名を、64日にはOBで監督のIを逮捕した。さらに、このIこそが農大ワンゲル部のトップであり、このリンチ事件の首謀者であったことを明かにした。ある部員は「自分たちも1年のときから同じ訓練を受けてきた」と話したという。』

 

後の裁判において、「閉鎖的な組織の中で、従来の訓練手法や賞罰の与え方等を無批判に受け入れてきたこと」「科学的根拠に基づかない、しかも心身の安全を省みない非人道的な訓練方法」等々について、判決文が厳しく指摘していたことを、私は今でも強く覚えています。

 

後に「教授―学習過程」を研究するようになって勉強したことの1つですが、「動物行動に対する動機づけ理論初期の一番の基本法則」、すなわち「効果の法則」(ソーンダイク)についてもまた、私は上記のこととぼんやり重ね合わせます。

ある行動に対する報酬(快刺激)は、その行動が繰り返される可能性を増す

罰すること(不快・嫌悪)は、その行動が繰り返される可能性を減少させる

これらは、動物行動変容の過程に働く強化の原理です。

 

通常、目標との偏差をゼロにする働きをフィードバックと呼び、それが生じなければ学習は起こらないと考えられます。動物とは異なり、目標自体を自らが徐々に変化させていくところに人間の学習の大きな特徴の1つがあります。指導者が目標を付与し、その変更も指導者が恣意的に行う場面では、その偏差を検知して修正の手立てを図る基準もまた、指導者によって判断されることになります。

目標に至らない部分の隔たりは、「ネガティブ」なものとして次回への入力に反映されます。一方、学習者(特に未習熟な人)は偏差を検出する機能と修正するための有効な手段を十分に構築できていません。畢竟、外見的応答は、「ボーッと、反省心なく、真剣でない」様になることが、しばしばです。

 

お互いの違いを認めることがまず、「人間尊重、人権尊重、」したがって「ヒューマニズム」を大切にすることの基礎であるなら、指導者と学習者とがいかに「目標とフィードバック情報のやり取り」に関して、お互いの相違点について理解しあっていたのか、換言すれば「信頼関係」を築いていたのかが基本線だろうと、私は感じます。

「信頼関係があったならば、体罰も時には有効だ」などとよく言われますが、上の意味での信頼関係があれば、体罰は起こらないあるいは起こさない、とほぼ断言できると私は思います。

 

また、大学や社会人の運動クラブで活躍する選手達に対する調査では、「体罰は有効だと思いますか」という問いに、7割を超える人がイエスあるいは肯定的な意見を述べることがしばしばです。「成功者」に過去を遡っていくら聞いても、「都合のいいことばかりを多少の脚色を加えて想起する」(エピソード記憶)という答えの傾向は、これも変わらないだろうと思われます。逆にスポーツが嫌になったり、うまくなる機会が奪われたりした人々の経験が十分浮き彫りにされている、とは到底思われません。

私が高校生の時代に起こった「死のしごき事件」の時代と冒頭事件が起こった現時点で、スポーツに関する「科学」の進展は目を見張るものがあります。これに対して「人間尊重」の観点はどれほどの進歩を示したのか、と少し愕然となります。この気持ちだけに留まることなく、だからこそ指導者を養成する機関の「ヒューマニズム」が科学とともに問われているのだ、と私は自戒しています。

 

【善】

 

 

2013.01.12

1年間の学びの成果

スポーツ健康科学部では、3回生から【専門演習(ゼミ)】が始まり、各学生はいずれかのゼミに所属することになります。ゼミでの取り組みは様々で、次年度の卒業論文作成に向け徐々に準備を進めていきます。私自身、このゼミは最も楽しみにしている授業の1つでもあります。

photo1.jpg
今週は1年間での活動成果に関し、各ゼミの代表者が7分間でのプレゼンテーションを行いました。意外にも、自分以外のゼ ミの活動状況はよくわからないもの、、多くのゼミが集まり相互に発表をするという試みは大変おもしろかったです。私は木曜日の報告会に出席しまし たが、いずれのゼミの発表も聞き応えがありました。1年間のゼミでの活動の充実ぶりがよく伝わってきましたし、何よりも所属ゼミの活動をアピールする気持ち(所属ゼミ愛?)を感じることができました。

photo2.jpg
今回驚いたのは、学部3回生にも関わらず、何名かの共同で実際に研究を行っているゼミが多かったことで す。もちろん学部生のみで実施するのではなく、指導教員や大学院生による指導・サポートを受けながら実施したものですが、体育・スポーツ健康科学関連の学部を有する他大学でもあまり耳にしたことがありません。私のゼミでも学生の興味に応じて幾つかのグループを設け、各グループで小規模の研究を実施すること を今年度の目標の一つとしてきましたが、この1年間を通して実感したことは「研究を行うことによる教育的効果」です。

そもそも、学部生と大学院生では研究指導や教育に関する方針が必ずしも同じではありません。大学院生は、それぞれの指導教員のもとで研究指導を受けることを目的に入学してきている場合が大半です。したがって、質の高い研究をしっかりと推進させることを一番に重視します。一方、学部生には研究計画書の作成・研究の実施、結果の解析・客観的な考察、プレゼンテーションまでの一連の過程を経験させること自体に大きな意味があり、研究の質自体にはそれほどこだわっていません(あくまでこれは私の考えですが・・)。これら一連のプロセスを自らの力で実施できるスキルを身につけることが、社会人となる上で大きな武器になると考えています。そして、これらのスキルを身につける上で「研究」を行うことがきわめて有効なのです。もちろん、学部で研究に触れることで研究の魅力を感じ、大学院に進学してさら に高度な研究にチャレンジする学生が出てくることも期待しています。4月からはまた新しいゼミ生が入ってきます。次年度のゼミも楽しみです。

GOTO