2000年に「地方分権一括法」が施行され、"中央集権"の対義語として、都道府県を始めとした地方自治体に国・政府の役割や仕事を移管する、"地方分権"という言葉が頻繁に用いられるようになりました。大阪府の橋下知事や、現在、口蹄疫の対応で奔走している宮崎県の東国原知事を始め、多くの首長が記者会見などで度々、"地方分権"や"地域主権"と発言していることは、皆さんも耳にしたことがあるでしょう。といっても地方分権のシステムは、新しい考え方ではありません。遡れば、江戸時代に「幕府」という中央政府に対して、「藩」という地方政府に権限が委譲されていたのは、歴史の授業で習ったことと思います。
小泉政権の時に、"三位一体構造改革"によって地方分権を進めようとしましたが、地方自治体への財源の保障と権限の委譲が曖昧であったため、結局、政治や行政の「主権」が中央から地方に十分委ねられたとは言い難いのが現状です。しかしながら、地方自治体は、これまで以上に「地方政府」という認識を高め、それぞれの地域の実情に応じた課題解決能力と自律的な都市経営が迫られていることには間違いありません。
ほとんどの地方自治体が少子・高齢化社会、さらには、人口減少社会の到来によって、税収による財源確保の問題や地域の衰退にかかわる様々な問題に直面する中、滋賀県草津市は、他地域からの流入や新生児の出生によって、現在でも人口が増加傾向にある日本でも数少ない都市の1つです。
どの地方自治体においても、魅力的で、持続可能なまちづくりを実現するために、「総合計画(マスタープラン)」を策定していますが、草津市でも2010年度から10年間を見据えた第5次総合計画が策定されました(策定された総合計画は、以下のURLを参照してください)。
http://www.city.kusatsu.shiga.jp/www/contents/1222684138124/activesqr/common/other/4b00dd26002.pdf
草津市では、総合計画の実現をめざし、将来、訪れるかもしれない様々な社会問題や財政問題に対応するため、また草津市が"地方政府"としてふさわしい都市経営を進めるために、それを支援するシンクタンク機能として、"草津未来研究所"を発足させました。
この研究所は、「立命館大学の知の集積との連携」を図るために、所長、副所長、総括研究員(私...)として立命館大学から3名が参画しています。この研究所は、主に草津市の未来を見据えた政策形成に寄与するための調査研究や人材育成といった活動に取り組むのですが、その会議の様子を、ほんの少しだけご紹介します。
毎回、ブログが長すぎる!と周りの先生方にお叱りを受けているので、ほんの少しだけ...もう既に長い?あれ?この方式、どこかで見たことがあるような...。
草津未来研究所の会議は、年間6回予定されており、ちょうど2回目の会議が21日に開催されました。今回の会議では、この研究所の目的や方向性についてのコンセンサスが図られ、調査研究と人材育成の柱となる2つの活動のうち、調査研究テーマについての議論が交わされました。第5次総合計画の実現に向けて、地域資源を活用した観光のあり方、持続可能な都市経営における行政システムのあり方、また行政と市民が一体となった協働型のまちづくりを進めるための市民自治のあり方、さらには、歴史的な意味合いを持つ草津川廃川敷地の土地活用など、研究テーマはバラエティに富んでいます。
全ての研究テーマに共通するのは、"魅力的なまちづくり"と"持続可能なまちづくり"。つまり、草津市民が"このまちが大好き!このまちにずっと住みたい!"という感情を抱くようになること、また草津市以外の人たちが"このまちに住みたい!"と思うような魅力づくりをするには、どのような工夫や仕掛け、仕組みづくりが必要であるかを考えるということです。
中でも砂礫の堆積によって川床が周辺の平面地よりも高くなった「天井川」といわれる旧草津川の土地活用は、河川の氾濫による水害問題などを乗り越え、現在では、草津市の中心部を貫くシンボルでもあり、ランドスケープ(景観)、アメニティ空間の創造、地域住民の交流を促進する"遊"空間、さらには、商業施設の誘致や観光資源の活用による経済活性化などといった多様な視点から検討されるべき問題です。
左に掲載した画像は、国土交通省琵琶湖河川事務所のホームページから引用させていただいたものなのですが、写真の中央に写っているのが、琵琶湖から草津市内の中心部を貫く旧草津川です。この写真からも豊かな緑と、その存在感を感じ取ることができるでしょう。
草津市だけに限ったことではなく、皆さんの住むまちにも、地域社会が直面する問題や地域の魅力づくりをどのように進めるべきかという課題が山積しています。このような問題に手掛けてきたのは、行政なのですが、我々の住むまちをよりよいまちに、そしてそのまちに住む住民が誇れるような魅力的なまちづくりを進めるために、"市民参画型まちづくり"や"協働型まちづくり"という言葉が用いられるようになりました。
立命館大学では、2009年に草津市と教育研究の連携を図ることを目的とした"サービスラーニング"という協定を結びました。サービスラーニングとは、大学生のみならず、草津市民が大学で学んだ知識や技術を、地域社会で直面する様々な問題や課題解決に役立てる実践的かつ経験的な学習方法のことで、先に示した市民参画型や協働型のまちづくりを進めるために必要な市民の社会参加や主体的な活動を促進するには適した学習方法といえます。
草津市とのサービスラーニングを進めるために、スポーツ健康科学部は、立命館大学で重要な役割を果たすことが期待されています。今後、草津市民や草津市内で活動する様々な市民団体と学生との交流を促進する研究会やワークショップなどの機会を設けたいと思っています。
先週のブログでも触れましたが、素敵なまちには、素敵な人々が集います。そしてそのような人々は、さらに高い生産性を発揮し、まちの魅力を高めます。もちろん、大学も同じ...。健康的で、魅力的な草津市のまちづくりに、皆さんも我々教職員と一緒に参画しませんか?皆さんの強い志と、積極的な行動を期待します。