2019.11.06
[ research ] の記事一覧
2019.11.01
言語学の話(2回目)
みなさん、こんにちは、嶋村です。今日こそ言語学の続きの話をしたいと思います。さて3週間前のブログの最後に「さて、「X が Y を/に~する」のスキーマで X を(「ゴマをする」の「ゴマ」のように)固定した名詞表現で Y を好きなように変えることができるイディオムを見つけることができますか?ちょっと考えてみてください」と書きました。要は他動詞の主語を固定した名詞表現にして、目的語名詞を固定しないで得られるイディオム表現はありますかって質問です。目的語と動詞から構成されているイディオムはたくさんあります。「墓穴を掘る」は自分の手で自らを破滅させるような行為を行うことを表すし、「目を疑う」は目の前で起こっていることが信じられない時に使いますね。身体の部位を表す名詞は色々な動詞と結びつきイディオムを作ります、「手を焼く」、「頭を捻る」、「足をすくう」、などなど。しかしどれだけ頭を捻っても(笑)、他動詞主語と動詞の関係で特別な(イディオム的)意味が出る表現ってないような気がします。もちろん自動詞ならば「足が出る(予算オーバーって意味ですね)」のような表現はあります。しかし他動詞主語は僕の知る限り動詞のイディオムの解釈に参与しません。これは英語などの他の言語でも当てはまります。ちょっと不思議ですね。なぜでしょう。
前回動詞の意味は、例えば kick ならば形式意味論的に二つ項をとるので λx.λy.kick(x)(y) と書くといいました。x が主語で y が目的語であるとします。そうすると John kicked a ball は kick(a ball)(John) となりますが(この辺の詳細は3週間前のブログで)、ようは x に相当するものしかイディオム解釈に関係することができません。ちなみに kick the bucket は「死ぬ」という意味があります。
まあ他にも色々理由があるんですがそれの話をするとあまりにも専門的になりすぎるので、とりあえず結論だけ言うと、λx.λy kick(x)(y) という意味表示はあまりよろしくないのではないかということになったんですね。それで、主語に相当する動作主(Agent)を動詞から切り離そうということになりました。それですごい一般向けの書き方をすると、λx.λy.Agent(y) & kick(x) という感じになりました。本当は動詞の事象(イベント)に相当する項もあるのですが割愛します。それで、kick という動詞部分と Agent(~する人的な。。。)部分はそれぞれ別な要素があるという話なりました。これがいいのは例えば、先ほどのイディオムの事実を説明できるのです。つまり動詞によって直接選択される名詞(つまり目的語)のみ動詞のイディオム解釈に貢献できるというものです。
本当はもっと話は複雑なんですが、動詞と Agent を分けるのがいい理由はまた来週以降ということで。。。ではでは。
2019.10.27
スポ健な人 (36) Daichi さん
2019.10.19
オープンゼミ
また、この時期2回生は、来年度のゼミが決定していきます。
昨年は着年一年目ということもあり、一人で淡々と話しをしました。
最近、2回生から「どんなことをするゼミですか?」とよく問い合わせを受けていました。
そのため、今年は、私よりも「どんなことをしているか」をよく理解している3回生のゼミ生たちの力を借りることにしました。
次の週には、トライアスロン部のK君も参加してくれるとの連絡をくれました。
彼らは日頃、部活動等々でゼミの自主的な活動に参加する時間が作りにくい状況です。
参加したかったであろうゼミ合宿も部活動のため、不参加でした。
彼らはゼミの自主的な活動に参加できない分、常日頃からゼミ単位の活動には意識的に積極的になろうとしてくれています。
ですので、ラクロス部3人とトライアスロン部1人だけですと、「体育会ゼミ」として認識してしまう可能性もあります。
オープンゼミの事前打ち合わせをしましょうと声をかけたところ、なんとすでに発表用のスライドを作成してくれていました。
様々なことに積極的に参加しキャンパス内外で様々な業務に追われていることと思いますが、時間を割いて準備してくれていたようです。
また、サッカーの指導や観戦に熱心なN君もギリギリまで参加できるかどうかわからないとのことでしたが、前々日に「いけるようになりました」と連絡をくれました。
ゼミのおよそ半数の6人が忙しい中参加してくれたオープンゼミは、なんとも心強いものになりました。
私は自分の気持ちを少し説明しただけです。
3回生たちは4回生がいない分、相談相手がおらず不安な時もあるかと思いますが、それはそれで楽しんでくれています。
そんな彼らが初めてゼミに後輩を迎えます。
現2回生が今日の3回生の姿を通じてどのような来年の自分を想像したのでしょうか。
新しいゼミがスタートした時に聞いてみようと思います。
撮影:ゆ
写真の無断転載はご遠慮ください
#3回生たちが緊張してました
#どんなメンバーになるか楽しみです
2019.10.16
fmri
2019.10.11
ひさびさに言語学の話1
こんにちは、嶋村です。今日は鴨川で書類仕事をしています。ただ天気はあまり良くなく曇っています。まあ大型の台風が近づいているわけですし、仕方ないですね。明日の台風はとても大きくて危険らしいの気をつけたいですね。ちなみに台風が接近しているということで明日の土曜日は授業日だったのですが、休講になりました。
