2019.10.11

ひさびさに言語学の話1

こんにちは、嶋村です。今日は鴨川で書類仕事をしています。ただ天気はあまり良くなく曇っています。まあ大型の台風が近づいているわけですし、仕方ないですね。明日の台風はとても大きくて危険らしいの気をつけたいですね。ちなみに台風が接近しているということで明日の土曜日は授業日だったのですが、休講になりました。


さて、今日からは何回かに渡って言語学の話をしたいと思います。皆さんは項構造って聞いたことがありますか?英語で argument strcuture というんですが、知ってるわけないですよね(笑)。項(argument)とは簡単に言うと主語や目的語のことを指します。英語で関数のことを function と言うのですが、それの引数(要は f(x) の x の部分)を argument と呼びます。僕が研究している自然言語の意味は何回か話したかも知れませんが、文(命題)の意味を真か偽の2値で判断します。これを真理値(truth value)と言うのですが、このような文の意味はその分を構成する要素がどのように合わされるかで決まります。これをフレーゲの構成性の原理(principle of compositionality)と言います。例えば、動詞 kick は主語と目的語をとりますが、ということは主語と目的語をとって命題を返す関数であるいうことができます。John kicked a ball という文で kick の意味は λx.λy kick(x)(y) と書くことができます。ラムダ関数に関しては以前話したかも知れませんが、プログラミング言語などで使われます。すご~く簡単に言うと、要はなんか引数を取ってきてね、ってことです。なので kick は x と y の二つの変数に相当する個体を取って(ラムダ関数は高階になると引数が個体でなくても構いません)、命題を返す関数であるわけで、そうすると全ての他動詞(2項動詞)はこのような関数で表現できます。なので仮に x が目的語で y が主語の変数の場合、John kicked a ball は、ラムダ関数が適用された後、kick(a ball)(John) と書くことができます。これが命題に相当するわけですが、これが現実世界で本当にそうなら、つまりジョンがボールを蹴るなら真、そうでない場合は偽という値が出されるわけです。この辺の作業も解釈関数(interpretation function)というのがやるんですが、これは割愛します。


さて、kick の意味はλx.λy kick(x)(y) となるわけですが、この書き方では kick がその意味上二つの項を取っているということで理解されます。しかし、その見方が間違っているんじゃないかという提案が1990年代の半ば(本当は1980年代の半ばにあったんですが。。。)に提案されました。なぜか?とりあえず、興味のある方はイディオムを考えてみてください。例えば「ゴマをする」という日本語が本当にお料理などでゴマをする場合とイディオム的な「おべっかを使う」的な意味がありますよね。このイディオムの意味は「ゴマ」だけでも「する」だけでも出てこなくて、その二つが合わさって出てきます。さて問題です。主語の名詞と動詞で出来ているようなイディオムってあるでしょうか?気をつけて欲しいのは他動詞でそれを見つけるということです。つまり「X が Y を/に~する」みたいなやつで X が動詞と一緒にイディオムを作る表現です。「ゴマをする」は主語がなんであってもイディオムの解釈に影響はないですよね。「太郎がゴマをする」でも「嶋村先生がゴマをする」でも「おべっかを使う」の解釈に影響はありません。さて、「X が Y を/に~する」のスキーマで X を「ゴマ」のように固定した名詞表現で Y を好きなように変えることができるイディオムを見つけることができますか?ちょっと考えてみてください。


ではまた来週。