みなさんの「ここぞ!」という場面は何です(でした)か?
そのとき、何か「お守り (lucky charm)」を持っていきましたか?身に着けましたか?
オリンピックやパラリンピックが行われ、これからシーズン/試合を迎える部活動もあります。
選手によって、シューズの色やアクセサリー等、目につきやすいものやそうでないもの…いろいろ拘りがあるかもしれません。
数日後に近づいた学会に向けて、ふらりと準備をしていたときにみつけた論文(残念ながら、学会の内容とは関係がなく・・・)に思わず立ち止まったので、内容を簡単にご紹介します。
実験参加者(被験者:大学生)たちは、「実験の時に、あなたのお守りを持ってきてくださいね」と伝えられました。
実際に、実験に参加するために集まった大学生たちは、実験者からそのお守りのことについて質問され、その後お守りの写真を撮ることを理由に、実験者が別室に持っていきました。
この後、一つの条件(実験群)では、その後のパフォーマンス測定(記憶課題)を行う前にそのお守りが本人に戻されました。が、もう一つの条件(統制群)では、カメラの不調で撮影に時間がかかっているからと言われ、お守りは手元に戻らないままパフォーマンス測定の課題に取り組むことになりました。
その結果… お守りを持って課題に取り組んだ大学生たちは、持たずに取り組んだ大学生たちよりも課題の成績が良かったのです。
心理学っぽい疑問は、「どうして“お守りを持つと、パフォーマンスが良くなるのか?”」ということです。
もっと言うと、「幸運を呼び込むためにお守りを持つ」という不合理的な思考や行動(superstition)が、なぜ合理的であるかのように世の中に存在しえているのか、ということです。
このことについて分析や実験は続いていて、この研究論文では、お守りを持つ群では「有能感(self-efficacy)」が高まり、パフォーマンス向上をもたらしたことを明らかにしています。
さらに、この有能感はどこから来ていたかと言うと、お守りが「課題に粘り強く取り組ませる」ことによる(目標を高く持つことによるのではなく)、という結果でした。
何か拠り所になるものが、私たちの心に元気と調和をもたらしてくれるということでしょうか。
皆さんの心に元気と調和を与えてくれるもの・ひとはなんでしょう?
(日差しが秋めいてきましたね)
ippo
【参考】Damisch, L., Stoberock, B., & Mussweiler, T. (2010).“Keep you fingers crossed!” How superstition improves performance. Psychological Science, 21(7), 1014-1020.
superstitionは、バスケットのシュートを打つ前などに行う「ルーティン」とは、異なるものだということも述べてあります。興味のある方はぜひ。
2016.08.31