2014.11.29

京都きっず…未来のオリンピックを担う子どもたち

3年前から京都府では、「京の子どもダイヤモンドプロジェクト」というタレント発掘・育成事業に取り組んでいます。この事業は、将来、我が国を代表するアスリートを発掘・育成し、国際大会でのメダル獲得や、その経験を生かし、確固たる考えと行動力を持ち備えた豊かで明るい社会の発展に貢献できる人材育成に手掛けようとするプログラムです。このタレント発掘・育成事業には、京都府を含め、全国で12地域が取り組んでいます。

京都府では、現在、フェンシングとバドミントンの2種目にプログラムを特化し、行政、競技団体、そして大学がスクラムを組み、日本オリンピック委員会(JOC)や国立スポーツ科学センター(JISS)のバックアップのもと、プログラムを実施しています。オーディションによって1学年、2競技で約8名程度に選抜された「京の子どもダイヤモンドプロジェクト」に参加する小学4~6年生の子どもたちのことを、「京都きっず」と呼び、その子どもたちに対して、技術向上を図る専門プログラムをはじめ、身体能力の開発や知的能力の開発、また国際感覚を身につけ、グローバルに活躍できるような国際経験を積ませるプログラム、さらには、子どもが育つ環境として重要な家庭や保護者に対する食習慣や栄養指導のプログラムが実施されています。

小学校教諭の免許を持ち、産業・組織心理学を専門とするippo先生と私が、知的能力の開発をめざす「インテレクチュアル・プログラム」を担当しています。「未来のオリンピックを担う…」というコンセプトでこのプロジェクトが進められているものの、2人の共通認識として、小学生がその年齢の発育発達段階に相応しい成長を遂げるために、子どもたちの成長を先回りするような早熟を加速させることはやらないという方針でプログラムを実施しています。子どもたちには、自分とスポーツのかかわり方について考える機会を提供し、自分を知ること、相手を知ること、スポーツを知ること、様々な土地やその土地の文化を知り、自分自身の世界観を広げることに意識しながら、自分と競技種目の結びつきを極度に強めすぎないようなスポーツキャリアの形成に資するプログラムを進めています。

今日は、小学4~6年生の1期生から3期生それぞれの子どもたちに対して、今年2回目のプログラムを実施しました。以下の写真は、プログラムの様子です。




4年生からスタートしたプログラムも3年経ち、1期生は6年生になり、もう数ヶ月もすれば、中学校へと進学します。6年生にもなれば、うれしいことばかりではなく、競技成績に差が出たり、ケガをする子どもも出てきたり、試合に負け、劣等感や悔しい思いを経験したりもします。今日は特に、1期生である6年生の表情が非常に暗いことが気になりました。敗北や失敗から学ぶことが多いことは、大人の我々は当然、成長とともに理解してきますが、小学生の子どもたちがスポーツの本質である「プレイ(遊びであり、自発的で、その行為そのものが喜びや楽しさにつながるもの)」の精神以上に、勝ち負け、優劣、順位…といったことによってバドミントンやフェンシングというスポーツの行為そのものから得られる楽しみや喜びが得られなくなっているのではないかと少し心配になりました。

「普通」や「らしさ」という言葉は、個性化社会において、そぐわない言葉なのかも知れませんが、大人の目線やスピードで、子どもたちの成長を早熟化させることは、非常に危険に感じます。それは、子どもたちとスポーツ、特に特定種目との関係性を強めすぎることは、子どもたちの「自分探し」を阻害することにもつながりかねません。我々大人は、子どもたちとスポーツとの「適度な距離」をしっかりと見定めなければならないと思います。

大きな夢、小さな一歩…

Jin