さて、今日からは何回かに渡って言語学の話をしたいと思います。皆さんは項構造って聞いたことがありますか?英語で argument strcuture というんですが、知ってるわけないですよね(笑)。項(argument)とは簡単に言うと主語や目的語のことを指します。英語で関数のことを function と言うのですが、それの引数(要は f(x) の x の部分)を argument と呼びます。僕が研究している自然言語の意味は何回か話したかも知れませんが、文(命題)の意味を真か偽の2値で判断します。これを真理値(truth value)と言うのですが、このような文の意味はその分を構成する要素がどのように合わされるかで決まります。これをフレーゲの構成性の原理(principle of compositionality)と言います。例えば、動詞 kick は主語と目的語をとりますが、ということは主語と目的語をとって命題を返す関数であるいうことができます。John kicked a ball という文で kick の意味は λx.λy kick(x)(y) と書くことができます。ラムダ関数に関しては以前話したかも知れませんが、プログラミング言語などで使われます。すご~く簡単に言うと、要はなんか引数を取ってきてね、ってことです。なので kick は x と y の二つの変数に相当する個体を取って(ラムダ関数は高階になると引数が個体でなくても構いません)、命題を返す関数であるわけで、そうすると全ての他動詞(2項動詞)はこのような関数で表現できます。なので仮に x が目的語で y が主語の変数の場合、John kicked a ball は、ラムダ関数が適用された後、kick(a ball)(John) と書くことができます。これが命題に相当するわけですが、これが現実世界で本当にそうなら、つまりジョンがボールを蹴るなら真、そうでない場合は偽という値が出されるわけです。この辺の作業も解釈関数(interpretation function)というのがやるんですが、これは割愛します。
さて、kick の意味はλx.λy kick(x)(y) となるわけですが、この書き方では kick がその意味上二つの項を取っているということで理解されます。しかし、その見方が間違っているんじゃないかという提案が1990年代の半ば(本当は1980年代の半ばにあったんですが。。。)に提案されました。なぜか?とりあえず、興味のある方はイディオムを考えてみてください。例えば「ゴマをする」という日本語が本当にお料理などでゴマをする場合とイディオム的な「おべっかを使う」的な意味がありますよね。このイディオムの意味は「ゴマ」だけでも「する」だけでも出てこなくて、その二つが合わさって出てきます。さて問題です。主語の名詞と動詞で出来ているようなイディオムってあるでしょうか?気をつけて欲しいのは他動詞でそれを見つけるということです。つまり「X が Y を/に~する」みたいなやつで X が動詞と一緒にイディオムを作る表現です。「ゴマをする」は主語がなんであってもイディオムの解釈に影響はないですよね。「太郎がゴマをする」でも「嶋村先生がゴマをする」でも「おべっかを使う」の解釈に影響はありません。さて、「X が Y を/に~する」のスキーマで X を「ゴマ」のように固定した名詞表現で Y を好きなように変えることができるイディオムを見つけることができますか?ちょっと考えてみてください。
ではまた来週。
2019.10.09
O2
2019.10.07
日本晴れ
2019.10.05
Fenway Park in BOSTON
主な目的は、地域とスポーツチームの関係性を知ること、そしてFenway Parkに訪れることです。
Fenway Parkはメジャーリーグのアメリカンリーグに所属するボストンレッドソックスの本拠地です。
ずいぶん前に新聞でボストンレッドソックスの記事を読んだ時から、長年、私の世界で訪れたい場所、ベスト3に入っていました。
今回は大変恵まれたことに、Fenway Parkのみならず、レッドソックスの傘下でAAAに所属するPawtucket Red Soxに本拠地にもお伺いし貴重なお話をお伺いすることができました。
学術的には「サービスクオリティ」という概念で研究が進められており、試合の勝敗に関わらず観戦者に満足を提供することを目的としています。
そのため、スタジアムのここ数年現在開催中のラグビーワールドカップの試合会場やキャンプ地にも複数訪れてきました。
今回渡米することで「試合会場」として機能性や街のシンボルとしての存在感の向上だけではなく、そこにいるだけで便利で特別で誇らしくなれる場所であることことの力強さのようなものを感じました。
それ故の不便さもあるとは思います。
しかしながら、レフトスタンド側に「グリーンモンスター」と呼ばれる歪な形の巨大な壁を備え、
独特の色で覆いつくされた最も古いスタジアムは、100年以上も人々を魅了し続けています。
シーズン中にもかかわらず選手たちは例年よりもより一層街に寄り添う活動を続けながら、その年レッドソックスはワールドシリーズのチャンピオンに輝きます。
Boston Strong-B(e) Strong (強くあること)を掲げ、すべての試合でボストンのエリアコードが背番号としたユニフォームが試合中のダグアウトに掲げられていたそうです。
短いボストンの滞在でしたが、デジタル化が進んでも変わらない何か、を旅の終わりで感じることができたように思います。
非常に保守的であることを強みとしつつ、デジタルを使ってどう色鮮やかに「スポーツをみせる」のかがこの時代の鍵なのでしょう。
スポーツが持つ力は様々な側面があります。
それが何なのかを整理していくのが研究者の役割何だろうなと思うと、巨大なモンスターが目の前に立ちはだかっていますが、研究者となってボストンに訪れられたことをうれしく思っています。
ゆ
撮影:ゆ
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#スポーツが持つ力
#Boston Strong:B-strong
2019.10.02